Cure of GAS

Castle Rock Photography

写真やカメラにまつわる話を淡々としていきます。

モノクロ暗室体験と感想

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都内にある暗室ワークショップに参加して実際にプリントを体験してみた。事前に少し予習はしていたが、実際に暗室に入るとその独特の雰囲気、レッドライトの妖艶さに少なからず興奮を覚えずにはいられなかった。

プリント手順自体は思ったより易しく、自宅の浴室で行う現像の方が緊張感のある作業だと感じた。しかしこれは引伸機をはじめとして全ての機器や用具が完璧に揃っているためと思われる。よってこれらのインフラを自宅に設備するとなると相当の工夫が必要で、作業は困難を極めるだろう。

今回は35mmのみキャビネサイズでプリントした。7時間ほどの間に30枚程度。現像液に浸した印画紙から像が浮かび上がってきた時は全く新しい神経細胞が刺激されたような気がした。新しい世界の幕開け。

水洗まで終わってようやく部屋の明かりをつける。事前にテストペーパーで露光時間やフィルターを調整したため綺麗なトーンが現れた。指導員の方からOKサインが出た。とりあえず濃すぎず薄すぎずの基準が分かったので、あとはフィルターなどで微調整しながら色々試せば新しい発見があるかもしれない。

基本的には大丈夫そうなので、あとは自分で進めてくださいという声をいただき、その後は1人で作業を進める。ネガのセット、露光時間の調整、印画、現像液から水洗いまで淀みなく、システマティックに手を動かす。一度だけ未使用の印画紙を広げたまま室内光を点けそうになってヒヤッとした。慣れた頃にミスが起きるとはまさにこのことだろう。

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お昼は近くの蕎麦屋でざるそばを食べた。静かな店内で蕎麦を勢いよくススっているといつしか合唱のように周りのお客さんもズルズルすすり始める。蕎麦はこうでなければ。

再び暗室に戻り缶コーヒーを飲みながら1人黙々と作業を進める。20年ぶりにタバコが吸いたくなってきた。暗室の陰鬱な雰囲気がそうさせるのだろう。結果が全ての孤独な作業。自己責任で言い訳はできない。この感覚、家族を持ってからというもの忘れかけていた感覚。男には1人になる時間が必要なのだ。

あっという間の7時間だった。指導員の瀬戸さんに1枚だけ写真を褒められた。海辺のカフェで撮った20年来の友人のポートレート。高校時代と変わらない屈託のない笑顔をこちらに向けている。「いい笑顔だね、トーンもとても良い。」
気心の知れた人間のポートレートほど素晴らしいものはないのかも知れない。

自宅に戻ってから、ネガをスキャンしてプリントしたものと比較してみた。どちらも綺麗だが、長く見ていられるのは手焼きの方だった。バイアスのかかっていない妻にブラインドテストしてみたが、やはり手焼きの方が良いと答える。理由はわからないしうまく説明ができないらしい。世の中理屈で説明できる事よりも説明できない事の方が大切なのかも知れない。

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最後になるが、採算度外視で今でもこのような場所貸しを行なっているオーナーや写真家の方に感謝の気持ちでいっぱいである。頻繁に通うところではないし、それなりの写真を撮らなければというプレッシャーもあるが、また是非利用したい。その後、友人のポートレートは郵送で彼に送り、妻のポートレートは額に入れて立て掛けた。彼からの返信「とても気に入っている。ありがとう。」

 

 

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