チタン外装されたボディに Zeiss の銘玉 Sonnar が装備された超プレミアムコンパクトカメラ。友人の妻の親父さんが山岳マニアでカメラを沢山持っておりこれはその1台。
以前から気にはなっていたが、今回試用できる機会に恵まれたのでレビュー。おまけとして同じスペックのSummaron 35mm F2.8との画像比較も試みた。
本当に小さく軽い。しかしチタン素材のため重厚感は十二分に感じることができ、いい意味で予想を裏切られる。
電源スイッチはついておらず、ボタンを押しながらダイヤルを P へ回すとギュニュイイッといった感じでレンズが飛び出してくる。基本はPモード、そして絞り優先モードのみでISOはDXコードの自動読み取り、シャッタースピードは露出に応じて自動的に設定される。
AF 精度はかなり良好で、少なくとも試し撮りした(フィルム2ロール)において、ピントの中抜けは0%であった。
画質についてはまあとにかく素晴らしいの一言。本当にこんな小さなレンズからなぜこんなにリッチで解像度の高い画像が生まれるのかわからない。さすが Zeiss。そして最短35 cmも驚異的で、おまけに近接撮影でも画像の破綻がない。まさに"寄れるは正義"を地で行く名機。
せっかくなので同スペックのLeica summaron 35mm F2.8と画像比較をしてみた。フィルムはilford HP 5 PLUS、絞りは両者ともに同じ値、露出についてはT3はSSを設定できないため、測光時にT3で表示されたSSの値をLeica M6に設定して撮影する形とした。本当は三脚を使いたかったがそこまでガチでやる必要はないと思い、全て手持ちで撮影した。
絞りF4の作例。正直見分けがつかない。両者ともにピント面の立ち上がりを含め素晴らしい解像度である。しかしSummaronの方がはるかにオールドであることを考えると、これはT3の小さなレンズの性能よりも、むしろライカレンズ素晴らしさをあらためて証明する結果となった。
とはいっても周辺を隈無く調べるといくつかの差異はある。まずT3の方が周辺までキッチリ描写しており、明らかに性能の高さがうかがえる。一方でSummaronは周辺がやや緩い。F5.6あたりでも緩さは残る。よって撮影画像を俯瞰で眺めてみるとT3の方が現代的にビシッとキマっている。
F5.6 :
F2.8 :
暑い日で我慢できずに思わずグイッと飲んでしまったので、2枚目はコーヒーの量が減っているが、開放での作例ではBokehはSummaronがややうるさく、T3が素直な描写に感じる。何れにしてもやはりSummaronの方が周辺は緩い。
ただ個人的にはライカレンズの魅力はこの辺りにあるのかな、と思う。つまり現実をあまり写しすぎず、観る者の想像力に委ねる、といった感じで。周辺を曖昧にして主題(中心部)を浮き上がらせてドラマチックに表現するように。
まあとにかく1週間借りて例のごとく良い値段で譲ってもらえるという話になったのだが、今回は丁寧にお断りした。若者を中心に人気の機種で実際市場価格はM型フィルムライカが買えるほどになっているので悪い話ではなかったのだが、なぜかしっくりこない。最高に小さくて最高に画質が良く、自動で撮影してくれるのにも関わらず、個人的には面白さを感じなかった。まあ露出補正するにもボタンを押して液晶画面で行うので操作が少し面倒ということもあったが、どちらかといえば相性の問題である。
機会があれば是非。
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