Cure of GAS

Castle Rock Photography

日々について淡々と書きとめてます。

Leica Summicron 35mm F2 ASPH. レビュー

現行のフードねじ込み式の前のモデルで、4世代目。非球面レンズ採用とあってやや重量は増したが、相変わらずのコンパクトさで取り回しに困る事は全くない。

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描写を一言でいい表すと、とにかく優秀。オールド感は全く無く、しっかりと、真っ直ぐと結像する。モノクロ、カラーどちらでもトーン、発色ともに良好で、本当に全く問題点が見つからない。

 

Western style house in Japan

 

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旧岩崎邸庭園

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イカは全てそうだが、プライスの問題がクリアできるのならば、Mマウント35mm の決定版として是非オススメしたい。

しかし実際のところZeiss Biogon 35mmやノクトン35mmの方が気兼ねなく使用できる。こちらも是非オススメしたい。

 

 

 

ストリートフォトについて思う事

ストリートフォトを定義するのは非常に難しいが、色々調べると基本的にはヒトと人工物の組み合わせが写っている写真をそう呼ぶらしい。

ただし人といっても自分の家族や友人ではダメで(それらはポートレートや記念のスナップ写真になる)、全く赤の他人、しかも表情から喜怒哀楽が感じられるもの、つまりできるだけエモーショナルなものがより高く評価される。

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Scotland

もちろん後ろ姿でも構わないが、いわゆる"背中で語る"写真は相当にレベルが高いだろう。私には撮れそうにない。

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Scotland

そもそも私はストリートフォトはほとんど撮らない。もちろんライカユーザーなので興味がないわけではない。かつての巨匠、ブレッソンやアーウィットなどのストリートフォトを見て心を打たれ、よしいつかは自分も、と思ったことは何度もある。

しかし現実的な話としてこのご時世、人様の顔を被写体に無断で撮影すること、またそれを発表することはかなりの覚悟(裁判沙汰になったとしても上手く切り抜けられる)が必要となり、そもそもほとんどの出版社やWebサイトは少なくとも建前上では被写体の許可なしにそれらを掲載することを禁じている。後ろ姿は問題ないが、横顔は微妙との話も聞いたことがある。街並みを撮っていたらたまたま人が写り込んでいたという解釈もありだろう。何れにしても撮られた写真に作品性、芸術性がありそれを説明できれば被写体(撮られた人)も納得するとは思う。

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後ろ姿なら問題ない

しかしまあ、正直な話、極度の緊張や危険を強いられてまで人様を撮りたいとも思わない。

数年前1人旅でパリを訪れた時、夕暮れ時に何気なく街並みの写真を撮っていたら100 m先にたむろしてた集団のうち1人が急に何やら叫び、こちらへ向かって来た事があった。

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この後、左側から男が現れこっちへ向かって来た

もちろん彼らを被写体として撮ったわけではない。普通の観光客と同じようにパリの美しい街並みを撮影していただけに、かなりびっくりしてしまった。旅先で、おそらく移民の人達だろう、言葉も通じぬ相手(通じたとしてもわかってくれなさそう)にトラブルは御免なので、EOS 5D MK IIとDistagon 35mm F1.4を片手に猛ダッシュで逃げた。後で知ったのだが、撮影していた地域はパリ10区で、治安でいうとまあまあ注意〜観光客は特に注意レベルの地区だったらしい。

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NYC

ニューヨークでは夜に地下鉄内で写真を撮ろうとしていたらドレッドヘアの190 cmはあろうアフリカン・アメリカンが近づいてきて ” Get out ! F**kin’ Chinese ! (どけよ、ク○中国人!” と叫ばれたこともある。 そもそも私は日本人なのだが、そんなことより当時HipHop が好きだったのでリアルなスラングが聞けた事を嬉しく思い、本当にこんな事言うんだ、とやけに感心したのを覚えている。

Central Park, NY

スコットランドで駅構内の写真を撮っていたら警備員に「なんでお前は構内の写真ばかり撮っているんだ?もちろん個人利用だろうな?」と注意された。

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Scotland

 

日本人は、特に女性は自分の素の顔の写真を撮られたいとは思わないだろう。顔をツルツルに、宇宙人みたいに修正してくれるアプリが日本で流行るのもそのためかもしれない。外国では人々は写真を撮られるのがそれほど嫌ではないらしいが、やはりそこは多民族国家。色々なバックグラウンドがあり、ひょっとしたらインターポールにお世話になっている者もいるだろう。パリで追いかけてきた彼も、怒鳴ってきた大男もひょっとして辛い過去を抱えているのかもしれない。

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LONDON

先日ふと見上げると青空がとても綺麗だったのでローライにモノクロフィルムを詰めて撮影に出かけた。三脚を使って落ち着いて構図を練る。ブライトスクリーンに交換したてのファインダーから覗く世界は大変美しい。鳥が羽ばたくと同時にシャッターを切る。心は大変落ち着いている。

A watchtower

ストリートフォトは見るのは好きだけれど、やはり自分は風景・静物を撮るのが好きなのかも。

皆さんはどうですか。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>追記

私自身は写真を撮られる(被写体にされる)のが好きかどうかと尋ねられると、やはり状況と相手(撮影者)によると答えるだろう。疲れている顔、アンハッピーな顔、アングリーな顔、それらはどれも撮影者にとっては魅力的に写るかもしれないが(私の顔にそんな価値があるとは思えないが)、それがある種の芸術性を帯びない限りは、気持ち的にはNOである。

また撮影者も、例えば故木村伊兵衛氏に被写体に選ばれたのなら喜んで身を差し出すだろうし、その他、プロアマ問わずその撮影者の作品が素晴らしいと思ったのならYESである。

先日東京散歩がてら写真を撮っていると長い望遠レンズを持った若い男性と出くわした。皆さんもご経験があると思うが、言葉をかけるわけではないにしても、こういうシチュエーションでは往々にして被写体がややかぶる事が多々ある。とりあえず私が写真を撮ろうとすると、その背後から目線(正確にはレンズ目線)を感じた。それで邪魔かなと思い撮影をやめて横に避けると彼も撮影をやめた。撮らないのかな、と思い再び被写体のライン上に立つと、彼もカメラを構えるではないか。自意識過剰な10代女子のようで申し訳ないが、私の後ろ姿が被写体にされている、と感じて正直嫌な気になった。それでそそくさとその場を立ち去った。あの時一言 "カメラを構える後ろ姿を撮らせてもらえませんか?”と言ってくれれば喜んでOKサインを出しただろう。しかし現実的に声かけが難しいことは私自身よく分かっている。

まあ少なくとも被写体に悟られずに撮影する技術は身につけたほうがいいだろうし、こういう時はおどおどせずにドッシリと構えて1枚だけ撮るべきである。

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パリの中華料理屋にて

もちろん、私も修行中です。

 

coalfishsholco.hatenablog.jp

 

ポートレイト 内なる静寂―アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集

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Personal Exposures

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Leica Summarit 50mm F1.5 L レビュー

先代クセノンを改良し、1954年から60年にかけて製造されたレンズで、最短1m、フィルター径E41、そして320gと大変重たい。M3に装着しておよそ1000g(1 kg)。ある意味重厚重量級の大変個性的なレンズである。 

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Leica M3 // summarit 50mm F1.5 L

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Leica M3 // ilford HP5 PLUS

前玉に傷がつきやすいこともありコンディションのバラツキが激しいが、私の所有していたのはかなり状態の良い個体だったのを記憶している。しかし特に開放時の果てしないフレアとゴーストはこのレンズの宿命であり個体差で解決できるものではない。もちろんそれがこのレンズの個性でもあるのだけれど。

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Leica M3 // ilford HP5 PLUS

まだライカ駆け出しの頃?で被写体も定まらず雲ばかり撮っていた、そんな思い出のレンズ。

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Leica M3 // ilford HP5 PLUS

光の向きに注意して絞ればビシッと決まる。色のりも驚くほどしっかりしている

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Leica M3 // Fujifilm ISO100GYO // Ginza

Lマウントということもあり当時は10万を切る価格で入手できた。ライカの値段としては大変リーズナブルだが、駆け出しのライカーにとってはM3と合わせての購入は胃の引き締まる思いで、まあ1次試験をパスしたといった感じだろうか、とにかくずっしりとした時間の重みを感じながら、えもいわれぬ満足感に浸っていたのを覚えている。

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SONY a7s // mount adapter

Bokehは時々荒れ、光や対象物によっては程よいクリーミーさが現れる。個人的には嫌いではない。

Peace, peace

いわゆるクセ玉には間違いないだろう。今ならもう少し乗りこなすことはできそうだが、手放してしまった今では何を言ってもしょうがない。

 

Zeiss C-Sonnar 50mm F1.5とはまた違ったオールドテイストのレンズ。M3をお持ちの方、または購入予定の方は1つの通過点として、是非。

Leica ライカ Summarit 50mm F1.5

Leica ライカ Summarit 50mm F1.5

 

CineStill BWXXフィルム レビュー

はてなブログ記事を読んでいたらとても豊かなトーンの写真が掲載されていて、大変興味が湧いたので著者にもお尋ねして、早々使用する機会に恵まれたのでレビュー。

CineStill BWXXは元々はEastman Kodak Double-X(5222)シネマ用のフィルムとあってダイナミックレンジ(トーン)が素晴らしい。ハイライトからシャドーにかけてなだらかにつながる濃淡は美しく、モノクロフィルムの良さが全開に現れている。米国製。

Tearoom

普段は自家現像をするのだけれど今回は購入元のSIlversaltさんでお願いした。待つことおよそ1週間。届いたネガを見ると大変美しい。スキャンする前から思わず唸ってしまった。やはりプロが行う現像は違う。

Tearoom

 

シネマ用のフィルムではイタリア製のFerrania P30も使ったことがあるが、あちらはISO80とあって大変粒子が細かい。

Tokyo Skyscraper

どちらも大変好みの描写。

 

しかし、もはやフィルムに感動したのか、現像の素晴らしさに感動したのか分からなくなってしまった。それほどにプロにお願いした現像の仕上がりは、私がバスルームでひっそりと行なっているものとは全く異なっていた。コストの問題もあるが、ここ1番の現像はやはりプロに任せた方が良さそうだ。

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www.silversalt.jp

cinestill double-x bwxxブラックandホワイト35?x 36

cinestill double-x bwxxブラックandホワイト35?x 36

 

 

インスパイアされた記事:

Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM レビュー

ZeissのMマウントレンズ群の中でビオゴンタイプは最も信頼のおけるレンズだろう。撮像はスカッと抜け、歪みも極限まで抑えられている。とにかく描写は素晴らしい。

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ビオゴンは 21mm、25mm、28mm、35mmがあり、この中でも28mmという画角はかなり地味な存在であるが程よく広角で、程よく遊ぶには最適なレンズ。またプライスもかなり抑えられている。

Tearoom

Tearoom

さらにこのレンズは最短50cmまで寄れるという大きなアドバンテージがある。フィルムライカなら70cmまでしか距離計がないためそれ以下は目算という話になるが、マニュアルレンズを普段から使っている方なら50cmの距離は感覚的にわかるだろう。それに28mmのF2.8では、50cmの被写界深度は前後3cmも余裕がある、多少のずれでもかなり合焦する。もちろんデジタルライカやミラーレスでのライブビュー撮影ならこの限りではない。

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最短50 cm

鏡筒も短く大変コンパクトで軽いレンズなのでM6につけっ放しでも全く違和感がない。プライスの面からも是非オススメしたいレンズだが、少々厄介なのが28mm枠がファインダー外周ギリギリのため、眼鏡をつけてM6を覗くとどうしても見えない範囲が出てしまう。もちろんこれはレンズの問題ではないけれど。

ところでビオゴン28mmといえばコンタックスのものが有名で、そちらもG2で使用したことがあるがかなりシャープ。そしてなぜかパースが強調され、より広角な印象を受けた。同じビオゴン名でも機種によって違いがあるのも面白い。機会があれば是非。

 

Leica Summaron 35mm F2.8 レビュー

前回ズマロンF3.5のレビューを書いたので、今回はF2.8について。

4群6枚のレンズ構成はF3.5と同じだが、ランタンガラスを使用したことで半段ほど明るいF2.8となった。さらにF3.5(190g)に比べ30gほど軽く、最短距離もF3.5の1mから70cmとなっており、総じてかなりのメジャーアップデートと言える。

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何より特筆すべきはその外観。鏡筒は銘玉Summicron8枚玉と同じ無限ロック付きとなっており、ロックの精度や合致した際の音などほとんど工芸品に近い。

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描写はF3.5の淡いトーンを維持したままより安定感を増した感じで、モノクロのみならずカラーでも優しい色合いを描き出す。F2.8は現代基準では相当に暗いが日中でISO400フィルムの使用には十分すぎる開放値。個人的にはF2やF1.4の大口径では特に黄昏時に設定を迷うことがあり、思ったよりハイキーになることも多いが、開放F2.8ならば迷いはない。日が暮れたらとにかくF2.8、室内でもF2.8、あとはシャッタースピードで調整すればよい。

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レトロか、現代的か。個人的にはどちらにも当てはまらない、独特の存在感のある描写だと思う。そして何より撮影中や撮影後の満足度、充実感がすごい。

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CineStillBWXX

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Tri-X 400

60年前のレンズ。初老のカメラマンが雨降るパリの街並みをこのレンズで撮影したかもしれない。そんなストーリーを想像するのも良い。

Leica Summaron 35mm F3.5 (goggle)レビュー

LEICA M3用に買った35 mmレンズで、眼鏡付きのもの。サイズが重くなる反面、M3の宿命である最短撮影距離1 mをゆうに割り込み、65 cmまで近接できる優れもの。

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M3 & Summaron 35mm F3.5

写真家の渡部さとる氏も著書『旅するカメラ』の中で、印画紙にネガを焼いてみるとトーンの表現の素晴らしさに驚いた、と大絶賛しているが、正直なところ当時はあまり知識がなかったためよく分からなかった。

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今あらためて見直すと、よくわかる。特に現行のレンズの優れたコントラストやシャープネスと比較するとなんとも優しく、優雅な画だろうか。

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やはり65 cmの撮影距離は大変便利で、フードフォトもこなせる。

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茅ヶ崎ビーチ

眼鏡付きなので速射に劣るかといえばそうでもない。キャンディッドも問題なくこなせるだろう。
上位モデルのF2.8より半段ほど暗いこと、F2.8の方がより鋭敏な描写をすることは間違いないが、デイライトで絞って街並みを撮るのならば描写に大きな差は出ないだろう。

今はもう手元にはないが、こういうレンズを本当に大切に使っていく、そんなカメラ人生を歩みたいと思う。

旅するカメラ エイ文庫

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