Cure of GAS

Castle Rock Photography

日々について淡々と書きとめてます。

Flexaret VI レビュー

長いこと記事にしようと思ってそのままになっていた備忘録レビュー。

このカメラを知ったのは本当に偶然で、チェコ出身の小説家クンデラ存在の耐えられない軽さを読んでいた流れでチェコスロバキアに興味を持ち始めた。同時期、不思議なことに幾つかの店舗でこのカメラが売りに出されていた。値段も中判6x6フォーマットの中では高くはないし、うまくいけば写欲を取り戻せるかもしれない。それで興味本位で入手するに至った。

このカメラの歴史的背景は他の方のブログなどに譲るとして、以下外観を含めて使用感など率直な感想を述べたい。

デザインはカチッとしたローライとは異なり、柔らかさを帯びた、個人的には地中海沿岸諸国のイスラム芸術風の印象を受ける。棚に置いておくだけでも様になる。雑貨屋さんなどに置いてありそうな雰囲気。

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実用レベルでの話をすると、レリーズの位置が上部にあり、ピントリングがスライド式のバーになっている。ローライを使っていると最初かなり違和感があるがすぐに慣れる。個人的にはこちらのスライド式がピント合わせはしやすかった。

ファインダーは暗い。室内ではほぼ中心部分しか見えない。その点ピントの山は掴みやすい。これも多くのレビュワーが同意している。

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レンズは Belar 80mm F3.5 で、焦点距離Rolleiflex 2.8と同じ、換算44mm、ポートレートやブツ撮り向き。描写はかなり優秀で、合焦すれば驚くほどのシャープネス。開放では周辺のヴィネットが気になるが味と考えれば問題ない。メオプタ社自体は今でも現役で軍用のスコープなどを開発しているので、レンズの性能はお墨付きだろう。

Sunrise through the window

逆光でのフレア、ゴーストは壮大に出るが、そもそも抑制の期待はしていないので表現の一つとして使えるだろう。

好きなカメラではあったが、結局数ロール撮影して手放すことになった。原因としては近接における後ピンだ。個体差だと思われるがファインダー上で完璧にピントを合わせても絵はボケている。最初は私の技量かなと思ったのだが、これまでローライ、ハッセルと使ってきて真面目にピントを合わせて合焦していないことはなかった。

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ファインダー上では完璧に猫顔に合わせたはずが、後方のブランケットに合焦。

もちろん手放すことに躊躇いはあった。遠方は絞り込むため特に問題はないし無限も出る。デザインも気に入っている。しかし私はコレクターではない。コストのかかるフィルム撮影なら尚更、どんな時でも信用できる道具を使って撮影をしたい。この点ライカは素晴らしいと思う。フォーマットは違えど信用できる。

まあとにかくこのカメラのお陰で久々に撮影する楽しさ、現像を待つ喜びを感じることができた。その点は大変感謝している。差額出費はあったが高速を乗り継いで旅行に出たと思えば安いものである。

Winter Morning Windows

またいつか会いましょう。Bye Bye Flexaret

 

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  • 発売日: 2013/02/27
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