Cure of GAS

Castle Rock Photography

日々について淡々と書きとめてます。

Ferrania P30 レビュー

FILM Ferrania社はイタリア北部のフィルム会社で、1917年の創立以来一貫して写真、映画用にフィルムを供給している。P30はもともと映画用のフィルムだったものを静止画(Still)用にしたもので、1960年代の復興版として再発されている。残念ながら日本での取り扱いはないが、本社のオンラインストアから入手は可能である。

今回上野・浅草を中心に撮影してみた。機材はLEICA M4-PとELMARIT 28mm ASPH。以下所感などを述べたい。

Ferrania P30

ISO 80ということもあり、粒子が非常に細かい。撮影日が曇り空であったため、スカイツリーから眺める遠景に霞がかかりなんともシネマチックな描写である。

Skytree Cafe Tokyo

ISO 80は通常ならば室内撮影には向かない。この時窓から差し込むディフューズされた光が大変美しく、 開放F2.8 1/60で撮影した。ELMARITの性能によるところもあるだろうが、光の描写、シャドーの表現力は見事である。

Ferrania P30

日本への輸入は輸送費などを含めトータルで1本あたり2000円近くになる。しかし自家現像が可能な事、大事なシーンを少し違った雰囲気で撮影されたい方には良い選択肢になると思われる。機会があれば是非。

 

追記: 

マニアックな話になるが、Flickr Ferrania P30のカバーフォトに私の写真が選ばれた。

Ferrania P30 | Flickr

備忘録もかねて撮影状況を記録しよう思う。

外は曇り空だが明るく、露出でいうとISO100, 1/125 f4-5.6程度の、なんとも天然のディフューザーがかかっているような天気だった。上野から歩いてスカイツリーを目指す。

時刻は11時を回ったところで、チケット売り場はそこそこ混み合っていた。数分並んだ後エレベーターに乗り込む。秒速4mというスピードで展望台にはあっという間に到着した。

エレベーターの扉が音もなく開いた瞬間、ドーナツ状に張り巡られた窓ガラスから差し込む、柔らかな光に包まれた展望台ホールが現れた。辺りを見回してから隅田川の見える方角へと進む。窓に近づくにつれ東京の、積み木のおもちゃのような街並みが目の前に広がる。撮影を続けながらホールを回る。スカイツリーカフェの前を通り過ぎる時、綺麗に並べられたグラスやらボウルやらが光に反射して、美しい、と感じた。

撮る瞬間、は理屈で説明できない。ただ美しいと感じた。それで露出を1/60 f2.8に設定し、カメラのシャッターを切った。P30はISO 80のため、予想ではかなりアンダーなネガになると思ったが、窓からの光のみが強調され印象的な写真になった。ちなみにこの後すぐに団体客が目の前を横切ったため2枚目は撮れなかった。 

このような感覚、撮る瞬間を逃さず撮るということ、大切にしたいと思う。


 

焦点距離28mmと35mmの使い分け

28mmと35mmの使い分けについて考えてみる。

私は間違いなく35mmの画角が好きで、これまで撮影した写真の9割以上は35mmのレンズで撮影されたものである。これだけ35mmレンズを使っていると自然に画角の感覚が身につくため、今はカメラを構える前から空間に35mmのフレームをイメージすることができるし、もちろん失敗もしない。

ヒトが普通に見ている画角は50mmとか35mmであるとか言われるが、私は35mmが自然に感じる。一方28mmは私にとって大変広い画角で、やや違和感がある。しかしながら魅力的な画角で、構図が決まった時の達成感というか喜びは他の画角では味わえない。

今回、28mmと35mmそれぞれの画角について主観を述べるとともに、使い分けについて改めて模索してみたい。

焦点距離28mm

50mmが標準だった時代、28mmは広角、それも今でいう超広角ぐらいの認識だっただろう。現代ではGRやスマホのレンズがそうであるように、標準レンズと呼んでも差し支えなくなっている。

それでも28mmの特性を意識して撮影すると、その絵は明らかに標準とは呼べない、特別な広がりを感じる。 28mmレンズで写し出された世界は現実と非現実のちょうどギリギリのラインにあり、確かに自分はこの場に居たのだけれど、こんなに壮大な景色だったっけ、という感じである。35mmではこのような感じは受けない。

Tokyo Night

21mmや24mmほどではないが、それでも近接時には十分なパースがあり、被写体を印象付けることができる。

Rainy Day

さらに被写体の側に消えゆく、それでいていまだ生命の源を感じさせる柔らかな光をその広い画角で優しく拾い上げることができる。

Inside the Tokyo Skytree

さらにメーカー問わず同じF値ならば28mmレンズは35mmレンズより安価である。またサイズや重量も小さいものが多い。例えばライカエルマリート。現行モデルは果てしなく小さく描写も良く、35mmに比べ安価である(記事掲載現在)。

 

焦点距離35mm

35mmが広角に分類されていた時代もあったが、現在ではもはや50mmと並ぶ2大標準レンズだろう。

35mmの最大の特徴はその万能性にある。引けば広角、寄れば望遠、とまさにドキュメンタリー、スナップからポートレートまで大抵のものは35mmで撮れる。そしてある種の素直さが心地よい。冒頭記した通り、私にとっては自然に遠くを見ている画角に近く、見たままを写しやすい。

Divine Nature

M4以降、0.72のライカにおいては35mmフレームが最も視認しやすい位置にあることも見逃せない。50mmフレームは全体に対してやや狭すぎるため何か損している気になるし、28mmフレームは眼鏡使用時には周辺が視認しにくい。

問題点らしい問題点はないが、あえて言うならばその素直さと使いやすさが写真1枚の価値を下げる恐れがある。前述の28mmにおいては構図やパースに気を使うため撮影毎にやや緊張を必要とする。それゆえか、1枚あたりの写真にある種の重みができる。

もちろんこれは人によりけりだが、記録写真を撮りたいのか心情記録をしたいのかである程度メリハリをつけて撮影しないと散漫にフィルムを消費することが目的となりかねない。

One morning with a friend

まとめ

写真は引き算という言葉がある。実際、主張したい対象を切り抜く事で写真は意味を持ち始める。そういった点では焦点距離の長いレンズほど有利である。

参考までに、次の写真はエルマリート90mmで撮影したものである。

The person you're waiting for...(Tokyo station)

都会の喧騒の中、誰かを待ち続ける女性像をイメージして撮影した。もちろん被写体の許可はとってはおらず、モデルでもない。偶然に出会ったシーンである。

もしこの時カメラに装着されたのが28mmのレンズであったならばおそらく撮影できていないだろう。同じ構図なら被写体に相当接近しなければならず、ひょっとしたら不審者扱いで警備員のお世話になったかもしれない。

35mmならばもう少し引きで、少なくともパーソナルスペース内に入ることなしに似た構図の写真が撮れたかもしれない。

切り取りたい対象がはっきりしている時、もしくはその予感がする時は、やはり35mmが万能かなと思う。

28mmは当たれば大変生き生きした、躍動感あふれる写真が撮れる。相当な技術が必要であるが、その可能性は35mmよりもはるかに多い。そして28mmを使用することで、それまでマンネリだったカメラライフに光が差し込むことは間違いないし、また技術も上がるだろう。

私は最初GRで28mmを勉強した。面白い時もあればそうでない時もあった。納得する写真は100毎中数枚あれば良いほどだが、画角やパースについて学ぶきっかけになった。

28mmか35mmか、結論は時間と経験が決める。是非2つのレンズを使っていただきたい。

 

M-Rokkor 40mm F2.0 レビュー

イカミノルタCLと同時に入手したレンズ。本家ライカCLにはsummicron 40mmがセットとなっているが、レンズの差異はほとんどないようだ。


第一印象として、とにかく小さく軽い。しかし決してチープな作りではなく、絞り環やピントリングのタイトでスムーズな感触、鏡筒の質感など大変好ましい。

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肝心の描写だが、開放はやや甘いもののF5.6程度でかなりしまった絵になる。

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コンパクトさゆえ取り回しは大変よく、40mmという画角に慣れればこれ1本だけで旅行に出ることも可能。隠れた銘玉に間違いはない。

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開放が緩く、逆光耐性もないことが難点だが、それよりもこのレンズが単体で出回ることが少ないためCLとセット購入になってしまいやや高くつくことが問題かもしれない。

いずれにしても是非試してもらいたいレンズである。

 

MINOLTAミノルタ CLE + M-ROKKOR 40mm F2

MINOLTAミノルタ CLE + M-ROKKOR 40mm F2

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ライカミノルタ CL(フィルム)レビュー

1973年に発売されたコンパクトフィルムカメラミノルタと業務提携していたため、国内と海外で名称とロゴが異なるが、私の所有していたモデルはライカミノルタCL。ライカCLもライカミノルタCLも中身は同じだが、ライカCLにはデジタルもあるので、検索時などは少しややこしい。

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M5に採用されていた腕木式の露出計を内蔵、フレームは40mm、50mm、90mmで、主にキットレンズであるロッコールかズミクロンの40mmが標準レンズとなる。このレンズ、レンズ構成は同じなのだが、ズミクロンというブランド名が撮影者の主観を刺激するためか、描写はズミクロンの方がよいと言う意見をやや聞く。

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本体のサイズは大変小さく、ローライ35をひとまわり大きくした感じで取り回しも大変良い。

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Rokkor - M 40mm

巻き上げやシャッターフィーリングについてはやはりM3 M4 M5 M6などに比べるとややチープで軽い印象を受ける。また35mm枠がないため(このカメラに35mm枠があると他のライカが売れなくなると考えたのかもしれない)、もし35mmの画角が好きならば精査した方がよいだろう。

しかし、現在高騰するライカMマウントカメラ群の中では平均相場が未だ10万円を切っており、ボディにあまり執着がない方ならば是非おすすめしたい。

Leitz Minolta CL 1031479

Leitz Minolta CL 1031479

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Leica Summilux 35mm ASPH. FLE レビュー

イカ35mmレンズのフラッグシップモデル、ズミルックス。1960年に1stモデルが発売されて以来、4世代目になる。2010年にFLEを採用したモデルが発売され、これが現行にあたる。

Leica m4-P with Summilux 35mm f1.4 asph and Rollei RPX 400

レンズ自体は大変上品な質感と作りをしており、ラグジュアリーな雰囲気。ズミクロンに比べ重さはあるが、鏡筒の長さも抑えられており、他の大口径レンズに比べれば大変コンパクト。

デジタルを意識した設計のため、写りはとても現代的。開放で撮ると周辺光量落ちはあるものの、合焦部は大変素晴らしく、ボケもスムーズで、いわば独特の3Dエフェクトがある。

First Shot

イカのレンズ全般にいえることだが、解像度という点では国産のレンズ(シグマなど)にも及ばず、そういった意味で、野暮なことだが、オーバープライスなのは間違いない。

しかし大口径でありながら、このコンパクトさで開放から実用的なレンズはそうはない。レンジファインダーの基本原則である、手軽にその瞬間を切り取る、に基づいて設計されている。

そしてライカ独自の"緩さ"。人間的というのだろうか、絵に情緒がある。他社製色々なレンズを使った経験としてライカレンズにしか撮れない絵は間違いなくあると思う。

機会があれば是非使っていただきたいレンズであることは間違いないが、同スペックのCarl Zeiss Distagon 35mm F1.4 ZMも大変素晴らしいレンズなので、そちらも検討していただければと思う。

Upon a sunny afternoon

焦点距離 35mmと50mmの使い分け

キットズームレンズから脱却して単焦点レンズの魅力にハマった時、まず悩むのがどの焦点距離のレンズを買えば良いのかということではないだろうか。

超広角から望遠まで一通り触り、そして断捨離してきた中で、現在棚に残っているのは35mmと50mmのレンズのみ。ここで私なりの35mmと50mmの使い分けについて考えてみたい。

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LEICA SUMMICRON 35mm F2 / 50mm F2

 

35mm

率直にいって万能である。ほとんどのシーンで困ることなく撮影できる。近づけばポートレート、離れれば風景。特に旅先などで背景をある程度、場所が思い出として残るくらいに入れたポートレートを撮りたい場合、間違いない。室内でもある程度の広がりを残した撮影ができるし、大口径を使えば、浅い被写界深度を生かしたボケで、かなり雰囲気の良い写真が撮れる。

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Scotland / distagon 35mm F1.4

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難点は単調な写真になりやすいこと。普通に撮影すれば、当たり前だがかなり普通の写真が出来上がる。超広角のようなパースもないし、大口径といえどボケ量もそれほど多くはない。スナップや記念としては十分だが、もし作品等を作る場合は被写体選びから光の方向まである程度真剣に考察してから撮影した方がよいだろう。そういった意味では難易度の高い焦点距離だとも言える。

35mmは人気なので、各社大変多くの個性的なレンズが発売されている。色々試してみてシックリくるものを選ぶのもよいだろう。

 

50mm

35mmに比べて狭く、85mmに比べ広いというなんとも微妙なバランスの焦点距離で、標準レンズとされるのだが、個人的には望遠のカテゴリーに入ると考えている。

被写体が明確で、撮影が意図的なもの、ペットや家族を撮るなどの場合、大変お勧めする。実際、撮られた写真を見ると、35mmよりも訴えかけてくるものが多い。そういった意味ではさらに85mmなどがよいのだが、こちらは少し使いづらいことが多く、スナップ的で迫力ある写真を撮影するには向かない。やはり50mmの微妙なバランスが良い。

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EF50mm F1.4

そして50mmは風景撮影にも向いている。

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Summilux 50mm F1.4

 

But beautiful, Tokyo Japan

ただ広く撮るのではなく、撮影者が美しいと感じた部分を切り取り強調する時には狭い画角が役に立つ。風景写真家で有名なアンセルアダムスが好んで望遠レンズを用いたのもそのためだろうか。

50mmはさらに沢山のラインナップが揃っている。大口径のレンズも35mmに比べ安価で、楽しめる。

総括

私は35mmで撮るのが好きだが、最近50mmでもいいんじゃないかと思うようになってきた。撮れない範囲を無理に撮る必要はない。本当に必要なものだけ切り取る、そんな撮影者になりたいものである。
 

 

 

Leica M3 レビュー

イカM3は従来のバルナック型から改良を加えて製造されたMマウントボディの初号機で、1954年春に発売開始された。数字がややこしいのだが、M型はM3、M2、M1と続き、そしてM4から製造順が連番となる。現在はM10。

1954年当時の月給がおよそ3万円に対し、23万円で販売されていた。現在基準では200万超えくらいだろうか。高嶺の花だったのは間違いないだろう。

このカメラはあらゆる意味で既に完成されているカメラで、またユーザーレビューも沢山あるため今更だが、私が最初に購入したライカということで少し所感を述べたい。

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まずその外観。とにかく美しい。距離計、ファインダー、シャッタスピードダイヤルなどは整然とグリッドに沿ってレイアウトされており、現代基準でもかなりモダンな印象を受ける。

アンティーク品と同じく、機能というよりも存在そのものに価値があり、コレクターが多いのもうなずける。

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次に操作性。ライカM3にはダブルストロークモデルとシングルストロークとがあり、初期がダブルストローク。チャッチャッと親指で短く2回巻き上げる。

しかし私はどうもこれが苦手で、特に2回目が巻き上がっておらず、シャッターチャンスを逃すことがよくあった。その後シングルストロークも使ってみたが、比較してみると(失敗はあっても)ダブルストロークの方が使いやすく感じた。f:id:coalfishsholco:20171022120826j:plain

ファインダーの視野率はほぼ100%のため両眼開けたままで撮影ができるが、それと引き換えに表示される最小フレームは50mm。よって現在の標準である35mmを使いたい場合は、外付けファインダーか眼鏡付きレンズが必要となる。

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また撮影最短距離が90cm〜1mのため、最近のDSLRで最短30cmなどに慣れていると、テーブルフォト時などで使いにくさを感じるだろう。

そして見た目よりも大きく、重量もある。決して万能なカメラではない。購入する際は信頼できるお店でよく検討した方がよいだろう。

『ライカはM3に始まり、M3に終わる』といわれるが、その後いくつかのライカを使用した後では、この言葉はまんざらでもないなと思う。

是非。

 

LEICA ライカ M3 ダブルストローク

LEICA ライカ M3 ダブルストローク

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