Cure of GAS

Castle Rock Photography

写真やカメラにまつわる話を淡々としていきます。

WHOとゲーム障害、カメラ脳

ずいぶん前になるが、サックスプレーヤーの菊地成孔さんがラジオでアドリブ脳について話しているのを聞いたことがある。同じくサックスプレーヤーであるエリックドルフィー氏のおでこの瘤(こぶ)を、素晴らしいアドリブの詰まった『アドリブ脳』だというわけだ。面白い。大脳、小脳、中脳、そしてアドリブ脳。
ナショナルジオグラフィックの記事<世界を変える「天才」たち>によると、ジャズプレイヤーがアドリブを奏でる時、

自己表現にかかわる脳の内側の神経回路網が活発に働く一方で、注意の集中や自己監視にかかわる外側の神経回路網の活動は弱まった」としている。

アドリブ脳もまんざらではなさそうだ。

New Strap

ではカメラ脳はどうだろうか。カメラ脳はカメラに関わる全ての物事に対して大きな反応性を示す神経細胞の集まりである。大きく2種類に分類され、1つ目は写真を撮ることに、もう1つはカメラ機材に大きな反応を示す。さらに後者はニューロンが増えればカーマニアが車のエンジン音を聞いただけで車種を言い当てるように、シャッター音でカメラの機種が分かるようになるという。


Robert Capa 、Walker Evans、Henri Cartier-Bressonなどの巨匠たちはきっと外からは見えない位置に、撮ることに優れたカメラ脳をしまっていたのだろう。私など体全体を見回してもそんなもの見つかりそうにない。

しかし後者のカメラ脳なら私にもある。機材を見ている時、そして実際に手に入れた時、使用した時の高揚感、気になるカメラ・レンズがあるとどうにも落ち着かずインターネットを開いては検索して、また閉じて、また検索している。きっとそんな時私のおでこにはエリック氏と同じようなコブがチラリと顔を覗かせているのかも知れない。今度妻に見てもらおうと思うが、機材の検索中はややまずい。悩みどころである。

WHO(世界保健機関)がゲーム障害(Gaming disorder)を疾患認定したとニュースで知った。ゲームに夢中で生活に支障が出ている状態が少なくとも12ヶ月続くとGaming disorderと診断されるらしい。国際疾病分類ICD-11に掲載されるので日本でもすぐに反映されるだろう。いずれにせよ症状だけみると、ゲームをカメラに置き換えてもそのまま通用するのでは。

...priority given to CAMERA over other activities to the extent that CAMERA takes precedence over other interests and daily activities,

他の物事や日常生活よりカメラを優先する状態(が12ヶ月続く)

私は少しこじらせた程度?だが、カメラ障害(Camera disorder)がICDに掲載されるのも時間の問題、かも知れない。

ライカと90mm (Tele-Elmarit 90mm fat)

イカ、というかレンジファインダーにおける中望遠〜望遠レンズの立ち位置は微妙だ。ファインダーが狭くなる上、一眼レフと異なりファインダー像は全く変化しないため、例えばbokehの程度がどうであるとか、結果のシュミレーションができない。
そしてこれはフィルムカメラ全般にいえることだが、手ブレの問題がある。そもそも望遠になればなるほどシャッタースピード>レンズの焦点距離の法則が重要になってくるのだが、ISO固定のフィルムでは限界がある。ISO400では例え大口径のレンズであっても黄昏時にss 1/15で撮影することなどざらであるし、たとえそれが90mmでもフィルムグレインがブレをややごまかしてくれるため案外上手く撮れているものであるが、基本は真っ黒写真になるよりまだマシ、という感じの撮影でないだろうか。

私が初めて買ったライカの90mmレンズは沈胴式エルマーである。f4ではあったが時代を感じさせないシャープさには何度も目を奪われた。しかし幸か不幸か90mmという画角が前述の不便さと合致してしまい結局手放してしまった。今思えば勿体無いことをしたものである。しかしやはりライカの望遠レンズの素晴らしさに惹きつけられ、現在はtele-elmarit 90mmの初期型、いわゆるfatタイプと呼ばれるものを使っている。そしてこれが大変面白く、気に入っている。

Tele-elmarit 90mm fat

レンズの話をするとtele-elmarit 90mmは開放f2.8であり、工芸品のようなローレットの美しい初期型、レンズ枚数を減らして全体的に軽量化(100gも!)を実現した2ndがある。いずれも大変コンパクトで、標準ズミルックスと同じ程度の大きさである。2ndはややコントラストを高めているようだが、重量と作り以外では両者差異は感じられない。開放はやや甘く、絞り込んでも盛大なレンズフレアが発生する。上手く使えば現代のレンズにはない表現が可能だろう。
購入時、初期型、2ndともに同じ価格で状態の良いものがあった。どちらかというと2ndはclinical(実用的)として海外でも人気があり、初期型はコレクターアイテムに近い扱いになっているようだが、やはりライカ黄金期のデザインと作りの良さに惹かれて初期型を購入した。どうせ出番の少ない90mm、使うときはビジュアル、感触共に最上の時間を共有したい。一杯のコーヒーを焙煎仕立ての豆からドリップするように。

Now and forever (Tokyo Shibuya)

90mmをしばらく使ってみて、適度な距離感と圧縮効果があり被写体がはっきりしている場合は50mmと同等かそれ以上の取り回しの良さを感じた。そして画角慣れというものがあるのならば、使い込んでいくうちに標準レンズと同じ感覚となるだろう。特にtele-elmaritのコンパクトなサイズはこれ1本で旅にでも出れそうである。

The person you wait for...(Tokyo station)

Flickr Explore Select

Wall

しかし、レンズが増えつつある今日この頃、one camera one lensの目標にはまだまだ届きそうにない。。

Tokyo

Summicron 35mm 6 elements(ズミクロン 6枚玉)

初夏の日差しがほのかに降り注ぐ日曜日の午後、東京散策に出かける。ちょうどフィルムを1ロール使い切ったところで老舗カメラ屋を覗いてみる。ショーケース内に所狭しと並んだレンズ群。その中にSummicron 35mmの6枚玉をみつけた。

ズミクロン35mmは初代の8枚玉がもっとも人気だろう。ライカ通の間では『何かが違う』描写をすると評判らしいが、中古市場でも流通量が少なく、また大変高額である。その次に人気なのが3世代にあたる7枚玉。ASPHに変わる直前のモデルで写りはかなり現代的であるが、軽く小さい。こちらも流通量は少ないが8枚玉ほどではなく、プライスも同様である。

そして2世代にあたる6枚玉。2世代目といのは映画やゲームで例えると2作目ということで、オールドからニューへの開発過程における実験的な立ち位置のものが多く、当たり外れが激しい。特に宿命的に初代と比較されるため、初代が高評価であればあるほど辛口のレビューがつきやすい。この6枚玉も例外ではなく、他の2つに比べると地味な存在である。しかし何事もそうだが時代の流れとともに当時酷評を受けたものが再評価されることはよくある。多分に漏れず6枚玉も時の洗礼を経て、現在ではそこそこプレミアムでコアなファン層がいる、といった感じである。

Summicron 35mm 6 elemnts

興味本心でさっそく試撮させてもらう。シリアルでは1960年代のようで、やはり画はオールドらしいなんともいえない淡いコントラスト。しかし合焦部は実用的にシャープで、中心から周辺にかけてややフレアのかかった球面レンズ特有の柔らかいBokehが包み込む。ディテールに目を向けると決して先鋭という訳ではないのだが、全体的にはよくまとまっており決して眠い絵ではない。
イカらしい、という言葉が似合うだろうか。現行レンズのような高解像度、シャープ、優秀なフレアコントロールと同じ土俵に上がることはできないが、レンズの優劣は光学上のスペックで決まるものではない。特に趣味の場合は尚更である。大切なのはそのレンズを使いたいか、使って写真を撮りたいか、というフィーリングである。この感性に関わる部分は人によって千差万別であるため正解はない。何れにしても、私はこのレンズをすっかり気に入ってしまった。

Yanaka (old town)

ちょうど手持ちのsummicorn 35mm asphや先日借りていたZeiss biogonの果てしなく優秀な絵に飽き飽きしていた頃だったので購入意欲というか冒険心に火がついてしまった。
交渉の末、手持ちのasphを下取り、残りは銀座でランチするくらいの支払いでディール。迷いはなかった。

店を出て近くの喫茶店で一息つく。そして古くも新しいズミクロンをカメラにマウントし、フィルムを入れ替えコーヒーの香りを後にして再び東京の街を歩く。たっぷりとした日差しが落ち着く頃、綺麗な夕陽がみられるに違いない。

Yanaka, Ueno Tokyo (Old town)

 

Yanaka (old town)

↓後日ポートラで撮影:ハイライトの柔らかな雰囲気が心地よい。

Early Summer

Early Summer

追記:その後、カナダから来ているという観光客の女性にスマホを渡され、写真を撮って欲しいと声をかけられた。数枚撮った後、ちょうどいい機会なので、このカメラクラシックカメラなんですよ、モノクロフィルムなんですよと話しながらポートレートを撮らしてもらえないかとお願いをしてみた。よく考えてみると私のLeica M4-Pはカナダ製、入手したてのズミクロン 6枚玉もカナダ製である。なんたる偶然かッ。ライツカナダの神様の成せるわざである。

2枚ほど撮影して、instagramを相互フォローして終了。その日のうちに現像して送信した。
彼女からの返信『Wow! I love it! Thank you!(ワォッ!気に入ったわ!ありがとう!)』『Thank you too, Have a safe journey!(どういたしまして、良い旅を!)』

Nezu shrine(Ueno, Tokyo)

Summicron 35mm 6elements | Flickr

 

Biogon 35mm 2/35 ZM ショートレビュー

前回のSonnarに続き、Biogonについて私的考察をしてみたい。

 

coalfishsholco.hatenablog.jp

 

Biogon & Summicron

職場の同僚曰く「手放す予定なのでよかったらどうぞ」という流れで私の手元にきたものだが、結局返却してしまい今はもうない。ほとんど撮る時間もなくレビューするだけの作例もないが、まあ記念ということで。

正直なところライカMマウントの35mmレンズとしてはトータルで考えて大変お買い得ではないだろうか。鏡筒が長いためファインダーの右下をややブロックするが、それを差し引いてもコンパクトなサイズで取り回しに問題はない。1/3の心地よい絞りリングのクリック感やヘリコイドの動きなど十二分に国産?の精度の高さを味わうことができる。

描写はSonnarよりはるかにシャープでコントラストが効いたZeiss色。35mmという画角を生かしアーキテクチャーの撮影などでは少し絞るだけでマテリアルの質感まで表現できるだろう。そして比べてみて分かるのだが、画質という点からはSummicron 35mm asphと遜色ない。むしろ収差を抑えているため隅々まで端々しい描写をする。少なくともブラインドテストにおいてこの2つのレンズに明確な差は現れない。

「決して安くはないレンズだが、純正と比べ1/3の価格で買える。浮いたお金で妻と寿司バー(SUSHI BAR)にいくつもりだ」と話すNY在住マークさん(仮称)のレビューが大好きだ。

私は画質に差がなくてもSummicronとBiogonを入れ替えるつもりにはならなかったが、Biogonとの出会いがきっかけとなってsummicron asphを2ndの6 elements(6枚玉)に交換したことは否定しない。この話はまた後日、紫陽花が退屈な通勤路を青紫色に染める頃に書こうと思う。

 

 

Matureな写真家のためのmatureなレンズ。c sonnar 1.5/50

この世に2種類のレンズがあるとする。ひとつはどんな状況でもミスをしないレンズ、もうひとつはミスは多いがうまく決まった時は芸術性を帯びるレンズ。ライカMマウントのうち純正以外の選択肢で代表的なZeissレンズ。C-sonnar 1.5/50は間違いなく後者に入るだろう。

F1.5と非常に明るいレンズであるにも関わらず小さく軽い。まさにCの名に恥じないCompactサイズ。そしてSonnarの名に恥じないClassicテイスト。

このレンズは以前から興味はあったのだがなかなか手にする機会がなかった。今更ながら手にすることができたので備忘録レビュー。もちろんSummilux 50mm asph.との比較もしてみたい。

Sonnar and Summilux

まずハンドリング。これは個人の指の長さにもよるが非常に扱いやすい。わたしの場合はレンズ鏡筒に左手を添えた時に指がフォーカスリングの位置にぴったりとハマる。Summiluxではフォーカスリングを回しているつもりでいつの間にか絞りが回っていたことがあったが、Sonnarはそのようなことはない。そしておよそ230gと大変軽い。Summiluxよりも100gも軽い。たかが100gと思うかもしれないが、人間の感覚はWeber ratio(ヴェーバー比)に基づいているため、大三元レンズほどの重さの比較では100gの差は感覚されないが、200gと300gの世界では100gの差はずっしりとその手にのしかかってくる。

各部ヘリコイドの感触は標準レベルを軽く凌駕しておりストレスはない。絞りの1/3クリックも慣れれば違和感はないし、より繊細な露出設定が可能と考えれば納得もいく。しかしクオリティーではやはりSummiluxが上回る。

画質について。Zeissには珍しく割とコントラストが低めであり、その分階調性を高めたように感じられる。よってB&Wフォト向きのレンズであると感じるが、いずれにせよ純粋なオールドレンズなどに比べて現代的な写りをすることに違いはなく、カラーでも全く問題ない。開放から中心部分は十分に結像しているが、Summiluxの指が切れそうなほどのシルキーな結像とは違い、どことなく夢見心地な合焦点。中心から周辺にかけてシグモイド曲線(S字曲線)に沿ったBokehが現れる。要するに徐々にそして急に、だ。Bokehの美しさは個人のテイストの問題であるが、やや荒削りながら十分に美しいと感じる。こちらもSummiluxはやはり繊細なBokehである。

House cat

Summiluxは全教科偏差値70超えのスーパーエリートで、いつ、どんな状況でも扱う人を選ばずタフで結果を残してくれる霞が関のパワーエリート。大変信頼できるレンズである。一方Sonnarは偏差値50前後で平均的だが、芥川賞数学オリンピック、音楽コンクールなどで賞を収めるポテンシャルがある。しかし問題はそのポテンシャルを引き出すのは扱う人間の力量、だということだろうか。まさにMatureな写真家のためのmatureなレンズ。

old Piano

実はまだa7sに装着して数100枚撮った程度であり、レビューを書くのもおこがましいのだが、ひとつ気が付いたことがある。このレンズは黄昏や暁時に力を発揮する。日中絞りf11で扱うようなレンズではない。Dawn lightの元、柔らかに降り注ぐ日差しを背景に開放で被写体を捉えてみてほしい。きっとSummiluxにすら出せないSoulfulな絵があなたを覚醒させるだろう。

 

 

Kodak Portra (ポートラ400)

近所の写真屋さんはポートラをバラ売りしている貴重なお店だ。量販店ではポートラは通常5本セットでそこそこの値段で販売されている。普段カラーで撮らない私には5本セットの価格では少しためらってしまう。そんなわけで今回も1本のみ購入させてもらった。

Variety store

ポートラの魅力とはなんだろう。個人的にはナチュラル感、それに尽きる。ポートレートにも向いているだろうし、風景、その他にも問題なく使用できる。安心感。

Ultramaxのクールな描写も好きだが、やはりポートラのナチュラル感は捨てがたい。

Variety store
光の捉え方は情緒的。粘りがあり、ハイライトにもトーンが残っている。自分の見た情景の記憶を明度、彩度共に補ってくれる。

Variety store

カラーは本当に難しい。しかし自分の色が再現できた時の満足感は非常に大きい。Kodakに限らずメーカーは頑張ってフィルムを作り続けて欲しい。

Variety store

 

 

 

Summilux 50mm asph. レビュー

50mmの楽しさを再認識させてもらったレンズ。従来までの球面の柔らかいテイストを残しながらもより鋭敏でコントラストを増加させており、非球面による収差の低減、なだらかで霧に包まれたようなBokehは素晴らしいとしか言いようがない。

summilux 50mm asph

マニアの間ではsummilux50mmはどちらかといえば1rd, 2rdあたりが人気だろう。合焦面はすこぶる良好で、そこからつながるやや情緒的に暴れたBokehが貴婦人(意味深)ともライカテイストとも、油絵とも呼ばれる。中古価格もお手頃である。さらにレンズ設計を変えずに最短70cm、レンズフード内蔵モデルである3rdは実用面ではパーフェクトであり中古市場には滅多に出回らない上、価格も現行モデルの中古と肉薄する勢いである。

実は店頭に3rdも置いてあり、ソニー機に装着して現行モデルと撮り比べをしながら小一時間ほど悩んだ末にapshに決めた。両者とも素晴らしいレンズであり価格以外には優劣のつけようがなかったが、個人的には前述したオールドテイストを残したまま現代風にキャリブレーションされたasphに軍杯が上がった。

特に3rdで垣間見る二線ボケがasphではほぼ皆無であり、撮り比べることで明らかな差が見られた。しかしながらこの辺りは個人のテイストの問題であるため一般化はできないだろう。
重さやサイズについては3rdが明らかに軽く、短い。取り回しの面でもsummicronとほぼ変わらないため、非常に悩んだが、一般的な大口径50mmと比べればasphが重く、大きい訳ではない。装着した感じも違和感がない。asphのピントリングのタブは使い勝手が良く、無限から最短までも半回転で到達する。(3rdはほぼ360度であり指を持ち替える必要がある)

f1.4が活躍する場面にはまだ出くわしていないが、開放から実用的であるため、夜景の撮影でも安心して使えるだろう。

Nasudake ( volcanoes)

次にフィルム使用。絞って撮った那須岳Flickr Exploreに選出された。

Mount Nasu

現行レンズはデジカメ用にチューニングされているといわれるが、私はむしろフィルムでこそその性能が発揮されやすいのでは、と考えている。光を余すことなく透過させる能力はフィルムの持つ個性を十二分に引き出すことが出来ると思うからだ。フィルム写真のデジカメにはないぼんやりした感じが良いと思う人はたくさんいるだろう、しかしそのフィルムの潜在能力を十分に発揮させた写真もまた味わい深い。

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