2008年8月に発売されたライカMマウント用大口径広角レンズ、Voigtlander Ultron 28mm F2 VM。少しだけ触る機会があったので簡易レビュー。
このレンズ、超屈折率レンズ採用で全長51.2mm、重さ240gと、大口径レンズにしては軽く短く、コンパクトなライカに最適な仕様となっている。やや大ぶりなM5はもちろん、標準的なサイズであるM型ライカにもしっくりと馴染む。フォーカス、絞りリングともに挙動は正確でストレスを感じることもない。
描写は現代的なレンズに共通した安心・安定さがあり、絞れば尚更他のレンズ、例えばビオゴンやエルマリートとの差異は見出せない。
このレンズの最大のセールスポイントである開放F2だが、周辺減光があるものの中心部はシャキッとした描写で、さすが現代設計のレンズといった感じ。ボケも大口径広角特有の嫌味のない描写でうるさくない。やや歪曲収差が残るが、フィルム、デジタルともに修正が必要なほどではない。
買いか?これは難しい問題である。そもそも広角レンズに何を求めるか。
28mmはストリートフォトの基準画角でもあり、どちらかというとF8以上に絞って状況によってはノーファインダーで使う画角である。開放、ましてやF2レベルを使う機会はそれほど多くはない。
しかし個人的には28mm以下の大口径広角レンズの開放の描写には特別なものを感じる。画角が広いためそれだけボケのエリアが大きく、場合によっては35mmよりもすごくボケている感があり、それだけ被写体が浮き出て見える。
描写以上に、フィルムユーザーにとってはレンズは明るければ明るいほど良いという点も重要だ。ISOが変更できない分、1段の違いが撮影可能か不可能かの判断に関わってくるシチュエーションが、デジカメよりも、はるかに多いから。
ライカ純正ではF2のズミクロン28mmがあるが、価格差はおよそ5倍。
ウルトロンを検討する価値は十分にあるだろう。是非お試しいただきたい。