Cure of GAS

Castle Rock Photography

日々について淡々と書きとめてます。

【50mm編】ライカMマウントレンズまとめレビュー

50mmの画角は嫌いではないが、特に好きでもない。常用かと言われればそうでもないし、全く使わないわけでもない。標準と呼ぶにしてはやや狭いし、被写体を強調するには広すぎる。無個性のようで時々ハッとするような、直感に訴えかけてくる絵を描くことがある。

私にとって50mmは"秋風のような存在"だが、意識せずにはおけないものだ。

50mmの利点(利点というのも変なのだけれど)としては比較的明るいレンズがコンパクトなサイズと価格で手に入るということで、バリエーションも豊富である。これまで使ってきたライカMマウント50mmレンズをレビューしたい。

Leica Elmar 5cm F2.8 (M-mount 1st)

"やはりエルマーだね"と誰かが言っていたような記憶があるが、新古様々なレンズを使った後ではなんとなく分かる気がする。控えめなF値による解像度の高さと安定感、それでいてオールドな、斜光をディフューズする思いやりも持っている、そんなレンズ。沈胴式は実用性、遊び心に優れ、撮影毎に撮る楽しみを与えてくれる。

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Leica M3

このレンズ、当時5万円程度で購入したのだが、無限が出ないという初期不良で返品することになった。よって作例は数枚しかないがそれでもなんとなくいい想い出のレンズ。ちなみに現行で再発モデルが新品で買えるので特にこだわりがなければそちらの方をお勧めする。

Leica Summarit 50mm F1.5  (L)

当時にしては開放F1.5はかなり明るいレンズで、フィルムしかない時代には特に重宝されたレンズであろう。その反面、開放の描写は独特で、いい意味でアーティスティック、悪い意味では盛大なフレアが出てとても使い物にならない。

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GINZA Leica M3

かなりしっかりした作りで、重量もある。ずっしりとした重みは歴史を残そうとした当時のカメラマン達の覚悟そのものかもしれない。個別レビューもあるので参考にしていただきたい。

Leica Summicorn-M 50mm F2 (4th)

イカレンズのうちズミクロンの銘が付くレンズの描写は本当に、何の文句もつけられないくらいどれも大変素晴らしい。そこにあるありのままの現実を、なんの誇張もなくフィルムやセンサーに焼き付ける。コンパクトで軽く、かと言ってチープさは微塵もない。明るさもF2と常用では十分すぎるもので、日常スナップにも長期の旅行にも余裕で対応できる。

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Leica M6

本モデルに関していえば埋め込み式のフードが使い勝手が良い。全てのモデルを使ったわけではないが、解像度や描写はシャープでなんの不満も見当たらない。反面遊び心にかける。シリアスなドキュメンタリー撮影向きのレンズと言えるだろう。

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一応、個人的な経験からの補足としては、このレンズ、女性ポートレートには向かない。猫の毛並みの描写は歓迎されても貴婦人の産毛まで描写することは大いに歓迎されない。ポストプロセスでクラリティー(Clarity)を下げるなどの工夫が必要だろう。

Leica Summilux-M 50mm F1.4 (2nd)

50mmといえどF1.4クラスになるとそこそこサイズや重さが増える中、このレンズはありえないほどコンパクト。それはズミクロンと比べても大きな差はない。描写は一口で言えば、透明感があり柔らかい。開放では穏やかなフレアが出るが、それが大変魅力的で女性ポートレートには最適だろうか。

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Leica M3

問題なのは中古市場価格と状態で、場合によっては現行モデルの中古と変わらない価格にまで上昇している。やはりオールドレンズ特有の危うさがあるため大切にメンテナンスしながら趣味で楽しみたい方にはお勧めだが、デジタルである程度シリアスに撮影したい方は現行モデルの選択が良いだろう。

Leica Summilux -M 50mm F1.4 ASPH.

現行モデル。描写は開放から実用域。とにかく良く写る。ライカレンズに何を求めるか。オールドもいいが "どんな状況でも正しく写す" というのも大変重要かと思う。

私のようなフィルムユーザーにとっては実用面で明るいF値が必要なことが多く、時には描写と引き換えにしてでもとにかく明るいレンズを求める傾向がある。そう言った意味で明るく、描写もいいこのレンズは常用レンズとしても大変に価値が高い。

ISOが無限に上げられる(フィルムと比べれば無限と言っても差し支えないレベル)デジタル機ならその開放値から生み出される優雅で均一なボケで女性ポートレートの次元を数段上げるのも良いだろう。

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Leica M6

Carl Zeiss Planar 2/50 ZM

Zeissレンズのイメージはそのロゴカラーが示す通り青。冷たい青、暖かい青、水色、空色、青藍などなんでも良い。とにかくどのレンズも描写は大変素晴らしく、クールに、透過性良く結像する。ズミクロンのほうがやや柔らかい印象を受けたが、それもまた面白い。

コストパフォーマンス重視の方にとってはズミクロンに比べ圧倒的に優っているため、50mm常用レンズとして是非お勧めしたい。

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Carl Zeiss C Sonner 1.5/50 ZM

実はズミルックスを差し置いて、最もお気に入りなレンズ。このふわっとした開放の写りには毎回ため息が出るほど。光の描写が美しい。一見すると有害な短波長領域を光に照らされた繭糸のような純白の輝きに変えてしまう。

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もちろん絞れば通常の50mm。どのレンズにも劣らないZeissクオリティー。最短撮影距離が1mのためテーブルフォトにはやや工夫が必要だが、とにかく魅力的なレンズ。ズミルックスを検討しているのならば是非一度試していただきたいレンズ。

 

総括

冒頭でお伝えした通り、私にとって50mmは常用レンズではない。しかしなぜか時々使いたくなる、そんな不思議なレンズである。参考にしていただけたら幸いである。

 

 

誰がためにフィルムで撮る For Whom the Film Is Taken

写欲は一向に戻らない。最後に記事を投稿してから撮影したのは120フィルム2ロールのみ。猫と花と、正月の家族写真。

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元日の猫 Hasselblad 500C/M CF100mm F3.5

以前から気になっていたZINE。撮りためた材料も集まった事だし、そろそろ1冊、というわけで FUJIFILM で MAGAZINE を作成してみた。

pg-ja.fujifilm.com

フィルムをスキャンしてデータ化したものをオンラインで送信注文。10日後に仕上がった。ハードカバーのタイプなど様々なものがある中で今回は一番薄くて大きいA4サイズの MAGAZINE。画像は全てハッセルで撮影したスクウェア

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PhotoZINE MAGAZINEタイプ A4サイズ

モニター上での色味と印刷は異なるのが普通だが、そこはさすが FUJIFILM、かなり綺麗に仕上がっている。プライスも2000円程度で、個人的にはかなり満足している。

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自動補正なし。モニター上の色味と遜色ない。

一度スキャンしているため中判フィルムの恩恵は全く受けていない。つまり引き伸ばし耐性は関係ない。この状態ならおそらく APS-C デジカメでフィルム調に加工しても見た目はあまり変わらないだろう。妙な考えが頭をよぎる。フィルムで撮る必要があったのかな、と。(GR II ↓ B&W で加工)

Milano

Isola Superiore

『誰かがフィルムで撮らないと、フィルムはこの世から無くなってしまうだろう』 海外の記事で偶然出会ったフレーズ。救世主になるつもりはないが、一つの考えとしては共感できる。しかし私はフィルムで撮った写真はネガやポジとして残る事、これが最も重要だと考える。光による化学変化でフィルムに像が浮かび上がる。それは全く電気的な要素が関与していない、今そこにある存在そのもの。

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Hasselblad 500C/M CF100mm F3.5



個人的には、撮りためたネガやポジフィルムは画家が大量のデッサンを残すのと同じ価値があると考えている。そんな過程を経ていつか自分自身や大切な家族のために作品が出来たら素晴らしいと思う。

 

2020年 新年の挨拶にかえて

 

 

 

 

少し休息が必要かもしれない

海外から戻ってきてめっきり写欲が失せてしまった。 理由は分からないが、率直な気持ちを言葉にすれば撮りたい対象が無い、ということになる。

家族(といっても妻と猫の3人暮らし)の写真を撮るのは大変意味のあることだが数年後に見直して「なんか若いねー」程度の楽しみならば年に1枚くらい撮っておけば良いと思うし、家の近所については救いようがなく、そもそも東京郊外の都市においては基本的に撮るものは何もない。アーウィットのように近所を歩き回り犬の面を被った(正確には犬そのものなのだが)被写体を撮影するチャンスや度胸も私にはない。

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Hasselblad 500C/M Milan

海外のフォトグラファーのブログに書かれていた。

「普段は滅多に写真を撮らない。しかし撮るときはフィルム100ロール近く撮る。そしてその期間は1年のうちわずか1ヶ月程度」

 

つまり国内、海外を含めた特別な遠征を年に1回程度するということだろう。なるほど、そういう楽しみ方もあるのか。

 

一方ソール・ライターは「写真を撮るのに地球の裏側まで行く必要はない」と述べていた。実際ライターはニューヨークを拠点に、自宅周辺数ブロック内を散歩しては素晴らしい写真を残してきた。

そりゃニューヨークに住んでいれば、ね、というツッコミは抜きにしても、写真を撮るのに遠出する必要はないという考えには只々感心する。

 

結局自分自身の問題なのだろう。ある被写体を芸術と呼べるレベルまで引き上げることのできる写真家はプロ・アマチュア問わず間違いなく存在しており、そういう人はただのゴミ箱を撮影しても「なんか、良いよね」と人々を感動させることもできる。

それを探し出すだけでも写真集やWebの写真(もちろんはてなブログの皆さん)をみるのは楽しいものであるし、それらの刺激を受けてまた写欲が戻ってくるといいなと思う。

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Geneva

さてと、季節の変わり目。少し休息が必要か、な。

 

共感した記事:

Paris

Paris

 
Saul Leiter: In My Room

Saul Leiter: In My Room

 

ヨーロッパ周遊記

ヨーロッパへ持参したカメラはHasselblad 500C/M、Rollei 35そしてデジタルはGRII 。

カメラの選択には1ヶ月かかった。

荷物は出来るだけ少なくしたいが、中判でも35mmでもフルサイズデジカメでもGRIIのようなコンパクトサイズでも撮りたい、などなど欲は尽きない。まあよくある悩みだ。結局本能にしたがって上記の組み合わせとなった。

フィルムは現地で買うことも考えたが、以前まとめてB&Hで輸入したものがかなり残っていたので30ロール程度をジップロックに入れてバックに詰め込んだ。それでもかなりの量である。

so far away

フィルム写真で一番心配なのはX線検査である。

経験上、2回程度ならばフィルムに影響はないと知っていたが、今回は空路の移動が多く、照射回数は最低4回程度となるため不安は募る。

成田空港からスキポール空港

成田空港ではなんとX線を通さずに無事に通過できた。女性検査員の方にフィルム入りの袋を見せると、あーといった感じで、

「目視確認したのでそのまま通過して下さい」

と言われた。さすがカメラ大国日本。素晴らしい。

それから11時間のフライトを経てオランダスキポール空港到着。トランジットで当然のごとくX線検査があった。やはり成田同様ジップロックに入ったフィルムを見せて照射無し通過を期待したのだが、有無を言わさず機器に通された。その後、保安員に呼び出された。

「これはあんたのカバンか?」

「そうだ」

「Open」

ヒスパニック系の真面目そうな青年だった。どうもハッセルの内部に麻薬か爆発物が隠されていると疑っているようだ。特殊な器具でハッセルの表面をナメるように検査する。もちろん何も反応はない。そして「OK」とだけ言われて無事ゲートを通過した。その後スタバで休憩してドイツのミュンヘン空港へ。

ドイツ入国

ドイツ入国時は荷物検査はないためX線は免れた。ミュンヘン空港近くのホテルで1泊してから翌日ヴェニスに向かう。

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Rollei 35

ヴェニスまで空路で向かうため、ドイツ出国時に再びX線検査があった。もうほとんど諦めていたのでダメもとで鼻立ちの整った若い女性保安員にフィルムを見せながら事情を説明すると、ISOはいくら?と聞かれた。

これはうまくいきそうだ。そこで 400 と答えると初老の男性を連れてきた。

話が通るかと思いきや、有無を言わさずフィルムを機器の中へ放り込まれた挙句、個別に呼ばれ、カバンを開けてカメラを見せろと言われた。

スキポール空港に続いてこの時点でかなりウンザリしていたが仕方なくハッセルとローライを目の前に置く。

ちなみにRollei 35はドイツ製。それを見た初老の保安員が少しニヤけたのを私は見逃さなかった。そしてやはり特殊な機器をナメるようにカメラに当てる。もちろん問題なし。立ち去ろうとすると妙な質問をしてきた。

「このフィルムはどこで買った?」

「日本」と私。

「 1 個いくらくらいだ?ユーロで答えてくれ」

これは世間話ではなく、こいつは本当にフィルムカメラでフィルムを使って撮っているのか、その確認だろう。麻薬の運び屋ならフィルム1個の値段を答えられないはずだ。

仕方なく頭の中で円ユーロ換算するがいきなりなのでかなり難しい。しかもフィルムのブランドや種類によってかなり幅があるではないか。とりあえず

「8ユーロ(およそ950円)」と答えたのだが、

「ノーッ!!」と即答された。ドイツ人らしい自信に満ちた返答である。

高いのか。しかしドイツ国内のフィルムの相場なんて私が知るわけがないじゃないか。それで「4ユーロ(500円)」と答えると、

「ノ、オ、アー、イエス(ヤー)」と口ごもった。

すかさず「日本じゃフィルムは高いんですよ」と伝えるとなぜか笑顔で両親指を立てて「OK」と言われ終了した。全く。。飛行機はヴェニスを目指す。

ヴェネチアヴェニス

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Venezia 上空 / Rollei 35

常夏のベネチアに到着後、すぐにハッセルを手に写真を撮り歩く。いずれ沈むかもしれない奇跡の街。フィルムに残しておく十分な理由だろう。

Venezia

 

Venezia

Venezia, Italy

 

ミラノへ

翌日ミラノまで陸路で向かう。

列車内ではひたすら車窓からの景色を眺めていた。葡萄畑だろうか、牧歌的で心が和む。数時間後、ミラノ中央駅へ到着した。

Milan Central Train Station

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Milan / Rollei 35

ミラノで1泊し、スイスへ再び陸路で目指す。アルプスの連なる雄大な景色へと移り変わる様に我を忘れて、飽きる事なくシャッターを切る。

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車窓から

ジュネーブ

ジュネーブに到着。ホテルに荷物を置いて近くを歩き回る。翌日は車でレマン湖をドライブする。大変美しい。こんなに雄大な景色を眺めていると日本でいつもギスギスしている自分(そして人々)は一体何者なんだろうと考える。

Château de Chillon (Chillon Castle)

 

帰路へ

スイス出国時、最後のX線照射を受けた。ここでも「ISOは?」と聞かれたが、ISO4000まで平気と言われ機器に通された。飛行機はド・ゴール空港を経て羽田を目指す。

 

 X 線の影響

成田空港で照射を受けなかったお陰で、合計3回に止める事ができた。帰国したその足で銀座のラボにカラー現像を依頼する。数日後仕上がったネガをみても特にダメージは感じられないが、数枚の写真に通常なら起こりえない現象、白もやや白線が見られた。

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4秒開いた。白いモヤが確認される。

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下方に水平に横切る白い線が見える。

肉眼ではこの程度だが、CineStillフィルムをSilversaltさんへ現像依頼した結果、かなり興味深い返答が返ってきた。

ネガの濃度(fog)が高い、X 線や非常に暑い場所にフィルムを置いていませんでしたか、とのこと。素晴らしい。さすがプロ中のプロ。数値として出されるとやはりX線の影響はある、と考えられる。

ちなみにX線をうまく避ける方法は ISO値を聞かれたら6400と答える事、そして(事実でなくても)自分は職業的フォトグラファーのためリスクは避けたい、と伝えれば良いとアドバイスまで頂けた。

旅の総括

正直なところ、海外に重たいフィルムカメラを持っていく、さらにフィルムの扱いに気を使う事はストレスであった。旅、特に海外旅行となると持っていくカメラやレンズに悩むのは当然で、また選択を誤ると疲労で旅が台無しになる。

Web を調べると当然のごとく、軽いのが良い、コンパクトが良い、レンズは広角1本で良いなど色々なアドバイスがある。しかし個人的には自分が本当は何で撮りたいのかを優先する事が大切だと考える。

私があの重く扱いずらいハッセルを持って行ったのは単純にハッセルで撮りたかったからで、6×6のスクリーンから見える美しい街並や景色を独特のボシュんという音で切り取ってみたい、ただそれだけのために麻薬の詰まった箱と間違えられても持参した。

いくつかの出会いもあった。ハッセルで撮影していると若いカップルに一眼レフで写真を撮ってもらえないかと頼まれた。

湖で撮影しているとフランス人の老夫婦に撮影を頼まれた。構図を意識して奥さんのスマホで撮影。良い感じの老夫婦だった。私もいつかこうなりたい。

フィルムにこだわる理由

今回旅行に出る前、およそ15年前にニューヨークへひとり旅した時のネガが見つかった。

スキャンしてみると見事な景色が色褪せぬまま存在していた。同時期に撮ったoptio s60というデジカメの画像は現在のスクリーンでは親指ほどの大きさの解像度しかない。

まだSDカードのバイト数が少なく、数多く撮るために画質設定を400ピクセル程度のサイズにしていたためだ。

当時のモニターではこれで十分であったが、現在の標準的なモニターでは引き延ばすことも不可能だ。またハードディスク間の移動によるデータの劣化も起こっている。

それをみた時、やはり大事な写真はフィルムで撮ろうと決めた。フィルムで撮っておけばその時代に適したスキャンのサイズでいつでも閲覧可能だからだ。

さてと、次はどこへ、そして何(カメラ)を持って行こうか。


Rollei 35 レビュー

ヨーロッパ周遊に Rollei 35 を持って行ったので、旅カメラとしての実地レビュー。

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Rollei 35 Germany

Rollei 35シリーズはいくつか種類あるが、これは Carl Zeiss Tessar 40mm F3.5 のベーシックなモデル。とにかく軽く、小さい。そして素晴らしい描写をする。この他にF2.8のSonnarやトリオターもあり、それぞれ描写傾向がやや異なる。

Galleria Vittorio Emanuele II

旅の間、文字通りポケットに忍ばせて街歩きをしながら気になった物や瞬間を切り取った。開放F3.5は決して明るくないレンズだが、ミラーショックが無いため、ISO400でSSを1/8にすれば大抵のシーンで手持ち撮影できた。

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Fish market

 

しかし露出はいいとして、問題はやはりピント合わせだろう。

このカメラの特徴はコンパクトさと優秀なレンズの他に何よりも玄人好みのピント目測という点であることは否定できないと思う。レンジファインダーの二重像やレフのピント合わせとは大きく異なる、距離による測定。信用できるのは己の距離感のみ。

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F16

とはいえ遠景は問題ない。ISO400  F10  1/140で 1 m から無限遠までカバーする "写るんです理論(ただし焦点距離 32 mm の場合)" と同じく、ISO 400 1/250 F16 でピントを 3 m 程度に合わせれば 1 m から無限遠までピントが合う。ファインダーを覗いて構図を決めてシャッターを押せばよい。

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F16

しかしやはり夕暮れ時など絞り込めない状況ではこの方法は使えない。前述の距離感覚のみが頼りになるが、どういうわけかこの作業がやたら楽しい。

撮りたい被写体を見つけたら標準の狭間の焦点距離 40 mmの画角をイメージしながら距離を目測する。慣れてくると被写体を見つけた時点で左手はピントリングを回している。 いやむしろピントリングを先に回して距離をセットし、体はその位置へ移動するといったほうが良いだろうか。まさに撮影者がカメラを操作するのではなく、カメラが撮りたい被写体へ撮影者を誘導する。そんな擬人化が起こる。

Restaurant Les Armures

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F4

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F3.5

今回の旅に持参するカメラとして 35mmフォーマットはいくつか候補があった。しかしハッセルを持って行く関係でどうしても重量制限がある。消去法でRollei 35になったわけだが帰国してネガを見ると全く後悔が無い。とにかく素晴らしいカメラである。

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Geneve

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Geneve

 

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 皆さんも是非。

Rollei 35 silver

Rollei 35 silver

 

 

 

CONTAX G2 レビュー

T3、T2に引き続き、今回は最終回ということで CONTAX G2 について簡易レビューしてみたい。

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CONTAX G2

14年前(2005年)に製造が終わった製品なので今更感はあるが、一応簡単に説明しておくと、G2はGマウントレンズ交換式AFカメラで操作は全て電子化されている。一応レンジファインダーの部類には入るとしているが、ライカとは180度異なる。そもそも2重像のスピリットイメージもない上に、レンズは全てAF仕様でマニュアル操作できない。それでもその天井を削ったスタイリッシュなフォルムは like a LEICA(ライカのような) と表現しても差し支えないだろう。

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電子化という点を除けば、軍幹部のSS調整ダイヤル、レンズに絞りリングが付いていることなど往年のフィルムカメラの趣は十二分に残っている。ファインダー越しに合焦を視覚的に確認できないのがやや不満点ではあるが、AF精度は概ね良好で、合焦すれば素晴らしい絵となる。

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Zeiss Biogon 2.8/28 T*

カメラも素晴らしいが、特筆すべきはやはりこの素晴らしいGマウントレンズ群ではないだろうか。これまで使ってきたZeissレンズのどれとも似つかない写りをする。例えば Biogon 28 mmはMマウントでも使っているが、GマウントのBiogon は何か違う。線が太いだとか、粘りがあるとか、言葉にすることは可能だが、あえていうなら画の存在感と重厚感がMマウントと異なる感じを受ける。

Sonnar 45 mmも大変素晴らしく、このレンズを使いたいがためにG2を手にする方もいるようだが、その気持ちよくわかる。開放F2での合焦点のキレは見事で品があり、Bokehはトーンを残しながらもなだらかにつながっていく。

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Sonnar 40mm

T3, T2と使用してみて、個人的には一番しっくりときた。手にした質感、ホールディング、駆動音など、少なくとも現状はライカと同じかそれ以上のフィーリングを楽しんでいる。レンズの種類が少ないのも良い。邪念に囚われることがなくなり撮影に集中できるだろう。

 

 

機会があれば是非。

CONTAX G2

CONTAX G2

 

 

CONTAX T2 レビュー

前回の T3 レビューに引き続き、今回は CONTAX T2 についてレビュー。

所感としては、チタン外装のためか、ボディはかなり頑丈で、見た目より重い(およそ 300 g)。サイズや重さでは T3 が圧勝だが、個人的にはホールド感は T3 よりも良好と感じた。

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沈胴式レンズで電源と同時にレンズがニュイイッとせり出してくる。レンズ鏡筒には絞りリングがあり、回すと絞り羽根が実際に動く。これは T3 と大きく異なる点で、なんというか直感的な操作ができるので大変好ましい。

さらに T3 で煩雑だった各種設定もT2の方が簡単にできる。ユーザビリティとサイズをトレードオフしたT3を選ぶか、マニュアルの操作感を残した T2 を選ぶかは完全に個人の好みによるが、これまで軍幹部のダイアル操作に慣れている方には T3 よりも T2 をオススメしたい。

レンズはSonnar 38 mm F2.8。個人的には、このレンズの焦点距離が T2 の最大の魅力であり特徴だと思う。

描写は独特な、個性的な写りをする。F2.8で最短 70 cmのため Bokeh などを狙うのは難しいが、それでも立体感のある写りをする。コントラストは T3 の Sonnar より低めで、モノクロフィルムと相性が良いと感じた。

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問題点としては、AFがイマイチで、よく外す。これは T2 ユーザー共通の悩みのようでWeb上では “T2ピント合わせのコツ” なるものが散見される。 ファインダーを覗くと実線と破線のフォーカスポイントがあり、破線は近距離用だが遠距離撮影でも破線を被写体に合わせると上手くいくらしいが、やはり外すときは外す。しかし日中で絞って街並みや風景を撮るのならば全く問題にはならないだろう。

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目に合わせるなど、詳細な合焦は難しい。

カメラの質感は非常に高く、所有する価値や喜びはあると思う。しかし一応30年近く前の電子機器なのでプライス的なもの(高騰中)と検討する必要があるだろう。海外レビューやフォーラムを読むと皆 T2 や T3 に大変興味はあるが故障時に対応できるストアがないため尻込みしているとのこと。この点日本は大変恵まれており、長野県のリペアサービス諏訪さんは今でも現役でCONTAX製品の修理を行っている。年々パーツ等が減って修理をお断りすることもあるらしい。そういった意味ではCONTAXのカメラは今買い時なのかもしれない。

 

機会があれば是非。

京セラ Contax T2 チタンシルバー 【定価120,000円】

京セラ Contax T2 チタンシルバー 【定価120,000円】