Cure of GAS

Castle Rock Photography

写真やカメラにまつわる話を淡々としていきます。

脳 MRI (備忘録)大きいは正義?

先日脳MRIを受けてきた。

実はめまいがぶり返しており、その関係で大学病院へ紹介状という形になった。「うちではこれ以上はどうしようもありません」という医師(近所の耳鼻咽喉科)の言葉は素晴らしい。プライドや見栄でダラダラと診察を続けられるよりははるかにマシである。

というわけで人生初のMRIとなった。これは私にとっては非常にラッキーなことで、40も過ぎているのでそろそろ人間ドック、特に脳ドッグなるものを受けてみたいと思っていた。小さな腫瘍や出血などがある可能性は否定できない。しかし健康診断の流れだと自費となってしまい。これがそこそこというか、かなり高い。中級クラスのレンズが1本買えるくらいはする。

検査の当日は有給をとって休むことにした。特に食事制限はなかったため昼は妻とイタリアンの店でランチした。夫婦で平日のランチはなかなか機会がない。

 

「身体の中に金属ありますか?」

MRI予約をとる際に医師に聞かれたが返答に一瞬戸惑った。もちろんない。しかし小さい頃 ”Xファイル” のファンであった私は 、いや待てよ “ひょっとしたら宇宙人にチップを埋め込まれているかもしれない” という疑念を最後まで取り除くことができなかった。以前放射線技師さんに聞いたのだが、実習中にうっかり胸のボールペンを挿したままにしていたため、MRIが起動した瞬間にそれがロケット弾のように飛び、機器に突き刺さったということである。恐ろしい。私の脳に埋め込まれたチップはエイリアンのごとく頭皮を突き破って数億円の機器をダメにしてしまうかもしれない。

検査は淡々と進んだ。ハザードマークの描かれた物々しい扉が連なる病院地下で問診を取られ、再度金属や彫り物の話をされる。ヒートテック衣類は禁止(熱を発する)、金属はもちろん禁止。タトゥー、ネイル等も禁止。若気の至りでタトゥーを入れなくてよかった。 脳の検査なのでズボンは脱がなくてよいと言われたが、チノパンのチャックがドーナツボタンのためかなり心配になった。縫い付けてあるので問題ないとのことだが、男性器の最前線で待ち構える5つの真鍮ドーナツリング、これが前述ボールペンのごとく”ひょっとしたらロケット弾化”するなど気が気でない。

「すみません、全部脱いでもいいですか」と看護師にお願いして、入院患者用のガウンを羽織って検査開始。

内部は結構狭い。SF映画なんかでみる冬眠用ポッドのサイズ感だろうか。実際中に入ると本当に狭くて、天井との差は20cm程度。おまけに頭はレクター博士の拘束着のごとく固定され、身動き1つできない。閉所恐怖症の方には大変辛いだろう。

「長くて20分です。その間動かないでください。動くと画像が乱れます。」

なるほど、すごいよくわかる。被写体ブレってやつですね。それならシャッタスピード250くらいにして、などという冗談をいえる雰囲気ではもちろんない。いいでしょう。ダゲレオタイプね(露光が20分くらいの銀板写真)。待ちましょう。

両耳をパッドのようなものでなぜ塞ぐのか疑問だったのだが、検査開始後その理由がわかった。狭いところで動かないのはまあ苦痛ではない。しかし開始後すぐに始まる機械音、文字通り大変な騒音である。ドンドンドンドン、ピーピーピー、ポポポポポ..... 耳を塞いでいてもびっくりするくらい大きな音。比較的静かな環境を好む私には非常に苦痛であった。途中ドンドンドンという音と共に仰向けになっている背中の下がドスンドスンと揺れた。これは機械が爆発するかもと思い本当に怖かった。

技師さんの「終わりましたよ」の声に救われる。

結局終了時まで目をつぶり、唾を飲み込むこともせずに静物化した。今度生まれ変わるときにはデッサンモデルにでもなれるかもしれない。

なぜ音が出るのかが疑問だったので後で調べてみると、電流と磁場によって機器全体がまるでスピーカーのようになるためらしい。電流によってコイルが膨張したり縮んだりする音。MRIは人類の叡智ともいうべきすごい最新機器なのに、ものすごくアナログさを感じるのは私だけだろうか。サイレントのMRIも開発中か、すでにあるらしいのだが、そりゃそっちの方がいいわ。

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SIGMA 35mm F1.4 DG ART

「結論から言うと...」診察時、医師がおもむろに話し始めた。「なんともありませんね。いやぁ綺麗な脳してますよ(笑」

その後めまい予防のための体操などを教わり、時間が解決することを知る。 診察後、記念にMRI画像をプリントアウトしてもらった。

帰宅した後で妻に、結果は”綺麗な脳”だったということを伝えた。「よかったね」

それから昨日作った野菜とレンズ豆のミネストローネを温め直して夕飯の代わりに2人で食べた。

夜も更けた頃、書斎に戻ってあらめて自分の脳画像をみる。自分の頭の中にこんなカブトガニに似たものが入っているとはどうにも実感がわかないが、妙に愛おしくなった。これが自分の意識の源なんだ、活動の中枢なんだ。『精神は肉体の玩具』という言葉にあるようにこれからも健康につとめ”良い血液”を脳に送り込んでやらなくては。

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SIGMA 35mm F1.4 DG ART

それで、前から気になっていたレンズを買った(ポチった)。SIGMA 35mm F1.4 DG ART。脳ドックに自費で行くと思えば安いもんである。予想通り、誰もが寝静まった闇夜の、凛とした空気の中で私の脳にはドクドクと”上物(じょうもの)の動脈血”が供給されるのを感じた。生きているって素晴らしい。

2日後に商品が到着して、早速開封する。まず、重たい。summiluxやdistagon (M mount)なんて比じゃない。久々に重量級のレンズを手にした。しかし描写性能はすこぶる良好。笑ってしまうくらい良く写るレンズである。もちろんだからこそ、この大きさと重さでも市場に供給できるだけの需要があるのだろう。

個人的な経験では、大きなレンズで性能が悪いものに出会ったことがない。光を取り入れる口径が大きいほどリッチに描写する。もちろん最初からF2のレンズを購入すればサイズは小さくなるだろうが、F1.4をF2で撮影した方が個人的には”明るく”感じる。 MRIも、後何世紀か先にはSF映画のように手持ちの刷毛(はけ)のようなもので頭をスキャンすれば異常部位をホログラムで写してくれるのだろうけど、当分はあのバカデカイ棺のようなものに横たわるしかなさそうである。

人体を透視するほどの素晴らしい描写性能と大きさはトレードオフの関係か。 やはり大きいは正義、か。