Cure of GAS

Castle Rock Photography

写真やカメラにまつわる話を淡々としていきます。

Carl Zeiss Biogon 28mm F2.8 ZM レビュー

スカッと抜ける、とにかくその一言に尽きる。

The end of the season

広角特有の歪みを抑えたBiogonタイプならではの果てしなく続く地平線の描写、不安を取り除いたアーキテクチャの直進性描写など、見る人が見れば気持ちいい、と感じるのではないだろうか。

Tearoom

現在ZMのBiogonタイプは21 mm、25 mm、28 mm、35 mmがあり、この中で善も悪しも28 mmという画角はかなり地味な存在であるが、35 mmよりもう少し広く、25 mmほどパースをつけたくない、そういったシチュエーションで重宝するレンズ。もちろん普段からGRを使っている方なら違和感なく撮影に没頭できるだろう。

The end of the season

同じMマウントの純正LEICA ELMARIT 28 mm asphとの比較だが、光学的にはBiogonの方が優れている?とのレビューもよく目にする。しかし個人的には違いは感じられない。それよりも Biogonは最短は50 cmまで寄れるという大きなアドバンテージがある。

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最短50 cm

距離計でピントは合わせられないので、目算という話になるが、マニュアルレンズを普段から使っている方なら50 cmの距離は感覚的にわかるだろう。それに28 mm F2.8の50 cmの被写界深度は前後 3cmも余裕がある、多少のずれでもかなり合焦する。もちろんデジタルライカやミラーレスでのライブビュー撮影ならこの限りではない。

B&B Japan

鏡筒も短く大変コンパクトで軽いレンズなのでM6につけっ放しでも全く違和感がない。プライスの面からも是非オススメしたいレンズだが、少々厄介なのが28 mm枠がファインダー外周ギリギリのため、眼鏡をつけてM6を覗くとどうしても見えない範囲が出てしまう。もちろんこれはレンズの問題ではないけれど。

機会があれば是非。

 

LEICA SUMMARON 35mm F2.8 レビュー

前回F3.5のレビューを書いたので、今回はF2.8について。

4群6枚のレンズ構成はF3.5と同じだが、ランタンガラスを使用したことで半段ほど明るいF2.8となった。E39径のF3.5は190gで、こちらは160gと30gほど軽い。最短もF3.5の1m(眼鏡無)から70 cmとなっており非常に使いやすい。そして鏡筒の作りや外観は銘玉Summicron 8枚玉と同じ、無限ロック付きでほとんど工芸品に近い。なんというか、個人的にはほぼパーフェクトな35 mmである。

Leica Summaron 35mm F2.8

描写はF3.5の淡いトーンを維持したままより安定感を増した感じで、モノクロのみならずカラーでも優しい色合いを描き出す。

Still life

F2.8は現代基準では相当に暗いが日中でISO400フィルムの使用には十分すぎる開放値。個人的にはF2やF1.4の大口径では特に黄昏時に設定を迷うことがあり、思ったよりハイキーになることも多いが、開放F2.8ならば迷いはない。日が暮れたらとにかくF2.8、室内でもF2.8、あとはシャッタースピードで調整すればよい。

Ueno, Tokyo

レトロか、現代的か。個人的にはどちらにも当てはまらない、独特の存在感のある描写だと思う。そして何より撮影中や撮影後の満足度、充実感がすごい。もちろんZEISSレンズも大好きでよく使っているが、それとはまた別の、時間の重みのようなものを感じる。

Ueno, Tokyo

60年前のレンズ。初老のカメラマンが雨降るパリの街並みをこのレンズで撮影したかもしれない。そして大切に扱われてきたレンズが今私の手元にある。そんなストーリーを想像するのも良い。

しかし、開放値に囚(とら)われないことが、これほど選択の自由を、そして光量の少ない場所においては撮影時の緊張感を与えてくれるとは。やはり奥が深い。

 

LEICA SUMMARON 35mm F3.5 (goggle)レビュー

LEICA M3用に買った35 mmレンズで、眼鏡付きのもの。サイズが重くなる反面、M3の宿命である最短撮影距離1 mをゆうに割り込み、65 cmまで近接できる優れもの。

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M3 & Summaron 35mm F3.5

写真家の渡部さとる氏も著書『旅するカメラ』の中で、印画紙にネガを焼いてみるとトーンの表現の素晴らしさに驚いた、と大絶賛しているが、正直なところ当時はあまり知識がなかったためよく分からなかった。

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今あらためて見直すと、よくわかる。特に現行のレンズの優れたコントラストやシャープネスと比較するとなんとも優しく、優雅な画だろうか。

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やはり65 cmの撮影距離は大変便利で、フードフォトもこなせる。

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茅ヶ崎ビーチ

眼鏡付きなので速射に劣るかといえばそうでもない。キャンディッドも問題なくこなせるだろう。

Decisive moment at Chigasaki beach
上位モデルのF2.8より半段ほど暗いこと、F2.8の方がより鋭敏な描写をすることは間違いないが、デイライトで絞って街並みを撮るのならば描写に大きな差は出ないだろう。

Himawari (sunflower)

今はもう手元にはないが、こういうレンズを本当に大切に使っていく、そんなカメラ人生を歩みたいと思う。

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旅するカメラ エイ文庫

旅するカメラ エイ文庫

 

 

これまでの35mmを振り返る統括レビューダイジェスト

年号が変わって新しい時代になったので、これまで使ってきた35mmをそれぞれレビューしてみたい。(お時間のある時にご覧下さい。そして、これらは完全に私の主観でお気に入りはあれど、特定のレンズを批判するつもりはありません。また基本的にはフィルム撮影での感想を記しています。)

  • LEICA SUMMARON 35mm F3.5 (Goggle)
  • LEICA SUMMARON 35mm F2.8
  • LEICA SUMMICRON 35mm F2 (6 elements)
  • LEICA SUMMICRON 35mm F2 ASPH.
  • LEICA SUMMILUX 35mm F1.4 ASPH FLE
  • Nokton 35mm F1.4 VM
  • Nokton 35mm F1.2 VM
  • Color skopar F2.5 VM
  • ZEISS Biogon 35mm F2
  • ZEISS Distagon 35mm F1.4

LEICA SUMMARON 35mm F3.5 (Goggle)

LEICA M3を手に入れてからは、いわば物理的制約上ずっと50 mmレンズを使っていた。やはりどうしてももう少し広い画角が欲しくなり35 mmレンズを購入した。今ならノーファインダーで十分撮影できるほどの35mm画角力?は身についていると思うが、当時若輩者であった私は店主に勧められるままに眼鏡付きを購入した。重くなる事と見た目の好みが分かれるところだが、眼鏡付きはどういうわけか65 cmとかなり寄れるので、その意味では素晴らしいアイデア商品。 肝心の描写だが、正直もう既にスナップ用レンズとしては完成していると思った。解像度の高さなど通常の用途では全く問題が見当たらないライカ黄金期の製品。友人のポートレートも含めたくさん撮影した思い出のレンズ。

Chigasaki beach

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LEICA SUMMARON 35mm F2.8

F3.5で35mmの画角に慣れた頃に買い換えた。最初は眼鏡付き、その後M-4Pで、35mmが使えるようになってから眼鏡なしを入手した。描写は相変わらず完成形。切れ味鋭く、それでいてなぜか柔らかい。幾度もポートレートを撮ったが、今見ても素晴らしい。実にフィルムライカのためのライカレンズといえ、このレンズでなければ撮れない絵は間違いなくあると思う。構造的には無限ロックのパチンという音、これは正直ニヤけてしまうほどのギミックで、往年のライカ工芸技術の産んだ、恐らくもう2度とない文化的財産。近年異常な高騰が続いているが、逆にこれまでが安すぎたとも言える。

Still life

 

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LEICA SUMMICRON 35mm F2 (6 elements)

独特の個性を持ったレンズで、開放のぐるぐるぼけを始めとして好みの分かれるところだが、開放F2が必要で、かつフィルムライカでの使用がメインならば次のASPHよりもオススメしたい。開放にこだわらないのならば中古価格もほぼ同等かやや安い前述のSummaron 35mm F2.8の方をおすすめする。ちなみにミラーレスでこのレンズを撮影するとフレアに悩まされると思う。個別レビューを載せているので興味があればどうぞ。

Yanaka (old town)

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LEICA SUMMICRON 35mm F2 ASPH.

私が使ったのは現行モデルの一つ前のモデルで、率直な感想を述べれば素直で優秀。デジタルを意識しているためか解像度はピカイチだし、失敗もない。全く問題がないレンズといえる。散々フィルムで撮った後、写真を見直してみて思うのだが、このレンズ、フィルムでの使用はオススメしない。あまりにも綺麗に撮れすぎて面白みにかける。これほどしっかりした画質などを求めるならば、素直に最初からデジタルで撮った方がよいと思う。反面、デジタルライカ用の35mm安全玉としては是非オススメしたい。また後述ZEISS Biogon 35mm F2で代替可能なのでそちらも視野に入れると差額で美味しいディナーを楽しめるかも。

Western style house in Japan

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LEICA SUMMILUX 35mm F1.4 ASPH FLE

35mmフラッグシップの名に恥じない、まあ本当に素晴らしいレンズで、プライスと重さ以外は文句のつけようがない。しかしながらSUMMICRON 35mm F2 ASPH. で述べたように、フィルムで使う玉ではない。さらに描写は後述Zeiss Distagon 35mm F1.4と遜色ないため、代替品がある(このレンズでしか撮れない絵はない)と思うと、相当ライカに心酔していないと購入へと踏み出せない。個人的にはこのレンズはプロがLEICA M10に装着してガチでファッションモデルを撮り、カメラとレンズもろとも雑誌のカバーを飾るための品。私には大変にトゥーマッチだった。

Portrait of M

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Nokton 35mm F1.4 VM

プアマンズライカなどと揶揄されるが、描写はプアではない。きっちりするところはきっちりするし、ぐるぐるぼけは遊び心のある描写。またF1.4はISO固定のフィルムカメラには大変に有難い。私は独特の収差が生み出す歪みがやはり好きになれず使わなくなってしまった。安価な趣味レンズ。手軽にオールド感を楽しみたい方にはおすすめ。

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Nokton 35mm F1.2 VM

たまたま興味が湧いて購入したレンズ。第一印象は非常に重く大きい。F1.2には憧れるが、CANONの50mm F1.2のようなクリーミーな描写とはならず、ボケは相当にうるさい(好みによる)。実際は2段程度絞って使うのが現実的だった。かなりの趣味レンズ。しかしそれにしては重く、大きい。こちらも記事にしているので興味があったらどうぞ。


Color skopar 35mm F2.5 VM

正直よく覚えていない(笑。オール5の優等生レンズで、毒がなく、ある意味目立たない存在。さらにカメラに付けているのも忘れるぐらい小さいため、感触すら覚えていない。とにかく描写は普通で尖ったところがない。安価なので初めて35mmのマニュアルレンズを使うなら、練習用にもおすすめしたい。もしもスパイスが欲しくなったら、その時はライカレンズはいつでもあなたを暖かく迎えてくれるでしょう。

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ZEISS Biogon 35mm F2

大変優秀なレンズで、地平線まで歪みなくビシッと決まるのは大変感激した。ほとんどLEICA SUMMICRON 35mm F2 ASPH.と描写の違いはないが、鏡筒の長さが問題で、ハンドリングについては好みが分かれるところ。プライスはSUMMICRON 35mm F2 ASPH 現行モデルの1/3であり、検討の余地は大いにある。記事も参考にして下さい。

ZEISS Distagon 35mm F1.4

こちらも記事にしているのでどうぞ。LEICA SUMMILUX 35mm F1.4 ASPH FLEと写りは遜色ないばかりか、個人的にはこちらの方が好みである。重く、バランスが悪いことを除けば一度は手にしてみたいレンズ。

Distagon 35mm F1.4 ZM

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終わりに

私などまだまだ若輩者だが、色々なレンズを使ってきてそろそろある種の結論というか、哲学が生まれたような気がする。 まずレンズの個性があるのかという話。一般的にはこれは迷信のように思われているが、自分でフィルムを現像して印画紙に焼き付けると間違いなく個性は、それが古いレンズであればあるほど、感覚できる。

ところが現行のレンズになるとほとんど違いは認識できない。そして現行の優秀なレンズをフィルムカメラに装着して撮影すると、デジタルカメラで撮った写真に限りなく近いものが写し出される。どこまでもシャープでくっきりしている。まさにデジタル画像を、場合によってはモノクロ変換してグレインを加えたものに近くなる。 どっちが先でどっちが後かわからなくなる。つまりフィルムをデジタルに似せたのか、デジタルをフィルムに似せたのか。

古いレンズで撮影したものはそれとは違う。例えばSUMMARON 35mm F3.5やF2.8 。これで撮影されたネガをみると、カラーでもモノクロでも、時の洗礼を受けて人々の記憶に残っている、写真らしさ、がそこにあるような気がする。その点で成功している現行レンズはC sonnar 50mm F1.5と個人的には思う。 最近になってSUMMARON 35mm F2.8 を持ち出して割と気楽に写真を撮っている。またレビューしたい。

その他のレビューダイジェスト:

 インスパイアされた記事:

私が今でもGR II を使い続ける理由(GR III を買わずにいる理由)

いつでもポチる準備はできていた。

カートの中に入れたGR III。GRファンの1人として買わないわけにはいかない。中学生の頃、なけなしの小遣いを貯めて大好きなGuns N' RosesのCDを集めていた。手持ちのアルバムと同じ楽曲が収録されたベスト盤(昔はこの商法が多かった)がリリースされた時、買い渋っていた私に対して友人が放った一言が今頃になって頭を何度もノックする。Knock, knock, knockin' on ...

「ファンなら買うべき」

そうファンなら買うべき、だが、やはりなぜかポチれない。理由について考えを巡らしている間に売り切れの表示。なぜかほっと心を撫で下ろすのも束の間、数日後にまた入荷、そして完売。メリーゴーラウンドのように同じところをグルグル回っている。愛想笑いをした白馬も疲労の限界で、ヨダレを垂らすかもしれない。そろそろ野に放ってやらねば。(以下全て個人的で気ままな意見です。GR IIIは素晴らしいカメラだと思います)

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GR II と LEICA M4-P

オーバースペック

私にとってGR IIIはスナップカメラにしてはオーバースペックすぎる。まず画素数とそれに伴うRAWのファイルサイズ。約1600万画素のGR IIでは1枚10 MB程度だが、約2400万画素のGR IIIではおよそ3倍の30 MB。スナップ(記録写真含め)用途で毎回数100枚以上撮るとしたらかなり堅牢なHDシステムが必要となる。LEICA Qを使っていた時は1枚50 MBのRAWにもれなくパソコンフリーズが付いてきて頭を悩ませたものである。取り回しの良さなどを総合的にみても、GR IIの画素数が現状はベストである。
もちろんJPEGで撮る事も考えたが、私は写真の趣味としてレタッチを含めて楽しんでいるためやはりRAWにこだわりたい。

画質(クオリティ)は高いけどGR IIも負けていない

GR IIIのRAWサンプルファイルをダウンロードして弄ってみたが、大変素晴らしい。スカッと抜ける画、高ISOでの画質も最上級。シャドーの粘り、レタッチ時の回復も素晴らしい。しかしGR IIも相当クオリティが高い。スナップ写真としては上等すぎ、作品制作としても全く申し分ない。

Snowy park

高ISOも黄昏や夜の渋谷レベルなら問題なく使用できるし、そもそも本気の夜間撮影ならミニ三脚を使うだろう。

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GR II - Kyoto City

初代GRについて

反面初代GRはGR IIには少し劣るように思われる。デイライト撮影では全く問題ないが、光量の足りない場所での緑がかったホワイトバランスは少々厄介で、高ISO撮影でのディテールの崩壊もIIより目立つ。気になるようならばモノクロで撮影すれば案外いい塩梅になる。

copse

The end of the year

 

手ブレ補正の問題

注目の手ぶれ補正。所有しているA7 IIIにも付いているため素晴らしい機能なのは十分に理解しているが、私が恩恵を感じるのは主に動画撮影時である。 GR IIやレンジファインダーならば例え1/8であってもひどいブレ写真を撮った事がなく、ブレそうならミニ三脚を使う私にとってはやはりトゥーマッチ。

そして詳しいことはよく分からないが、LEICA Qで手ぶれ補正をONにすると常にジージーと音がしていた事を考えると、手ぶれ補正とバッテリー消費はトレードオフと考えている。またタッチパネルも同様、A7 IIIでも使ったことがないし、GR IIでも困ったことがないので私には必要ないだろう。

価格設定について

そもそも私にとってGR IIIはもはや気軽に持ち出せる価格設定ではない。

GRシリーズはとにかくコンパクトで、それゆえ持ち出す機会が非常に多い。実際私はGR IIを仕事用カバンに常に入れている。休日はショルダーにペットボトルやスマホと一緒に雑に放り込んで外出する。このような雑な扱いができ、傷がついたところで気にならない価格が私の中では5万までで、10万を超えてしまうとなんだが気軽に使えなくなる(交換レンズは別)。

GR IIIは全身にシャネルをまとった夏川結衣、GR IIは『リメイク版東京物語』に出ているジーンズを履いた蒼井優。残暑の浅草のテラス席で一緒に白玉ぜんざいを食べるのなら後者の方が気が楽だろう。

The park

やはり初心者向けではない

余談になるが、GR IIIは売れ行きが物凄く、新宿Mカメラでは群を抜いて1位となっている。しかし中古品の入荷も比較的多いように思われる。これは最高のコンデジという謳い文句につられて比較的裕福なカメラ初心者が興味本位で購入した結果ではないかと思われる。以前ブログにも書いたが、GRは初心者向けカメラでは全くない。相当癖があり扱いにくい。まずズームができない。これは旅の記念に家族写真などを撮りたい方には致命的だろう。28mmも全く玄人向けの画角で扱いが相当難しい。インターフェースもユーザーフレンドリーとは言い難い。GR IIIはフラッシュも無いので、夜間にはフラッシュを焚くものだとする初心者(私もはじめはそうでした)には「聞いてないよーッ」といった感じだろうか。私は初心者にはSONYのRX100シリーズをオススメする。

まだ発売して間もないGR IIIであり、私の心境もいつ変わるか分からない。よってあくまで、平成最後の、GR IIへの賛美歌?と思って読んでいただければ幸いである。

 

40mmとNoktonとBatis

40mmという画角にはどこか歯がゆくも、愛おしいイメージがある。

旅先でレンズ交換をしない(したくない)私にとって出発の前夜など、35mmか50mmかで小一時間悩むこともあり、2つのレンズをカメラに付け替えては感触を確かめたり、右手と左手にそれぞれレンズを乗せて天秤のようにぶらぶらさせて重さを再確認してみたりする。結局は2つのレンズをカバンに詰めるという安心を選択することになるわけだけれど。

Summilux 35mm asph FLE

私が40mmのレンズと初めて出会ったのはライカミノルタCLのロッコール40mm F2である。

Leitz Minolta CL

素晴らしいレンズで、開放は淡く、絞れば国産に恥じないキリッとした表情をみせる。オールドレンズに求める姿が全てそこにあった。

Rusty House In Japan

しかしやはりその、なんとも中途半端な画角が性に合わずに使わなくなってしまった。そしてそもそもM型フィルムライカには40mm枠がないため、構図が取りにくいというのも理由だった。時は過ぎる。

Nokton 40mm F1.4をライカM6に装着して使い古したONAのバッグに入れて散歩に出かける。交換レンズは持たない。フレームは50mmしか出てこないので50mmの気持ちで構図を決める。現像したネガを見ると実際はもっと広い範囲が写っている。なんだか得をしたようで、それがまた心地よい。35mmでは広すぎ、50mmでは狭すぎのシチュエーションは意外にも頻繁に遭遇する。40mmはまさに Sweet Spot 。

Nokton classic 40mm F1.4

Nokton 40mm F1.4は現代的なレンズであり、合焦部の高いシャープネスなどオールドレンズと呼ぶには抵抗があるが、開放では柔らかく、絞れば几帳面、の方程式は踏襲しているように思われる。何れにしてもグレインの豊富なISO400のモノクロフィルムではレンズの解像度などはどうでもいいことだけど。

Ordinary day

40mmに慣れてくるとデジタルでも使いたくなる。Zeiss Batis 40/2 CF

数字上のスペックからすると少し躊躇するプライスではあるがやはり気になったので入手する。すこぶる上等な光学的スペックにA7IIIは十分に答えてくれるが、それにしてもこのレンズは本当に素晴らしい。

そもそもDistagon好きの私にはこのレンズがDistagonであることだけで8割は満足できるが、やはり期待は裏切らない。まず中心部の解像度が素晴らしく、開放から安心して使える。それ以上に光の捉え方がやはり独特である。解像度が高いのだけれどなぜか硬くない。ポートレートや職場の集合写真などにも使ってみたが、こちらが求める光の描写を十分に表現してくれる。

Mini purple phalaenopsis orchid

 

春の夜は桜に明けてしまひけり (芭蕉

Cherry Blossoms

あっという間に桜のシーズンも終わってしまった。ペリエにライムを絞って蒸し暑い季節に備えよう。

カールツァイス ZEISS Batis 2/40 CF E-mount

カールツァイス ZEISS Batis 2/40 CF E-mount

 

 

脳 MRI (備忘録)大きいは正義?

先日脳MRIを受けてきた。

実はめまいがぶり返しており、その関係で大学病院へ紹介状という形になった。「うちではこれ以上はどうしようもありません」という医師(近所の耳鼻咽喉科)の言葉は素晴らしい。プライドや見栄でダラダラと診察を続けられるよりははるかにマシである。

というわけで人生初のMRIとなった。これは私にとっては非常にラッキーなことで、40も過ぎているのでそろそろ人間ドック、特に脳ドッグなるものを受けてみたいと思っていた。小さな腫瘍や出血などがある可能性は否定できない。しかし健康診断の流れだと自費となってしまい。これがそこそこというか、かなり高い。中級クラスのレンズが1本買えるくらいはする。

検査の当日は有給をとって休むことにした。特に食事制限はなかったため昼は妻とイタリアンの店でランチした。夫婦で平日のランチはなかなか機会がない。

 

「身体の中に金属ありますか?」

MRI予約をとる際に医師に聞かれたが返答に一瞬戸惑った。もちろんない。しかし小さい頃 ”Xファイル” のファンであった私は 、いや待てよ “ひょっとしたら宇宙人にチップを埋め込まれているかもしれない” という疑念を最後まで取り除くことができなかった。以前放射線技師さんに聞いたのだが、実習中にうっかり胸のボールペンを挿したままにしていたため、MRIが起動した瞬間にそれがロケット弾のように飛び、機器に突き刺さったということである。恐ろしい。私の脳に埋め込まれたチップはエイリアンのごとく頭皮を突き破って数億円の機器をダメにしてしまうかもしれない。

検査は淡々と進んだ。ハザードマークの描かれた物々しい扉が連なる病院地下で問診を取られ、再度金属や彫り物の話をされる。ヒートテック衣類は禁止(熱を発する)、金属はもちろん禁止。タトゥー、ネイル等も禁止。若気の至りでタトゥーを入れなくてよかった。 脳の検査なのでズボンは脱がなくてよいと言われたが、チノパンのチャックがドーナツボタンのためかなり心配になった。縫い付けてあるので問題ないとのことだが、男性器の最前線で待ち構える5つの真鍮ドーナツリング、これが前述ボールペンのごとく”ひょっとしたらロケット弾化”するなど気が気でない。

「すみません、全部脱いでもいいですか」と看護師にお願いして、入院患者用のガウンを羽織って検査開始。

内部は結構狭い。SF映画なんかでみる冬眠用ポッドのサイズ感だろうか。実際中に入ると本当に狭くて、天井との差は20cm程度。おまけに頭はレクター博士の拘束着のごとく固定され、身動き1つできない。閉所恐怖症の方には大変辛いだろう。

「長くて20分です。その間動かないでください。動くと画像が乱れます。」

なるほど、すごいよくわかる。被写体ブレってやつですね。それならシャッタスピード250くらいにして、などという冗談をいえる雰囲気ではもちろんない。いいでしょう。ダゲレオタイプね(露光が20分くらいの銀板写真)。待ちましょう。

両耳をパッドのようなものでなぜ塞ぐのか疑問だったのだが、検査開始後その理由がわかった。狭いところで動かないのはまあ苦痛ではない。しかし開始後すぐに始まる機械音、文字通り大変な騒音である。ドンドンドンドン、ピーピーピー、ポポポポポ..... 耳を塞いでいてもびっくりするくらい大きな音。比較的静かな環境を好む私には非常に苦痛であった。途中ドンドンドンという音と共に仰向けになっている背中の下がドスンドスンと揺れた。これは機械が爆発するかもと思い本当に怖かった。

技師さんの「終わりましたよ」の声に救われる。

結局終了時まで目をつぶり、唾を飲み込むこともせずに静物化した。今度生まれ変わるときにはデッサンモデルにでもなれるかもしれない。

なぜ音が出るのかが疑問だったので後で調べてみると、電流と磁場によって機器全体がまるでスピーカーのようになるためらしい。電流によってコイルが膨張したり縮んだりする音。MRIは人類の叡智ともいうべきすごい最新機器なのに、ものすごくアナログさを感じるのは私だけだろうか。サイレントのMRIも開発中か、すでにあるらしいのだが、そりゃそっちの方がいいわ。

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SIGMA 35mm F1.4 DG ART

「結論から言うと...」診察時、医師がおもむろに話し始めた。「なんともありませんね。いやぁ綺麗な脳してますよ(笑」

その後めまい予防のための体操などを教わり、時間が解決することを知る。 診察後、記念にMRI画像をプリントアウトしてもらった。

帰宅した後で妻に、結果は”綺麗な脳”だったということを伝えた。「よかったね」

それから昨日作った野菜とレンズ豆のミネストローネを温め直して夕飯の代わりに2人で食べた。

夜も更けた頃、書斎に戻ってあらめて自分の脳画像をみる。自分の頭の中にこんなカブトガニに似たものが入っているとはどうにも実感がわかないが、妙に愛おしくなった。これが自分の意識の源なんだ、活動の中枢なんだ。『精神は肉体の玩具』という言葉にあるようにこれからも健康につとめ”良い血液”を脳に送り込んでやらなくては。

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SIGMA 35mm F1.4 DG ART

それで、前から気になっていたレンズを買った(ポチった)。SIGMA 35mm F1.4 DG ART。脳ドックに自費で行くと思えば安いもんである。予想通り、誰もが寝静まった闇夜の、凛とした空気の中で私の脳にはドクドクと”上物(じょうもの)の動脈血”が供給されるのを感じた。生きているって素晴らしい。

2日後に商品が到着して、早速開封する。まず、重たい。summiluxやdistagon (M mount)なんて比じゃない。久々に重量級のレンズを手にした。しかし描写性能はすこぶる良好。笑ってしまうくらい良く写るレンズである。もちろんだからこそ、この大きさと重さでも市場に供給できるだけの需要があるのだろう。

個人的な経験では、大きなレンズで性能が悪いものに出会ったことがない。光を取り入れる口径が大きいほどリッチに描写する。もちろん最初からF2のレンズを購入すればサイズは小さくなるだろうが、F1.4をF2で撮影した方が個人的には”明るく”感じる。 MRIも、後何世紀か先にはSF映画のように手持ちの刷毛(はけ)のようなもので頭をスキャンすれば異常部位をホログラムで写してくれるのだろうけど、当分はあのバカデカイ棺のようなものに横たわるしかなさそうである。

人体を透視するほどの素晴らしい描写性能と大きさはトレードオフの関係か。 やはり大きいは正義、か。