Cure of GAS

Castle Rock Photography

写真やカメラにまつわる話を淡々としていきます。

アンダーかオーバーか、GRと

前回、GRを露出計代わりに使っていると書いたが、もう少し補足。

私の機種はGRII(以下GR)だが、まあとにかくすこぶる優秀である。フルサイズにこだわって
SONYのRX1Rから果てはRX1RMKIIまで使ったことがあるが、個人的にはGRが最もしっくりきた。35mmフォトグラファーの私にとって28mmの画角には正直まだ慣れないところも多いが、何よりポケットサイズであること、起動がものすごく早いこと、設定のカスタマイズがかなり通好みにでき、特に絞りとピント位置をあらかじめ記録できるため、f8で3mくらいに固定しておけばスイッチを入れた瞬間にZone Focus(パンフォーカス)できる。素晴らしいのは位置を記録できるということで、スイッチを切ってもリセットされない。RX1Rは絞りは固定できるが、ピント位置は起動毎にリセットされてしまうためこのような撮り方には向かない。

まあとにかくあまりに便利すぎていつもカバンに忍ばせているGRだが、フィルムカメラを使うときの露出計としても大いに貢献してくれている。日中では確認の必要もないが、室内やシャドーが複雑に絡んでいるシチュエーションではとりあえずGRで撮ってみて(起動から3秒以内で撮れる)、露出を確認してからフィルムカメラの設定をする。あらかじめ仕上がりの予測ができてしまうため、現像の出来はどうだろうか、のワクワク感は半分以下に落ちるが、大切な写真を撮る際にはきちんと露出を測りたい。

ちなみに経験上、ネガはやや露出オーバーに撮っておくと間違いないため、そのように設定する。かなりオーバーでもハイライト部分は飛ばずに残っている。
しかしこれに慣れてしまうとデジカメ撮影でもオーバーで撮る癖がついてしまう。頭の切り替えが上手くいかないためだ。実際フィルムと並行して撮ったDSLRの写真は白とびが多い。
RAWレタッチ前提になるが、デジタルはオーバーよりアンダーに撮っておけば、最近の機種ではびっくりするくらい回復する。しかしオーバーには弱い。例えばGRではシャドー部の2段の回復は余裕だが、ハイライトの2段の回復は明らかにそれより惨めになる。ネガはオーバー、デジはアンダー。

面白いことに、デジタルに慣れてからフィルムで撮った写真を見てみると、全てアンダーで撮影されていた。やはり頭の切り替えが上手くいかなかったためだろう。

 

GRとLeicaと

2018年 謹賀新年。

昨年の12月の忘年会で少しスピーチをすることになった。記念にと思い女性社員に「とりあえずボタン押せば撮れるから」とだけ伝えてGRを渡した。1億総カメラマンの時代、特に写真を撮ることに技術はいらない。しかしこの場合に困るのがカメラの設定をどうするか、である。

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私は、例えば記念写真を誰か別の人、店員さんなどに頼む時、経験上マニュアルモードか、SS優先にしてSSを60か125にしている。これならばとりあえずブレは防げる。直感的にこの人はブレるな、と思った場合は125にする。かつてはPモードで渡していたのだが、特に室内ではss 1/40など平気で設定してくる。1/40は多くの場合素人(一眼などを扱ったことのない者)なら間違いなく手ブレが起こる。

忘年会の会場は割と薄暗く、ISO6400 f2.8 1/125が適正であった。GRはかなり優秀でISO6400など全く問題にならない。それでまずはMモードにして手渡した。彼女はしばらくテスト撮影をしていたが、すぐに戻ってきて「〇〇さん、なんか撮れる写真がすっごく暗いんですけど。。」とGRを手渡してきた。おかしいなと思って画像をみるとSSが1000近くまで上がっていた。私のGRはシャッターボタンのすぐ隣がSS変更ファンクションとなってる。手前は絞りだ。おそらく撮影中に手が触れてしまったのだろう。しかしある程度予測していたことと、説明するのが面倒なのでSS優先で125設定、ここのダイヤルには触れないように、と念を押してから手渡した。

「オッケーです!」と去っていく彼女の後ろ姿に一抹の不安を拭いきれなかったが、なにぶん慣れないスピーチで緊張もしていたので原稿の暗唱に集中した。

予感は的中した。再び彼女が戻ってきて、「〇〇さん、なんか撮れる写真が、また、すっごく暗いんですけど。。」私は虚ろな目をしながら再びGRを受け取り確認した。そこでハっとした。

「ズームしようとしたら暗くなっちゃうんです。。」

彼女がいじっていたのは露出補正バーであった。なんと、マイナス4まで下がっている。しまった。説明するのを忘れていた。これはズームできないのッ。あまりにも多くの時間を単焦点に慣れきっており、それが普通になっている私がいた。GRに似た一般のコンデジはほぼ100%ズーム機能が付いているではないか。よって彼女の行為はごくごく自然である。

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「ごめん、これはズームできないから動いて、できるだけ近づいて撮って。それからシャッターボタン以外のボタンにはさわらない方がよいと思う」


その後なんとかスピーチも終え、写真もまあなんとか撮れていた。しかし125のシャッタースピードが30になっており、手ブレ写真も多かった。触ったのだろう。やはりGRは素人向きのカメラではない、と確信した。

話は変わるが、最近Leicaを持ち出す時、GRが露出計代わりになることが多い。ポケットにすっぽりと収まり、また起動スピードも異常に早い。通常の露出計と違って実際に撮れる写真が目で確認できるのは大変良いが、おかげで露出の勘がかなり鈍ってしまった。 これでは楽しみが半減してしまうので、GRはしまっておこう。

Push process (増感現像)備忘録にかえて

モノクロフィルムのPush process (増感現像)に興味があったので実行してみた。そもそもそれがどんなものなのか理解するのに数日かかったが、日本語サイト、英語サイト、Youtubeを参考になんとか自分なりに解釈できた。

Tokyo night

Summicron35mm/IlfordHP5+400to3200 /F2.8 1/60

増感現像とは

増感の理屈は簡単で、要するに実際のフィルム感度(ISO)を増感したいISO感度として撮影すること、つまり実際にはISO400のフィルムが装填されているが、撮影者的にはそれがあたかも1600や3200のフィルムが装填されているようにして露出を決めていく。増感現像のメリットは、単純に絞りやSSを2段から3段稼げることにある。薄暗い明かりの中での動きの伴う撮影ならば、1/30を1/125にあげられるだろうし、街並み撮影ではF値2.8を5.6まで絞って撮影できる。これは状況によっては大変なメリットとなり、特にSSが2〜3段上げられるのは手振れ防止や屋内スポーツなどで大変な恩恵を受けるだろう。

増感現像の仕方

増感現像は単純に現像時間を長くすればよい。いつも世話になっているThe Massive Dev Chartには増感に必要な現像時間がキチンと書かれているので、最初はそれに従えばよい。留意点としては増感現像はフィルム単位で行うため、撮影前にどれだけ増感したいのかを決めたら最後の1枚を撮りきるまで変えることはできない。
大抵はISO100を400へ、または400を1600か3200がダイナミックな変化を感じられるため、概ね2段分ほどが適切な増感ということになる。

増感でも不可能なこと

当たり前だが、増感現像は決して増感したいISOで実際に撮った写真と同じにはならない。よってシャドー部はどんなに頑張ってもシャドーであり、RAWファイルのように回復させることを意味しているのではない。増感コントラストを強調して輪郭をはっきりと浮き立たせることで、シャドー部に埋もれていたわずかな光の輪郭を物の姿形として表現するものである。それと引き換えにグレイン(粒状感)が増し、もともとシャドーだった部分はベタ塗りのごとく真っ黒に、もともと白い部分は完全に白くなり、トーンの表現には乏しくなる。それでも真っ暗で何も写っていないよりマシという状況か、森山大道氏のようにコントラストを強調する絵を意図したならば効果的と言える。

作例

今回は夜の東京、銀座の撮影にチャレンジしてみた。ILFORDHP5+(ISO400)でF2.8かF4、SSは1/60から1/125の間で撮影した。街明かりがあるとはいえ通常ならばF2  1/30程度が最低ラインなので、それと比較すればSSを1/60に固定したままF2.8、場合によってはF4まで絞り込めるのは十分にメリットがあったと思われる。増感は思い切って3200まであげてみた。結果としては前述のごとくコントラストが強調され、特に夜景では明かり一つ一つが点画のように町並みを構成しているような特殊な作例となった。

Tokyo night

Tokyo night

Tokyo night

Tokyo night

結論

フィルム写真の楽しみ方の一つとして増感現像をやってみるのは大変にお勧めする。

35mmと50mmの使い分け

まあ今更という気がするが、35mmと50mmの使い分けについて考えてみたい。
18mmから135mm程度であるので偉そうなことはいえないが、これまでたくさんのレンズを購入して、たくさんの焦点距離を使いまわしてきた。ほぼ9割以上が単焦点である。そして今、棚を見ると残っているのはGRの28mm以外では見事に35mmと50mmの単焦点のみとなった。DSLRに2つ、そしてフィルムカメラに2つ。

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海外のブログなどで、あなたは35mmフォトグラファーですか、50mmフォトグラファーですか、という質問文を目にすることがある。汎用性が高いのは35mmであるため、私個人は35mmの使用頻度が多い。しかし何か撮ろう、特に人を撮ろうと思った時は間違いなく50mmを装着する。

もちろん35mmのポートレートはとても良い。旅先では背景を入れて撮らないと記念にはならないし、室内撮りや景色には最適な画角である。実際のところ35mmは50mmをカバーできる。それなのになぜか50mmを手放せない。

なぜなのかうまく説明ができないが、50mmのレンズが光を収束させてできた像は独特の存在感がある。これは単なる画角の問題を超えている。もちろん同じF値でも35mmよりは50mmの方がBokehは強いため、その立体感のためかもしれない。しかしたとえ絞り込んだとしても50mmは35mmには出せない独特の世界観がある。85mmでも135mmでもない50mmの世界観。

36枚フィルムのはじめの18枚は35mm、残りの18枚は50mmという撮り方が気に入っている。出来上がったネガを見て、ひょっとしたら自分は50mmフォトグラファーなのかな、と思うこともあるが、結局のところどちらも大好きな画角なのだろう。

Tokyo skyscraper

都庁から。Leica M4-P/Summicron 50mm/Ektar100

 

Leica M3レビュー

台風で外出もままならない。時間ができたので記録としてLeica M3の私的レビューを書こうと思う。ちなみに私のライカ遍歴はほぼゼロで、デジタルライカはいくつか使ったことがある程度だが、フィルムはM3が初めてである。きっかけは単純で、M3というものを触って、使用して、名器とはなんなのかを実感してみたかった。よってマニア受けするレビューではない、あくまでいちユーザーとしての所感に留めておきたい。

M3を手に入れたのはおよそ1年前で、まあまあ状態の良いOH済みをそこそこの価格で購入した。相場からいうと高いとは思うが、経験としてユーズドは、あまり状態の良くないものを安く買うと間違いなく後悔するため納得はしている。

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外観

クラシックな作りで、現在のコンパクト型カメラの原型になっているのは間違いないだろう。実用性をスポイルしないギリギリのラインでデザインされている。距離計、ファインダー、シャッタスピードダイヤル、その他各パーツのレイアウトはグリッドに沿っており、月並みな言い方だがドイツ気質に裏付けされた生真面目さが伺える。そして重量。M3は見た目よりはるかに重い。ダンベルなどのようにひとつの物質の質量によるものではなく、小さな部品が集まって1つの質量を産み出しており、オメガやロレックスなどの時計を初めて手に取った時の感覚に似ている。シンプルに表現するならば、程よい重さ、である。
M3は置いているだけで十分な存在感があり、アンティークな骨董品と同じ次元のオーラがある。コレクションのために購入する方の気持ちはよくわかる。

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操作性

私のはダブルストロークモデルのためチャッチャッと短く2回巻き上げる。しかし私はどうもこれが苦手で、特に2回目が巻ききっておらずシャッターチャンスを逃すことがよくあった。その他は特にこちらが判断できることではない。 M3はすでに完成されている。年齢でいうと二回り近く上のものに若造が何を言えるだろう。M3の操作性を評価するのではなく、自分がM3に従うようになるべきだと思う。

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機能

ファインダーの視野率がほぼ100%で、両眼開けたままで撮影ができる。基本的に使用レンズは50mmから望遠レンズに限定されており、35mmを使う場合、眼鏡付きレンズか外付けファインダーが必要となる。評論家の話では眼鏡付きは精度が狂いやすいので外付けファインダーがおすすめらしい。実際にSummaronなどの眼鏡付きを所有していたが、眼鏡部への衝撃などには特に気を使った。

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実用上の問題点

M3はカメラ自体の撮影最短距離が90cm〜1m(個体差あり)で、たとえレンズの最短距離が70cmであろうと無効になる。通常では50mmで1mまで近づけば十分にポートレートなどを楽しむことはできるが、私を含め最近のDSLRで最短30cmなどに慣れていると、テーブルフォト時などで思わず面食らうことがある。しかし前述の眼鏡付きレンズを使うと65cmまで寄れるので、近接撮影を楽しみたい方は眼鏡付きをお勧めする。

結論

時代を作ったカメラ。50mmを多用する方でレンジファインダーが好きなら買わない理由はないし、少しでも興味があるなら、”Just Do It!(ぶつくさ言わず買いなさい)”

フィルムの画素と適切なプリントサイズ

先日の暗室ではブローニーと35 mmをプリントしたのだが、どうも35 mmの四つ切り(正確にはイルフォードRC小四つ切り)サイズはブローニーに比べ解像度の低下がみられたので、フィルムの画素について少し考えてみようと思うに至った。
もちろんフィルムはセンサーではないので物理的に数えられる画素数に変換することはできない。よってあくまで経験上の、机上の理論ということでご了承願いたい。また、カラーフィルムはよくわからないので、ここではモノクロフィルムに限定する。

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line/mmとピクセル

普段よく使うFujifilmNeopna Across100のデータシートをみると低コントラスト領域(1.6:1)で60 line/mm、高コントラスト領域(1000:1)で200 line/mmとある。線と線の間には必ず空白(白)の領域があるので、画素数はlineの2倍となる。よってこのフィルムは120 pixel〜400 pixelまでの画素数となる。ここでは最も低画素で計算すると;

120 pix/mm ;
35 mmフィルム(24 x 36 mm) = 2880 x 4320 pix = 12 MP(1200万画素)
6x7ブローニー(55.6 x 69 mm)= 6672 x 8280 pix = 55 MP(5500万画素)

300dpiでの引き伸ばしの限界

これで条件は揃ったので、あとは300 dpiの解像度でどこまで引き延ばせるか(引き延ばしの限界)を計算すれば、35 mmフィルムに適切な用紙サイズがわかってくる。

300 dpi : 念のため、1インチ中に(2.54 cm)に300dot詰め込んでいる解像度のことで、印刷などでは基本的な設定とされている。ちなみにwebでは72 dpiあれば基本的には十分である。

35 mmフィルム;
短辺 (2880 / 300) x 2.54 cm = 24.3 cm
長辺 (4320 / 300) x 2.54 cm = 36.5 cm

6x7ブローニー ;
短辺 (6672 / 300) x 2.54 cm = 56.4 cm
長辺 (8280 / 300) x 2.54 cm = 70.1 cm

印画紙のサイズ ;
六つ切  : 20.32 x 25.4 cm (8 x 10 inch)
小四つ切 :    24.13 x 30.48 cm (9.5×12 inch)

比較画像(グレーの背景が35 mmフィルムの300dpi引き伸ばし限界)イエロー、オレンジは各印画紙のサイズ。

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六つ切りは余裕がある。暗室でも、かなりトリミングして拡大した部分があったが、仕上がりに解像度の低下という感じはみられなかった。一方四つ切りは、特に短辺は数字上すでに限界に達している。思い切ったトリミングや拡大は解像度の低下を招く恐れがある。因みに図にはないが、ブローニーサイズは短辺長辺ともに35mmの2倍近く(面積は4倍以上)、四つ切りでもかなり余裕がある。さらに上のサイズでも全く問題ないだろう。

結論

設定解像度を300dpiではなく、250dpi、200dpiなどで計算すれば数字上の余裕はできるし、その違いは実際にプリントを比較するか、神経質な本人以外は誰もわからないだろう。また35mmのフィルムの解像度が12MPであるという前提も所詮は机上の理論であることを考えれば、四つ切りでも十分に楽しめる。

しかし個人的には四つ切りサイズはブローニーでの引き伸ばしと比較して35mmはどこかぼやけた感が否めなかった。もちろん撮影時のピントの甘さが露呈したとも考えられ、これは私の撮影技術の問題でもあるだろうが、そもそも35mmレンジファインダーでジャスピンを求める気にはサラサラなれない。ケルテスなどの写真集をみても、大きく引き伸ばした写真は解像度が低下しており、そんなものなんだなと思うようにしているし、最終的には写真の良し悪しにシャープさはそれほど関係はない。

end of the summer

夏の終わり荒川にて。6x7ブローニーで撮影。4つ切りでも素晴らしい解像度を保ったままだった。

因みに、ライフの報道カメラマンであった三木淳氏が、1950年にニコンの35mmカメラにNikkor 85mmF2のレンズでDavid Douglas Duncan氏を撮り、翌日彼に見せたのも六つ切りサイズ(8x10)であった。サイズはともかくとして『シャープで完璧なポートレートだった』とDuncan氏は回想しているが、これが四つ切りならシャープさがやや薄れ、歴史が変わっていたかもしれないな、などど空想してみたりする。

デイヴィッド・ダグラス・ダンカンとの出会い : インタビュー動画 | ニコン - YouTube

ハイキーの罪状

いつもはIlford400かアクロス100のモノクロフィルムを使っているが、店頭に並んでいたNEW SEAGUL400というフィルムが気になったので購入してみた。値段も800円で、まあ一応made in UKと書かれているのでイギリス好きの私が選ばない理由はない。後でわかったことだが、ORIENTALFILM社のまあまあ新しいラインナップらしい。

M3にplanar50mmをくっ付けてとりあえず撮ってみる。人、猫、街並み。10枚程度撮ったところでなぜか違和感が込み上げてくる。なぜだかよくわからない。フィルムなのでその場で画像を確認することもできない。次のショットを構えたところで、あ!と思った。しばらくアクロス100で撮っていたたためISOが100のつもりで露出を合わせていた。もちろんM3には露出計などないし、スナップショットにわざわざ露出計を持参もしない。何れにしてもISO100だと思っていたわけだから、単純には2段オーバーということになる。フィルム撮影時はただでさえ若干オーバー目にとるのに、さらに2段オーバーなら意図せずハイキーになるのは必至で、よくいえばゆるふわ?か。

少々落ち込んだ。もちろんフィルムのラティチュードは広く、白飛びはなかなか起こらないことは経験的に知っていたが、陰影を楽しむモノクロ写真をハイキーにすることに何の意味があるかわからない。おまけにさらに悪いことに、その日は妻が髪を切ったばかりで珍しくモデルをかって出たため、こちらも日頃の練習の成果を出そうとプロっぽく指示しながら5、6枚撮影していた。もちろん頭の中では昼下がりの柔らかい光が窓から差し込みレンブラントライトのごとく表情に柔らかな陰影をつける絵を想像しながら。

気を取り直し、ISO400で計算して近所を撮影していたが、25枚程度撮ったところで我慢できず、残りの枚数を意味のない自画像で使い切った後で自家現像してみた。幸いなことに現像時間はアクロス100と同様の5分半。分かりやすくてよい。

現像後、スキャンしてみる。見事なハイキー。そのままではトーンも何もない。肌が真っ白に飛んでいるので女性的にはむしろこちらが好まれるかもしれないが、モノクロを少しでも理解している者からすれば、間違いなく露出オーバー。ミス。しかもこのSEAGUL400は、通常でもコントラストが薄いようで、それでより一層露出オーバーが目立っている。
しかし一旦デジタル化してしまえばあとはレタッチで何とでもなる。実際に何とでもなった。しかし問題はプリントである。露出オーバーのネガをデジタルほどに修正できるのか、ほとんど好奇心でレンタル暗室を訪れた。

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素の状態(レタッチ前の状態)。トーンが分かりづらい。

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デジタルなら簡単にコントラストを上げられるが、プリントで同じことをやろうとするとひどい緊張を強いられる。結局デジタルほどには回復できなかった。

露光時間を決めてテストプリントしてみる。標準的なコントラストと濃度にするためには10秒以上の時間が必要だとわかった。よりメリハリを付けるならおそらく20秒弱は必要だろう。これまで平均して6秒程度で露光していたが、10秒以上になるとやや不安になる。実際に作業したことのある人ならこの10秒がどれだけ緊張するかはわかってもらえると思う。気持ちとしては星撮りでシャッターを10秒以上開けて待っている感覚に近い。大きな違いは印画紙は1枚200円前後するということだろうか。失敗はしたくない。

結局絞りの調整などで露光時間を短くして4つ切りサイズで数枚プリントした。家に帰ってから壁に飾ってみるが、うーん、やはりハイキー。モノクロでハイキーほど情けないものはないと個人的には思う。

反省点として、当たり前のことだが、いかにフィルムのラティチュードが広くても、基本は標準露出でしっかり撮り、シャドー、ハイライトのトーンを残しておくこと。そうすればコントラストや露出は後で、それがデジタルでも、暗室でのプリントであっても何とかなる。逆にこの辺りをいい加減にしていれば回復の見込みは薄い。

ちなみに今回の件とNEW SEAGUL400とは直接関係はない。粒状感が割と強めで面白いフィルムだと思う。