Cure of GAS

Castle Rock Photography

日々について淡々と書きとめてます。

LEICA 中望遠レビュー

レンジファインダー機における中望遠〜望遠レンズの立ち位置は微妙だ。

90mmや135mmはブライトフレーム(視野枠)が非常に狭くなること、またTTL(レンズを通して見る)ではないため、レンズを変えても画角の変化やBokehの程度など、結果の予測シュミレーションができない。またフィルムで撮影する場合は、手ブレの問題が大きく関わってくる。

望遠になればなるほどシャッタースピード>レンズの焦点距離の法則が重要になってくるため、ISO固定のフィルムでは例えばISO 400 1/15 F2.8での夕暮れ望遠撮影は、他例えぶれていても、"真っ黒写真になるよりまだマシ" という気持ちで撮影するのではないだろうか。もちろんレンズ自体の大きさも、コンパクトなレンジファインダーの利点をスポイルする可能性がある。私はこれまで3本の中望遠を使用してきた。それぞれまとめて簡単なレビューをしてみたい。

LEICA ELMAR 9cm F4 

初めての中望遠。固定式と沈胴式があるが、私が使ったのは沈胴式

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F4で暗いレンズではあるがそれゆえに解像度は非常に高く、半世紀前のレンズとは思えない。

レンズは300gと重く、また沈胴式ではあるものの、デジタルライカやM6?は沈胴時にセンサー部分を傷つけてしまう恐れがあるらしく、例えセンサーなしのライカであってもシャッター幕に当たるのではと思い、私は沈胴させたことはない。面白いのはF32まで絞り込めることで、ここまで絞ると被写界深度は一体どれほどになるのか。スペックの近いZEISSのTELE-TESSAR 4/85が現行品として売られているので、デジタルやまたはフレアコントロールを重視するならそちらがオススメである。

LEICA TELE-ELMARIT 90mm

工芸品のようなローレットの美しい1 st(初期型)と4群4枚へとレンズ枚数を減らして全体的に軽量化(100g以上も)を実現した2 ndがある。私が使ったのは初期型。

どちらも開放F2.8にしては大変コンパクトで、そのサイズはSUMMILUX 50mm ASPHと同じ程度である。

ファインダーを覗くと枠は非常に狭く、撮影時は本当に大丈夫かと心配するくらいであったが、現像してみるとそこはやはり中望遠ならではの圧縮効果がもたらす独特の世界が広がる。

The person you wait for...(Tokyo station)

開放はやや甘く、入射光によっては盛大なフレアが発生し、絞り込んでも改善はされない。上手くコントロールできれば柔らかい表現が可能だろう。

Wall

少し絞れば解像度は非常に高く、歪みもないので建築撮影にも問題なく使用できる。

Tokyo

店頭には初期型、2ndともに同じ価格で状態の良いものがあった。どちらかというと2ndは初期型に比べコントラストも高く、clinical(実用的)として海外でも人気があり、初期型はその美しい作りからコレクターアイテムに近い扱いになっているようだが、ライカ黄金期のデザインと作りの良さに惹かれて初期型に決めた。出番の少ない90mm、使うときはビジュアル、感触共に最上の時間を共有したい。

flic.kr

Hektor 135mm F4.5

レンズの性能とは関係がないが、まず、カメラに装着したそのルックスに圧倒される。長くそして重い(440g)。しかし妙にバランスがよく、重さをあまり感じない。正直なところ100g以上軽いTELE-ELMARIT 90mmの方が重く感じる。

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レンジファインダー機に装着して散歩用途に使うにはそこそこの気合いが必要であるが、三脚と腰を据えて慎重にポートレートなどを撮影するのならば問題ない。

Hektor 135mm f4.5

独特の柔らかさ、そして135mmならではの圧縮効果が大変美しい。開放値はF4.5と、現在の基準では相当に暗いが、光学的な計算では135 mmのF4.5は50 mmのF1.7相当の被写界深度らしい。50 mmのF1.7のBokehならばかなりぼけると言ってよいだろう。余談になるが、この時期ちょうどスーパーマーズでもあり、試しにこのレンズで火星を撮影してみた。結果として天体撮影に135mmではやはりお話にならない。調べてみると、惑星撮影は最低300 mmの世界らしい。やはり上には上がいる。

 

最後に

3本の中望遠を使用したが、望遠独自の画角の狭さや、どうしても大きく、重くなってしまうことなど、やはりレンジファインダー機での使用はかなり限定される。しかしポートレートなど、被写体が決まっている時は表現の幅を広げる意味で使用してみるのも良いかもしれない。年齢=焦点距離という法則があるらしいので、後40年後に85mmあたりを使ってみたい。

Leica Summicron 35mm (6 elements)(6枚玉)

初夏の日差しがほのかに降り注ぐ日曜日の午後、東京散策に出かける。カメラはライカM4-Pと非球面のズミクロン35mm。気ままに東京下町を撮影する。

ちょうどフィルムを1ロール使い切ったところで老舗カメラ屋を覗く。ショーケース内に所狭しと並んだレンズ群。その中にズミクロン35mmの6枚玉をみつけた。

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summicron 35mm 2nd / ilford hp5 plus

ズミクロン35mmは初代の8枚玉がもっとも有名だろう。ライカ通の間では『何かが違う』描写をすると評判らしいが、中古市場でも流通量が少なく、また大変高額である。その次に人気なのが3世代目の7枚玉。非球面に変わる直前のモデルで、写りはかなり現代的であり、おまけに非球面モデルに比べ軽く小さいため人気は高い。

6枚玉は2世代目にあたる。これは映画で例えると2作目ということで、オールドからニューへの開発過程における実験的な立ち位置のものが多く、当たり外れが激しい。特に宿命的に1作目と比較されるため、辛口のレビューがつきやすい。

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summicron 35mm 2nd / ilford hp5 plus

この6枚玉も例外ではなく、他の世代に比べると地味な存在であるが、時の流れとともに当時酷評を受けたものが再評価されることはよくあることで、現在ではそこそこプレミアムな立ち位置とはなっているようだ。

興味本位からお店に置いてあったデジタルライカで試撮りをする。シリアルでは1960年代のようで、やはり画はオールドらしいなんともいえない淡いコントラスト。しかし合焦部は実用的にシャープで、中心から周辺にかけてややフレアのかかった球面レンズ特有の柔らかいBokehが包み込む。

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summicron 35mm 2nd / ilford hp5 plus

ディテールに目を向けると決して先鋭という訳ではないのだが、全体的にはよくまとまっており決して眠い絵ではない。ライカらしい、という言葉が似合うだろうか。

 

非球面ズミクロンの果てしなく優秀な絵に飽き飽きしていた頃だったので、購入意欲というか冒険心に火がついてしまった。交渉の末、非球面を下取り。銀座でランチするくらいの支払いでディール。迷いはなかった。

店を出て近くの喫茶店で一息つく。そして古くも新しいズミクロンをマウントし、コーヒーの香りを後にして再び東京の街を散策する。たっぷりとした日差しが落ち着く頃、綺麗な夕陽がみられるに違いない。

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summicron 35mm 2nd / ilford hp5 plus

その数日後、根津神社辺りをウロウロしていると、カナダから来ているという観光客の女性にスマホを渡され、写真を撮って欲しいと声をかけられた。数枚撮った後、いい機会なので、ポートレートを撮らせてもらえないかとお願いをしてみた。

2枚ほど撮影して、instagramを相互フォローして終了。その日のうちに現像して送信した。

 

"Wow! I love it! Thank you!(ワォッ!気に入ったわ!ありがとう!)""Thank you too, Have a safe journey!(どういたしまして、良い旅を!)"

(ブログやFlickr上の掲載については承諾済み)

Nezu Shrine (Traveler's Portrait)

 

よく考えてみると私のLeica M4-Pはカナダ製、入手したてのズミクロン6枚玉もカナダ製である。なんたる偶然かッ。ライツカナダの神様の成せるわざである。

 

coalfishsholco.hatenablog.jp

 

Carl Zeiss Biogon 35mm 2/35 ZM ショートレビュー

35mmはとにかく激戦区。ライカMマウントでも例外ではない。その中でも開放F2の明るさを持つBiogon 35mm 2/35 ZMはトータルで最もベストなチョイスではないだろうか。

Biogon構成のレンズは収差が少ないことが特徴で、メーカーによるとディストーションはほぼゼロとある。35mmを広角レンズと捉えると、風景写真や建築写真では大変有用なレンズとなる。もちろん解像度は高く、高コントラストのZeiss色は健在で、少し絞るだけでマテリアルの質感を存分に表現できるだろう。反面周辺光量落ちは避けられないが、それがまた個性として良い効果を生み出すことも多い。

比較対象のSummicron 35mm asphだが、正直言って値段の差ほどの描写の違いは感じられないし、むしろ収差を抑えたBiogonの方が隅々まで端々しい描写をする。違いといえばやはり鏡筒の長さからくるファインダー右下のブロックだろうか。気になる方は気になるだろうが、私は特に気にはならなかった。

 

「決して安くはないレンズだが、純正と比べ1/3の価格で買える。浮いたお金で妻と寿司バー(SUSHI BAR)にいくつもりだ」NY在住マークさん(仮称)のレビュー

 

ぜひ一度は試していただきたい。

 

Carl Zeiss C-Sonnar 50mm F1.5 ZM レビュー

1932年以来構成が変わっていないゾナータイプのレンズ。C は Classic の C でも良さそうなのだが、公式には Compact の C とある。確かに開放F1.5と大口径であるにも関わらず大変小さく、そして大変軽い(250g)。そしてルックスが素晴らしい。ライカに装着した姿はとにかく理想のカメラ像そのもので、カメラ好きの多くが惚れ込むのは間違いない。

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肝心の描写性能だが、旧新融合といった具合で、程よいフレア感を残しながらも中心部の合焦は快調。ボケは暴れることなく大変なだらかで、繊細。ややハイキーに撮影しても、ハイライトのディテールを保ったまま必要な光量を必要なだけフィルムへ送り届けてくれる。

それはまるで純度の高い蒸留水を作るが如く、レンズを通して太陽光を純粋で美しく品の良い光のベールへと変えてくれる。

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コンパクトで大口径、描写も素晴らしいので問題点らしいものは見つからないが、最短撮影距離が90cmとやや長いため、例えばテーブル上の料理を撮影する場合はかなり後ろに下がる必要がある。しかし大抵のシーンでは困ることはないだろうし、そもそもレンジファインダーは最短70cmが基準なので、特にライカユーザーの方には今更驚くことでもないだろう。

もしミラーレス機をお使いの方で少しライカマウントレンズに興味を持たれた方は、その寄れなさに大変ストレスを感じるだろう。その場合はフォクトレンダーVM E-Close Focus Adapter(ソニーEマウント)の使用をオススメする。およそ半分、45cm程度まで接写可能となる。

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a7S

 

同スペックで気になるのはやはりライカ純正レンズ。F1.5はズマリットが有名だが、あちらは開放描写がユニークな、いわばかなりの"クセ玉"のため単純な比較はできない。あとはズミルックス。描写的には現行のasphより、第二世代あたりの描写に大変近いと感じる。興味があればそれぞれ記事にしているので参照されたい。

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いずれにしてもゾナーは銘玉ということに疑う余地はないだろう。是非みなさんも体験していただきたい(私は3回も買い直ししている)。

ILFORD 白黒フィルム HP5 PLUS400 35mm 36枚撮り 1574577
 

Leica Summilux 50mm F1.4 ASPH. レビュー

描写の所感としては、従来までの球面の柔らかいテイストを残しながらも、より鋭敏でコントラストを増加させており、非球面による収差の低減、そしてなだらかで霧に包まれたような Bokeh は素晴らしいとしか言いようがない。

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開放からシャープで、絞りの変化には依存しない。日中でも夜間でも気にせず使える。

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大谷採石場跡は相当の暗さであったが、大口径の強みが発揮できた。

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石切場

Favorite Place

現行モデルのため焦って手に入れる必要はないだろう。機会があれば是非楽しんでもらいたい。

 

Ferrania P30 レビュー

FILM Ferrania社はイタリア北部のフィルム会社で、1917年の創立以来一貫して写真、映画用にフィルムを供給している。P30はもともと映画用のフィルムだったものを静止画(Still)用にしたもので、1960年代の復興版として再発されている。残念ながら日本での取り扱いはないが、本社のオンラインストアから入手は可能である。

今回上野・浅草を中心に撮影してみた。機材はLEICA M4-PとELMARIT 28mm ASPH。以下所感などを述べたい。

Ferrania P30

ISO 80ということもあり、粒子が非常に細かい。撮影日が曇り空であったため、スカイツリーから眺める遠景に霞がかかりなんともシネマチックな描写である。

Skytree Cafe Tokyo

ISO 80は通常ならば室内撮影には向かない。この時窓から差し込むディフューズされた光が大変美しく、 開放F2.8 1/60で撮影した。ELMARITの性能によるところもあるだろうが、光の描写、シャドーの表現力は見事である。

Ferrania P30

日本への輸入は輸送費などを含めトータルで1本あたり2000円近くになる。しかし自家現像が可能な事、大事なシーンを少し違った雰囲気で撮影されたい方には良い選択肢になると思われる。機会があれば是非。

 

追記: 

マニアックな話になるが、Flickr Ferrania P30のカバーフォトに私の写真が選ばれた。

Ferrania P30 | Flickr

備忘録もかねて撮影状況を記録しよう思う。

外は曇り空だが明るく、露出でいうとISO100, 1/125 f4-5.6程度の、なんとも天然のディフューザーがかかっているような天気だった。上野から歩いてスカイツリーを目指す。

時刻は11時を回ったところで、チケット売り場はそこそこ混み合っていた。数分並んだ後エレベーターに乗り込む。秒速4mというスピードで展望台にはあっという間に到着した。

エレベーターの扉が音もなく開いた瞬間、ドーナツ状に張り巡られた窓ガラスから差し込む、柔らかな光に包まれた展望台ホールが現れた。辺りを見回してから隅田川の見える方角へと進む。窓に近づくにつれ東京の、積み木のおもちゃのような街並みが目の前に広がる。撮影を続けながらホールを回る。スカイツリーカフェの前を通り過ぎる時、綺麗に並べられたグラスやらボウルやらが光に反射して、美しい、と感じた。

撮る瞬間、は理屈で説明できない。ただ美しいと感じた。それで露出を1/60 f2.8に設定し、カメラのシャッターを切った。P30はISO 80のため、予想ではかなりアンダーなネガになると思ったが、窓からの光のみが強調され印象的な写真になった。ちなみにこの後すぐに団体客が目の前を横切ったため2枚目は撮れなかった。 

このような感覚、撮る瞬間を逃さず撮るということ、大切にしたいと思う。


 

焦点距離28mmと35mmの使い分け

28mmと35mmの使い分けについて考えてみる。

私は間違いなく35mmの画角が好きで、これまで撮影した写真の9割以上は35mmのレンズで撮影されたものである。これだけ35mmレンズを使っていると自然に画角の感覚が身につくため、今はカメラを構える前から空間に35mmのフレームをイメージすることができるし、もちろん失敗もしない。

ヒトが普通に見ている画角は50mmとか35mmであるとか言われるが、私は35mmが自然に感じる。一方28mmは私にとって大変広い画角で、やや違和感がある。しかしながら魅力的な画角で、構図が決まった時の達成感というか喜びは他の画角では味わえない。

今回、28mmと35mmそれぞれの画角について主観を述べるとともに、使い分けについて改めて模索してみたい。

焦点距離28mm

50mmが標準だった時代、28mmは広角、それも今でいう超広角ぐらいの認識だっただろう。現代ではGRやスマホのレンズがそうであるように、標準レンズと呼んでも差し支えなくなっている。

それでも28mmの特性を意識して撮影すると、その絵は明らかに標準とは呼べない、特別な広がりを感じる。 28mmレンズで写し出された世界は現実と非現実のちょうどギリギリのラインにあり、確かに自分はこの場に居たのだけれど、こんなに壮大な景色だったっけ、という感じである。35mmではこのような感じは受けない。

Tokyo Night

21mmや24mmほどではないが、それでも近接時には十分なパースがあり、被写体を印象付けることができる。

Rainy Day

さらに被写体の側に消えゆく、それでいていまだ生命の源を感じさせる柔らかな光をその広い画角で優しく拾い上げることができる。

Inside the Tokyo Skytree

さらにメーカー問わず同じF値ならば28mmレンズは35mmレンズより安価である。またサイズや重量も小さいものが多い。例えばライカエルマリート。現行モデルは果てしなく小さく描写も良く、35mmに比べ安価である(記事掲載現在)。

 

焦点距離35mm

35mmが広角に分類されていた時代もあったが、現在ではもはや50mmと並ぶ2大標準レンズだろう。

35mmの最大の特徴はその万能性にある。引けば広角、寄れば望遠、とまさにドキュメンタリー、スナップからポートレートまで大抵のものは35mmで撮れる。そしてある種の素直さが心地よい。冒頭記した通り、私にとっては自然に遠くを見ている画角に近く、見たままを写しやすい。

Divine Nature

M4以降、0.72のライカにおいては35mmフレームが最も視認しやすい位置にあることも見逃せない。50mmフレームは全体に対してやや狭すぎるため何か損している気になるし、28mmフレームは眼鏡使用時には周辺が視認しにくい。

問題点らしい問題点はないが、あえて言うならばその素直さと使いやすさが写真1枚の価値を下げる恐れがある。前述の28mmにおいては構図やパースに気を使うため撮影毎にやや緊張を必要とする。それゆえか、1枚あたりの写真にある種の重みができる。

もちろんこれは人によりけりだが、記録写真を撮りたいのか心情記録をしたいのかである程度メリハリをつけて撮影しないと散漫にフィルムを消費することが目的となりかねない。

One morning with a friend

まとめ

写真は引き算という言葉がある。実際、主張したい対象を切り抜く事で写真は意味を持ち始める。そういった点では焦点距離の長いレンズほど有利である。

参考までに、次の写真はエルマリート90mmで撮影したものである。

The person you're waiting for...(Tokyo station)

都会の喧騒の中、誰かを待ち続ける女性像をイメージして撮影した。もちろん被写体の許可はとってはおらず、モデルでもない。偶然に出会ったシーンである。

もしこの時カメラに装着されたのが28mmのレンズであったならばおそらく撮影できていないだろう。同じ構図なら被写体に相当接近しなければならず、ひょっとしたら不審者扱いで警備員のお世話になったかもしれない。

35mmならばもう少し引きで、少なくともパーソナルスペース内に入ることなしに似た構図の写真が撮れたかもしれない。

切り取りたい対象がはっきりしている時、もしくはその予感がする時は、やはり35mmが万能かなと思う。

28mmは当たれば大変生き生きした、躍動感あふれる写真が撮れる。相当な技術が必要であるが、その可能性は35mmよりもはるかに多い。そして28mmを使用することで、それまでマンネリだったカメラライフに光が差し込むことは間違いないし、また技術も上がるだろう。

私は最初GRで28mmを勉強した。面白い時もあればそうでない時もあった。納得する写真は100毎中数枚あれば良いほどだが、画角やパースについて学ぶきっかけになった。

28mmか35mmか、結論は時間と経験が決める。是非2つのレンズを使っていただきたい。