中判カメラの中で、私が最初に手にした 6x6 フォーマットはゼンザブロニカだった。安価であったというのが入手の単純な理由だが、残念ながらファーストロールで手放す事になった。ある意味で不遇な、カメラである。
ゼンザブロニカの名誉のためあえて書き記すが、カメラ自体には何も問題はない。おまけにレンズはニッコールで、写りが悪いわけがない。吉野善三郎氏によって設立された会社は、1956年からカメラ事業を通じて戦後の復興を支えてきた立役者であり、2005年(ブロニカRF645を最後に撤退)までのおよそ50年間に渡り国民に愛されてきた功労・優良企業である。
私がこのカメラを手放す事になった理由はその "音" である。正直なところシャッターサウンドに衝撃を受けた。ライカM3のサウンドに慣れていた私にとってそれは大変にショックだった。個体差があるのかもしれないが、金属の跳ね返る音(ガッキーン)と、さらに...キーン...と反響する音まで聞こえた。しかしまあこれはこういうものだと思えば納得できたのだが、問題は猫である。
大好きな飼い猫がその音に驚いて逃げてしまった。 もともとノラ猫で警戒心が強いことも関係しているだろう。
猫を飼っている方はお分かり頂けると思うが、一旦嫌がることをすれば、その直接の原因(この場合はシャッターサウンド)のみならず、そこに間接的に付随する物事全て(この場合は私やカメラ本体、匂い)に警戒し始め、最悪、私が近づくだけで逃げていく事にもなりかねない。これは困る。
まあ言うなれば猫殿様の機嫌を損ね、解雇になった江戸幕府の老中のような具合だろうか。
後にハッセルブラッドを使う事になるわけだが、こちらも音自体は大きい。しかし猫は逃げない。
猫も殿様も気まぐれ。
ゼンザブロニカは沢山のモデルがあるため、それによる差もあるだろう。また機会があれば触れてみたい、かな。