Cure of GAS

Castle Rock Photography

日々について淡々と書きとめてます。

シルキーな水の撮影について

露出トライアングルの理解が進むにつれ、水の流れを絹のようにしたいという欲が出てきたのはちょうど中判フィルムで撮っていた頃。B(バルブ)を知ってからというもの、チャンスあればこれを多用していた時期がある。

いうまでもないが、バルブといってももちろん配管のValve(ヴァルヴ)ではない。

Gas appliance

カメラ好きの間でBといえばB(並品)を除いて当然シャッタスピードの開放ボタンのことである。

デジタルにもB(バルブ)機能はもちろんあるが、フィルムカメラのBは単純明快なシステムで、それはシャッターボタンを押している間はフィルムに露光し続けていて、手を離すと幕が降りて撮影終了というもの。 なんというか、非常に物理的、直感的、直接的で大変面白い。

しかしシャッターボタンを直接長時間押すわけにもいかないと気づいた頃に、シャッターケーブルなるものを入手する。三脚に据えたカメラから伸びるケーブルを親指で押し込みながらアナログ時計の秒針の動きをみていると、なんだか明治時代みたいで良いじゃないですか。

もちろん適当な時間露光すればいいというものではなくかなり高度な、あえていうと、専門的な技術が必要となる。 特に日中のバルブは相当工夫がいる。

ISO100 でF13まで絞っても、例えば青々とした海に対しては1秒も開いておくことができないため、NDフィルターなるものを挟んで、云々、など、まあ遊び心をくすぐるわけである。

それ以来、水面を撮影する時はとにかく開いた。

開けば滑らかになるだろう、開けば開くほどにそれはきっと白い煙となった銀河のような水丘が、むせび行く冬の寒気に枯れがれな男体山の眺望を厳かに浮かび上がらせるに違いない、と。

しかし現実は違った。

開けば開くほどに水の質感は消え失せ、飛沫は文字通り空気となって、どこか寂寞(せきばく)とした砂漠のような、いやそれどころか、これではただのコンクリート埋立地のようになってしまっている。

Lake Chuzenji (Chuzenjiko)

心を開けば開くほどに離れゆく貴方(あなた)

このようにして高いフィルムを散々ダメにしてその反省もあってか最近で ”ゆるく” ひらく、というZ世代のソーシャル・スタンダードを真似してみたりすると、まあ結構 ”ふわっ” としていい感じじゃないですか。

Small Waterfall in Japan

流れの早い滝も1/8くらいあれば絹糸のように ”つながる” し、波飛沫も同様。 

Sea of Japan

さて、新年度もハリキッて参りましょう。