Cure of GAS

Castle Rock Photography

写真やカメラにまつわる話を淡々としていきます。

風吹き荒れる中禅寺湖(奥日光遠征)

例年3月は妻と1泊旅行をするのが恒例で、北関東を中心に車で3時間圏内を散策していたのだけれど、このご時世、やむなくキャンセルをした。

そのかわりに1人で奥日光へ日帰りで行くことにした。まだ自粛要請が出る前の話である。まあ湖の写真を撮るだけだしクラスター3要素には当てはまらないだろう。持参したのはハッセルとキヤノンRP。フィルムは例のAgfa Copex RapidとKodak Portra。

途中休憩して2時間半。午前の早い時間帯で道中はかなり空いており、いろは坂はワインディングを楽しめる程にガラガラだった。スバルの4駆は素晴らしい安定感で山を駆け抜ける。

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いろは坂にて

奥日光に行くのはこれで2回目、前回はおよそ10年前。思えば生活に少し余裕ができた頃で、ナビもついていないオンボロの軽自動車で妻を乗せて湖畔をドライブした。

湖南西の駐車場に車を停めて早速機材を下ろす。しかし寒い。ここ数日首都圏では暖気が流れ込んでおり春の陽気と勘違いしていた。風が吹き荒れており、念のために持ってきたコートとウィンドブレーカーを重ね着しても凍えるほどだった。しかし天気自体は良く、時折青空が顔を覗かせる。

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凍りついた手すり / Hasselblad 500CM

三脚にハッセルを固定し数枚の写真をとり、ND-1000フィルターで露光を長くし湖の荒波を鎮める。日常ではハッセルの重さを呪う事があるが、こういうシチュエーションでは逆に機材の重さがありがたい。風などものともせずにどっしりと構えている。

Lake Chuzenji (Chuzenjiko)

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ND-1000 / 10 sec

しかしどうにも寒すぎる。

一旦機材を車にしまいこんで、キヤノンRP片手に散歩をしながら目についたものを切り取る。平時がどうなのかわからないが、歩いている人はほとんどいない。途中蕎麦屋湯葉蕎麦とおいなりさんを食べた。とても美味しい。

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湯葉蕎麦。心まで温まった。

客は私一人で愛想の良い店主と少し会話をした。昨日はもっと風が強かったらしい。例の騒ぎで観光に影響が出ているのか知りたかったが、そんな野暮ったい事を聞くのはやめておこう。 礼を言って店を後にする。

 

その後再び車に戻りハッセルにポートラを詰めてカラー撮影。やはり手持ちのハッセルは重く、なかなか手強い。

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独特のフレアが神々しさを演出する。Distagon C60 F3.5

実は今回初めて気づいたのだが湖周辺はフランス、イタリア、英国など外国の大使館別荘地だらけである。避暑地としてここで過ごすのだろう。そう思えば湖へと続く裏道がニースの街並みのように見えてくる。

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港町の雰囲気が良い。

昼過ぎに湖を後にする。気温も高くなり中心部ではかなり人が増えてきたようだ。なんだか少しホッとした。また状況が改善したら旅館に泊まって湖に映る夕日でも見ながらゆっくり過ごしたいと思う。

 

自宅に着いて早速現像に取り掛かる。Agfaは相変わらずの高解像度でハッセルレンズとのコラボは凄まじいシャープネスを叩き出す。ポートラも同様。もはやフィルムらしさが無い。キヤノンRPで撮った画像と比べても一見区別がつかないレベルである。 ハッセルは商業的プロ機、その優秀なレンズはフィルムで表現できる画の限界値を引き出している事がよくわかる。そうなってくると不思議なことに、もっとユルイ、眠い絵を求めるようになるのがフォトグラファーの性(さが)。 

 

https://www.instagram.com/p/B-dHgk6j8Ys/

 

終わりなき旅路。

 

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  • 発売日: 2016/11/15
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魅惑のフィルム

相変わらずフィルムで撮っている。

レンズやカメラに対して倦怠期という時期で、その辺りにはどうにも楽しみを見出せ無くなった。これまでの金銭的な負担も大きく、計算するのも恐ろしい。幸いなことにローンは無い。買えないものは買わない、買える範囲で買う。いわば沼でこびりついた泥を洗い流してヌルめの湯に浸かっているような気分である。

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かつての相棒達

ふと思い立って高解像度フィルムを手に入れた。Agfa Copex Rapid 120。

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これまで高解像度フィルムはあえて避けてきた。理由は単純で、その低いISOがスナップ的な撮り方にそぐわないためである。ISO20や50ではF1.4であってもとっさの室内撮影はほぼ不可能。個人的にはISO400がベスト。

ところが最近腰を据えて中判で撮ることが多くなってきた。しがないサラリーマンのため撮影機会はそうそうあるわけでは無い。撮るときはどっしりと構えて、いわゆる三脚+レリーズ、である。

ハッセルに詰めてみる。なんだかウキウキする。まるで新しいカメラを購入したような気分だ。よく考えればフィルムはデジカメでいうセンサー。フィルムを変えることは新しいカメラを買う事と相違ない。

日中の室内、自然光の下絞れるだけ絞って場合によっては20秒近く開いた。撮影から現像まで何から何まで時間がかかったが、同時に新しい感覚を覚えた。

Flowers

現像液はSpur。注意深く26度まで温度を上げる。そうして出来上がったネガを見て、その美しさに息をのむ。そしてスキャンしてニヤける。

Flowers

サスティナブル(持続可能)、という言葉が思い浮かんだ。写真という趣味を長続きさせるためには急がない事。そして散財しない事。カメラ、レンズだけではなく現像液、フィルム、もちろん被写体など違う視点から包括的に捉える事。

Dried Flowers

やっぱり、この趣味は楽しいね。

 

Magnum Contact Sheets

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続編:ストリートフォトについて思うこと

「〇〇さん、写真撮ってるんでスよね、これってどう思いまスか?」

職場の男の子(といっても十分に成人だけれど、私からすれば20代は男の子に見える)、がそういってスマホの画面を見せてきた。 写っていたのは例のアレである。現状公式では削除されているためここではURL等は載せないが、X100Vのプロモーションビデオで写真家の鈴木氏がストリートフォトを機敏に撮っている動画だった。

以前書いたように私はストリートフォトを撮らない。撮りたいという気持ちはあるが、上野のアメ横で魚屋の店主がハチマキを巻いて一生懸命マグロを捌いている、いわゆる暗黙のパブリック可写真程度が限界で、知らない人の喜怒哀楽を正面から写すなど頼まれてもできない。

誰にも真似できないことをする事が芸術ならば鈴木氏の写真は大変に価値があるだろう。実際に氏によって撮られた写真を見てある種の感動を覚える人々が古今東西いるのは間違いのない事実であるし、芸術とは元来そういった需要で成り立っている。

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Paris

実はこの問題動画が上がる前、氏のストリートスナップの動画を見たことがあった。場所は海外で、氏は軽快にすれ違う人々をスナップしていく。時に罵声を浴びせられることもある。そんなことはお構い無しに撮影を続けていく。ある意味で衝撃的な映像だった。もちろんもっとすごいのは探せば沢山あるけど。

そして、こうも思った。やろうと思えばGoProなどを胸に付けて人々に出来るだけ近づきながら街を歩き、後でキャプチャーとしてレタッチでもすれば一定の取れ高はあるだろう。しかしそれでは被写体本人が撮られた事に気がつかないため、いわば盗撮になってしまう。

それよりもあえて正面からカメラを構えることで被写体にされた人は明らかに撮られた事に気づく、そしてその行為後に異議を唱える時間的余地がある。もちろん沈黙は承諾とみなすとは思わない。ただ、隠し撮りよりはまだマシ、というだけである。

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Paris

要するにこのジャンルの写真を成り立たせるためには現状、鈴木氏のような撮り方しか方法がないのではないか、それ以外の方法では、例えば300mmのレンズでビルの上から渋谷交差点を狙えばいくらでも類似の写真は撮れるが、やはり本人が気づいてないため盗撮になってしまう。

今回の動画の最大の問題点は一般受けしない内容を一般向けに公開した事だろうと思う。個人的には氏の撮影過程はずっとブラックボックス内で、作品のみを公開すれば良かったのではと思う。こんな事で氏が心無い批判に晒されるのはあまり心地よい事ではない。

なんでもそうだけれど、個人的には芸術家や有名人は舞台裏(私生活など)を公開しない事、これが人々に夢を与える偶像(アイドル)なのではと思う。

「今の時代にはそぐわない映像だね」と彼には伝えた。

 

《追加と訂正》

記事の中で盗撮という言葉を用いていますが、犯罪とされる行為の盗撮ではなく、あくまで辞書レベルでの盗撮という意味です。

興味があれば以下参考にして下さい。

何れにしても鈴木さんが大ダメージを食らったのは大変問題で(Twitterも削除など)、なんだか『いつでもどこでも誰でも簡単撮影』を謳う富士フィルム自らがパンドラの箱を開けてしまったような気がしています。

 


 

これまでの50mmライカMマウントレンズを振り返る総括レビュー

これまで使ってきた 50 mmレンズをそれぞれレビューしようと思い立った。(35mmでもそうでしたが、これらは完全に私の主観でお気に入りはあれど、特定のレンズを批判するつもりはありません。また基本的にはライカMマウントでフィルム撮影での感想を記しています)

 

LEICA ELMAR 5cm F2.8 (M-mount 1st)

イカM3 購入と同時に都内のキタムラで入手した初代モデル。なんだか嬉しくて意気揚々と渋谷ヒカリエに行き上層階から撮影したのを覚えている。しかし遠景を撮影しようとピントリングをインフィニティにするが、ファインダー内の二重像が合わない。行き過ぎではなく届かないといった感じで要するに無限遠が出ない。悩んだ末銀座のライカへ持ち込み確認してもらったら「出てないですね...これは許容範囲を超えています」というお墨付きをもらった。結局泣く泣く返却するハメになった不運なレンズ。

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FUJIFILM 業務用

今考えれば F11 くらいで 3 mのゾーンフォーカスで十分に無限は撮影できるのだが、当時はそんな知識もなかった。よってわずか 3 コマという少ないショットだが、印象は悪くない。独特の暖かさのある感じ。また F2.8 とかなり抑えているのでプライス的にも良好。確か5万円くらいだった。現行モデルもあるので今や 1st を買う理由はないと思うが、気持ち的にはアリでしょう。

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FUJIFILM 業務用

 

LEICA SUMMARIT 50mm F1.5 (L)

上記エルマーの代わりに購入したレンズ。ずっしりと重く、なんかライカ、という感じがしてやけに感心したのを覚えている。絞れば恐ろしくシャープ、そして独特の開放描写は今見ても斬新。フィルムととても相性が良いと思われる。個別レビューあり。

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銀座のブティック / FUJIFILM 業務用

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FUJIFILM 業務用

 

LEICA SUMMICRON-M 50mm F2 (4th)

ズマリットは気に入っていたがその重さと開放の扱いにくさから、ちょっと真面目なレンズが欲しくなって入手。往年のズミクロンファンにはフード組み込みは批判もあるが、ズボラな私にとってはこんな楽なことはない。どっちにしても 50 mmにフードなんて必要ないけど。

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Kodak Ektar 100

描写は本当に何の文句もつけられないくらい素晴らしい。ありのままを映し出すレンズ。そしてサイズ感や重さがちょうど良くスナップにも旅にも全く苦もなく持ち運べる。個別レビューあり

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Ilford HP5+

 

 

LEICA SUMMILUX-M 50mm F1.4 (2nd)

偶然ネットを検索していると見つけた。ヘリコイドグリス抜けで相場からすると異様に安い。思わずポチった。その後信頼できる店へメンテナンスに出す。憧れのズミルクス。

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FUJI PRO400H

開放でのグルボケとフレアはハマると大変魅力的。そして本当に柔らかい。ライカの中のライカレンズ。価格高騰しすぎて今では手が出ない。個別レビューあり。

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Ilford HP5+

 

LEICA SUMMILUX -M 50mm F1.4 ASPH.

まあ、魔が差したと言えるだろう。いつぞやの年末に決算時期を狙って老舗カメラ店を直撃。ほぼ新品同様を大幅に値引き交渉できた。ついに頂点に来たか、という感じだった。

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Kodak Portra 400

描写は開放から信じられないほど良く写る。Zeiss の Otus レベル。

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Ilford HP5+

しかし如何せん物理的にも精神的にも取り回しに苦労するレンズ。ぶっちゃけここまでくると贅沢な趣味以外の何物でもない。

  

Carl Zeiss Planar 2/50 ZM

日中は絞るのがほとんどだし、と自分に言い聞かせておとなしい F2 のレンズを購入。描写は素晴らしくほとんどズミクロンと変わらないが、近距離での収差はいただけない。ポートレート撮影では明らかに顔が歪曲する。フィルム撮影では補正は不可能なのでしばらく使って手放した。特に後悔はない。もちろんスナップ用途なら全く気にならないだろう。

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TRA400

 

Carl Zeiss C Sonner 1.5/50 ZM

大好きなレンズ。やはりこのふわっとした開放の写りには惚れ惚れする。最短1mが難点だがそれを差し引いてでも魅力的なレンズ。ライカユーザーなら純正を購入する前に是非試していただきたいレンズ。

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FUJICOLOR 400

 

総括

こうして見返してみれば、35 mmに比べ明らかに使用レンズの数が少ない。

もともと 35 mmが好きなのはあるが、それでも 50 mmに関しては色々試してみた、という感じではない。そういった意味ではこれ 1 本と決めるのならば 50 mmが迷いが少なくて良いのかも。

ちなみに無人島にどれを持って行くかという話になれば私は安心・安定のLEICA SUMMICRON-M 50 mm F2 (4th) を選ぶだろう。フード組み込みのギミックが好きだしなんといっても描写が素晴らしい。ありのままを写すレンズ。サイズもパーフェクト。是非オススメしたい。

 

Leica 11141 APO-Summicron-M 50mm/f2 ASP Interchangeable Lens by Leica [並行輸入品]

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LEICA ライカ ELMAR エルマー 50mm F3.5 Lマウント

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誰がためにフィルムで撮る For Whom the Film Is Taken

写欲は一向に戻らない。最後に記事を投稿してから撮影したのは120フィルム2ロールのみ。猫と花と、正月の家族写真。

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元日の猫 Hasselblad 500C/M CF100mm F3.5

以前から気になっていたZINE。撮りためた材料も集まった事だし、そろそろ1冊、というわけで FUJIFILM で MAGAZINE を作成してみた。

pg-ja.fujifilm.com

フィルムをスキャンしてデータ化したものをオンラインで送信注文。10日後に仕上がった。ハードカバーのタイプなど様々なものがある中で今回は一番薄くて大きいA4サイズの MAGAZINE。画像は全てハッセルで撮影したスクウェア

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PhotoZINE MAGAZINEタイプ A4サイズ

モニター上での色味と印刷は異なるのが普通だが、そこはさすが FUJIFILM、かなり綺麗に仕上がっている。プライスも2000円程度で、個人的にはかなり満足している。

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自動補正なし。モニター上の色味と遜色ない。

一度スキャンしているため中判フィルムの恩恵は全く受けていない。つまり引き伸ばし耐性は関係ない。この状態ならおそらく APS-C デジカメでフィルム調に加工しても見た目はあまり変わらないだろう。妙な考えが頭をよぎる。フィルムで撮る必要があったのかな、と。(GR II ↓ B&W で加工)

Milano

Isola Superiore

『誰かがフィルムで撮らないと、フィルムはこの世から無くなってしまうだろう』 海外の記事で偶然出会ったフレーズ。救世主になるつもりはないが、一つの考えとしては共感できる。しかし私はフィルムで撮った写真はネガやポジとして残る事、これが最も重要だと考える。光による化学変化でフィルムに像が浮かび上がる。それは全く電気的な要素が関与していない、今そこにある存在そのもの。

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Hasselblad 500C/M CF100mm F3.5



個人的には、撮りためたネガやポジフィルムは画家が大量のデッサンを残すのと同じ価値があると考えている。そんな過程を経ていつか自分自身や大切な家族のために作品が出来たら素晴らしいと思う。

 

2020年 新年の挨拶にかえて

 

 

 

 

少し休息が必要かもしれない

海外から戻ってきてめっきり写欲が失せてしまった。 理由は分からないが、率直な気持ちを言葉にすれば撮りたい対象が無い、ということになる。

家族(といっても妻と猫の3人暮らし)の写真を撮るのは大変意味のあることだが数年後に見直して「なんか若いねー」程度の楽しみならば年に1枚くらい撮っておけば良いと思うし、家の近所については救いようがなく、そもそも東京郊外の都市においては基本的に撮るものは何もない。アーウィットのように近所を歩き回り犬の面を被った(正確には犬そのものなのだが)被写体を撮影するチャンスや度胸も私にはない。

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Hasselblad 500C/M Milan

海外のフォトグラファーのブログに書かれていた。

「普段は滅多に写真を撮らない。しかし撮るときはフィルム100ロール近く撮る。そしてその期間は1年のうちわずか1ヶ月程度」

 

つまり国内、海外を含めた特別な遠征を年に1回程度するということだろう。なるほど、そういう楽しみ方もあるのか。

 

一方ソール・ライターは「写真を撮るのに地球の裏側まで行く必要はない」と述べていた。実際ライターはニューヨークを拠点に、自宅周辺数ブロック内を散歩しては素晴らしい写真を残してきた。

そりゃニューヨークに住んでいれば、ね、というツッコミは抜きにしても、写真を撮るのに遠出する必要はないという考えには只々感心する。

 

結局自分自身の問題なのだろう。ある被写体を芸術と呼べるレベルまで引き上げることのできる写真家はプロ・アマチュア問わず間違いなく存在しており、そういう人はただのゴミ箱を撮影しても「なんか、良いよね」と人々を感動させることもできる。

それを探し出すだけでも写真集やWebの写真(もちろんはてなブログの皆さん)をみるのは楽しいものであるし、それらの刺激を受けてまた写欲が戻ってくるといいなと思う。

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Geneva

さてと、季節の変わり目。少し休息が必要か、な。

 

共感した記事:

Paris

Paris

 
Saul Leiter: In My Room

Saul Leiter: In My Room

 

ヨーロッパ遠征記(X 線によるフィルムへの影響)

前回に続いて:ヨーロッパへ持参したカメラは Hasselblad 500C/M、Rollei 35 そして GR II 。

選択には 1 ヶ月かかった。中判で撮りたいが如何せん大きい。フルサイズデジカメは必要だろうか、GR II で十分かな、などなど。まあよくある悩みだ。結局本能にしたがって上記の組み合わせとなった。

フィルムは現地で買うことも考えたが、以前まとめて B&H で輸入したものがかなり残っていたので 30 ロール程度をジップロックに入れてバックに詰め込んだ。

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しかし心配なのは X 線検査である。これまでの経験から 2 回程度ならばフィルムに影響はないと知っていたが、今回は空路の移動もあり照射回数は 4 回程度となるため不安は募る。以下旅行記とともに体験談を記す。

成田空港で女性検査員にフィルムの袋を見せると、あーといった感じで「目視確認したので OK です」と言われ X 線を通さずに無事に通過できた。さすがカメラ大国日本。素晴らしい。

11時間のフライトを経てオランダスキポール空港到着。トランジット入国時に X 線検査があった。ここでもジップロックに入ったフィルムを見せて英語で説明したのだが、有無を言わさず機器に通された。その後、個別に呼ばれた。

「これはあんたのカバンか?」「そうだ」「Open」検査員はヒスパニック系の真面目そうな青年だった。

どうもハッセルの内部に麻薬か爆発物が隠されていると疑っているようだ。特殊な器具でハッセルの表面をナメるように検査する。もちろん何も反応はない。そして「OK」とだけ言われて無事ゲートを通過した。

スタバで休憩してドイツハンブルク空港へ。ドイツ入国では荷物検査はないため X 線は免れた。

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Flughafen Hamburg / Rollei 35

ドイツからヴェニスまで空路で向かった。そのためドイツ出国時に再び X 線検査。鼻立ちの整った若い女性検査員にフィルムを見せながら事情を説明すると、ISOはいくら?と聞かれた。

これはうまくいきそうだ。そこで 400 と答えると初老の男性検査員を連れてきた。話が通るかと思いきや、有無を言わさずフィルムを機器の中へ放り込まれた。さらに個別に呼ばれ、カバンを開けろと言われた。

スキポールに続いてこの時点でかなりウンザリしていたが仕方なくハッセルと Rollei 35 を検査員の目の前に置く。ちなみにRollei 35 はドイツ製。それを見た検査員が少しニヤけたのを私は見逃さなかった。そしてやはり機器をナメるようにハッセルとローライに当てる。もちろん問題なし。立ち去ろうとすると妙な質問をしてきた。

「このフィルムはどこで買った?」「日本」「 1 個いくらくらいだ?ユーロで答えてくれ」

これは世間話ではなく、こいつは本当にフィルムカメラでフィルムを使って撮っているのか、その確認だろう。麻薬の運び屋ならフィルム1個の値段を答えられないはずだ。 頭の中で換算するがいきなりなのでかなり難しい。しかもフィルムのブランドや種類によってかなり幅がある。「 8 ユーロ(およそ950円)」「ノーッ!!」と即答された。ドイツ人らしい返答である。

高いのか。しかしドイツ国内のフィルムの相場なんて私が知るわけがないじゃないか。それで「 4 ユーロ(500円)」「ノ、オ、アー、イエス(ヤー)」と口ごもった初老の検査員に「日本じゃフィルムは高いんですよ」と答えるとなぜか笑顔で両親指を立てて「OK」と言われ終了した。飛行機はべネチアを目指す。

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Venezia 上空 / Rollei 35

べネチアは 1 日の滞在で翌日にはミラノへ向かう予定だ。ミラノまでは陸路なので X 線の心配はないだろう。常夏のベネチアに到着後、すぐにハッセルを手に写真を撮り歩く。いずれ沈むかもしれない奇跡の街。フィルムに残しておく十分な理由だろう。

Venezia

 

Venezia

Venezia, Italy

ミラノまでの列車内ではひたすら車窓からの景色を眺めていた。葡萄畑だろうか、牧歌的で心が和む。数時間後、ミラノ中央駅へ到着した。

Milan Central Train Station

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Milan / Rollei 35

ミラノからスイスへ再び陸路で目指す。アルプスの連なる雄大な景色へと移り変わる様に我を忘れて、飽きる事なくシャッターを切る。

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車窓から

ジュネーブに到着。ホテルに荷物を置いて近くを歩き回る。翌日車でレマン湖をドライブする。大変美しい。こんなに雄大な景色を眺めていると日本でいつもギスギスしている自分(そして人々)は一体何者なんだろうと考える。

 

Château de Chillon (Chillon Castle)

 

スイス出国時、最後の X 線照射を受けた。ここでも「ISOは?」と聞かれたがISO4000まで平気と言われ機器に通された。飛行機はド・ゴール空港を経て羽田を目指す。

 

 X 線の影響

成田空港で照射を受けなかったお陰で、合計 3 回に止める事ができた。帰国したその足で銀座のラボにカラー現像を依頼する。数日後仕上がったネガをみても特にダメージは感じられないが、数枚の写真に通常なら起こりえない現象、白もやや白線が見られた。

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4秒開いた。白いモヤが確認される。

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下方に水平に横切る白い線が見える。


肉眼ではこの程度だが、CineStill フィルムを Silversalt さんへ現像依頼した結果、かなり興味深い返答が返ってきた。

ネガの濃度(fog)が高い、X 線や非常に暑い場所にフィルムを置いていませんでしたか、とのこと。素晴らしい。さすがプロ中のプロ。数値として出されるとやはり X 線の影響はある、と考えられる。ちなみに X 線をうまく避ける方法は ISO値を聞かれたら  6400 と答える事、そして(事実でなくても)自分は職業的フォトグラファーのためリスクは避けたい、と伝えれば良いとアドバイスまで頂けた。

旅の総括

正直なところ、海外に重たいフィルムカメラを持っていく、さらにフィルムの扱いに気を使う(夏場の暑さと X 線など)事はストレスではあった。しかし想定内であり、ほとんど諦めに近い気持ちだったため後悔は全くない。

旅、特に海外旅行となると持っていくカメラやレンズに悩むのは当然で、また選択を誤ると疲労で旅が台無しになる。Web を調べると当然のごとく、軽いのが良い、コンパクトが良い、レンズは広角1本で良いなど色々なアドバイスがある。しかし個人的には自分が本当は何で撮りたいのかを優先する事が大切だと考える。

私がハッセルを持って行ったのはハッセルで撮りたかったからで、もっと軽い 35 mm 、ライカニコン1台、ひょっとしたら GR II 1台でも良かったとも言える。

しかしあの 6×6 のスクリーンから見える美しい街並や景色を独特のボシュんという音で切り取ってみたい。ただそれだけのために麻薬の詰まった箱と間違えられてもハッセルを持参した。

35 mm フィルムでも撮りたかったため Rollei 35 も持参した。思惑通り、とりあえず1枚という場合に重宝した。GR II もしかり。こちらは夜景や露出計代わりとして役立った。

いくつかの出会いもあった。ハッセルで撮影していると白人の若いカップルに一眼レフで写真を撮ってもらえないかと頼まれた。

湖で撮影しているとフランス人の老夫婦に撮影を頼まれた。構図を意識して奥さんのスマホで撮影。良い感じの老夫婦だった。私もいつかこうなりたい。

フィルムにこだわる理由

今回旅行に出る前、およそ 15 年前にニューヨークへひとり旅した時のネガが見つかった。スキャンしてみると見事な景色が色褪せぬまま存在していた。同時期に撮ったoptio s60というデジカメの画像は現在のスクリーンでは親指ほどの大きさの解像度しかない。まだSDカードのバイト数が少なく、数多く撮るために画質設定を400ピクセル程度の S サイズにしていたため。当時のモニターではこれで十分であったが、現在の標準的なモニターでは引き延ばすことも不可能だ。またハードディスク間の移動によるデータの劣化も起こっている。

それをみた時、やはり大事な写真はフィルムで撮ろうと決めた。フィルムで撮っておけばその時代に適したスキャンのサイズでいつでも閲覧可能だからだ。

 

さてと、次はどこへ、そして何(カメラ)を持って行こうか。