Cure of GAS

Castle Rock Photography

日々について淡々と書きとめてます。

ヨーロッパ周遊記

ヨーロッパへ持参したカメラはHasselblad 500C/M、Rollei 35そしてデジタルはGRII 。

カメラの選択には1ヶ月かかった。

荷物は出来るだけ少なくしたいが、中判でも35mmでもフルサイズデジカメでもGRIIのようなコンパクトサイズでも撮りたい、などなど欲は尽きない。まあよくある悩みだ。結局本能にしたがって上記の組み合わせとなった。

フィルムは現地で買うことも考えたが、以前まとめてB&Hで輸入したものがかなり残っていたので30ロール程度をジップロックに入れてバックに詰め込んだ。それでもかなりの量である。

so far away

フィルム写真で一番心配なのはX線検査である。

経験上、2回程度ならばフィルムに影響はないと知っていたが、今回は空路の移動が多く、照射回数は最低4回程度となるため不安は募る。

成田空港からスキポール空港

成田空港ではなんとX線を通さずに無事に通過できた。女性検査員の方にフィルム入りの袋を見せると、あーといった感じで、

「目視確認したのでそのまま通過して下さい」

と言われた。さすがカメラ大国日本。素晴らしい。

それから11時間のフライトを経てオランダスキポール空港到着。トランジットで当然のごとくX線検査があった。やはり成田同様ジップロックに入ったフィルムを見せて照射無し通過を期待したのだが、有無を言わさず機器に通された。その後、保安員に呼び出された。

「これはあんたのカバンか?」

「そうだ」

「Open」

ヒスパニック系の真面目そうな青年だった。どうもハッセルの内部に麻薬か爆発物が隠されていると疑っているようだ。特殊な器具でハッセルの表面をナメるように検査する。もちろん何も反応はない。そして「OK」とだけ言われて無事ゲートを通過した。その後スタバで休憩してドイツのミュンヘン空港へ。

ドイツ入国

ドイツ入国時は荷物検査はないためX線は免れた。ミュンヘン空港近くのホテルで1泊してから翌日ヴェニスに向かう。

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Rollei 35

ヴェニスまで空路で向かうため、ドイツ出国時に再びX線検査があった。もうほとんど諦めていたのでダメもとで鼻立ちの整った若い女性保安員にフィルムを見せながら事情を説明すると、ISOはいくら?と聞かれた。

これはうまくいきそうだ。そこで 400 と答えると初老の男性を連れてきた。

話が通るかと思いきや、有無を言わさずフィルムを機器の中へ放り込まれた挙句、個別に呼ばれ、カバンを開けてカメラを見せろと言われた。

スキポール空港に続いてこの時点でかなりウンザリしていたが仕方なくハッセルとローライを目の前に置く。

ちなみにRollei 35はドイツ製。それを見た初老の保安員が少しニヤけたのを私は見逃さなかった。そしてやはり特殊な機器をナメるようにカメラに当てる。もちろん問題なし。立ち去ろうとすると妙な質問をしてきた。

「このフィルムはどこで買った?」

「日本」と私。

「 1 個いくらくらいだ?ユーロで答えてくれ」

これは世間話ではなく、こいつは本当にフィルムカメラでフィルムを使って撮っているのか、その確認だろう。麻薬の運び屋ならフィルム1個の値段を答えられないはずだ。

仕方なく頭の中で円ユーロ換算するがいきなりなのでかなり難しい。しかもフィルムのブランドや種類によってかなり幅があるではないか。とりあえず

「8ユーロ(およそ950円)」と答えたのだが、

「ノーッ!!」と即答された。ドイツ人らしい自信に満ちた返答である。

高いのか。しかしドイツ国内のフィルムの相場なんて私が知るわけがないじゃないか。それで「4ユーロ(500円)」と答えると、

「ノ、オ、アー、イエス(ヤー)」と口ごもった。

すかさず「日本じゃフィルムは高いんですよ」と伝えるとなぜか笑顔で両親指を立てて「OK」と言われ終了した。全く。。飛行機はヴェニスを目指す。

ヴェネチアヴェニス

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Venezia 上空 / Rollei 35

常夏のベネチアに到着後、すぐにハッセルを手に写真を撮り歩く。いずれ沈むかもしれない奇跡の街。フィルムに残しておく十分な理由だろう。

Venezia

 

Venezia

Venezia, Italy

 

ミラノへ

翌日ミラノまで陸路で向かう。

列車内ではひたすら車窓からの景色を眺めていた。葡萄畑だろうか、牧歌的で心が和む。数時間後、ミラノ中央駅へ到着した。

Milan Central Train Station

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Milan / Rollei 35

ミラノで1泊し、スイスへ再び陸路で目指す。アルプスの連なる雄大な景色へと移り変わる様に我を忘れて、飽きる事なくシャッターを切る。

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車窓から

ジュネーブ

ジュネーブに到着。ホテルに荷物を置いて近くを歩き回る。翌日は車でレマン湖をドライブする。大変美しい。こんなに雄大な景色を眺めていると日本でいつもギスギスしている自分(そして人々)は一体何者なんだろうと考える。

Château de Chillon (Chillon Castle)

 

帰路へ

スイス出国時、最後のX線照射を受けた。ここでも「ISOは?」と聞かれたが、ISO4000まで平気と言われ機器に通された。飛行機はド・ゴール空港を経て羽田を目指す。

 

 X 線の影響

成田空港で照射を受けなかったお陰で、合計3回に止める事ができた。帰国したその足で銀座のラボにカラー現像を依頼する。数日後仕上がったネガをみても特にダメージは感じられないが、数枚の写真に通常なら起こりえない現象、白もやや白線が見られた。

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4秒開いた。白いモヤが確認される。

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下方に水平に横切る白い線が見える。

肉眼ではこの程度だが、CineStillフィルムをSilversaltさんへ現像依頼した結果、かなり興味深い返答が返ってきた。

ネガの濃度(fog)が高い、X 線や非常に暑い場所にフィルムを置いていませんでしたか、とのこと。素晴らしい。さすがプロ中のプロ。数値として出されるとやはりX線の影響はある、と考えられる。

ちなみにX線をうまく避ける方法は ISO値を聞かれたら6400と答える事、そして(事実でなくても)自分は職業的フォトグラファーのためリスクは避けたい、と伝えれば良いとアドバイスまで頂けた。

旅の総括

正直なところ、海外に重たいフィルムカメラを持っていく、さらにフィルムの扱いに気を使う事はストレスであった。旅、特に海外旅行となると持っていくカメラやレンズに悩むのは当然で、また選択を誤ると疲労で旅が台無しになる。

Web を調べると当然のごとく、軽いのが良い、コンパクトが良い、レンズは広角1本で良いなど色々なアドバイスがある。しかし個人的には自分が本当は何で撮りたいのかを優先する事が大切だと考える。

私があの重く扱いずらいハッセルを持って行ったのは単純にハッセルで撮りたかったからで、6×6のスクリーンから見える美しい街並や景色を独特のボシュんという音で切り取ってみたい、ただそれだけのために麻薬の詰まった箱と間違えられても持参した。

いくつかの出会いもあった。ハッセルで撮影していると若いカップルに一眼レフで写真を撮ってもらえないかと頼まれた。

湖で撮影しているとフランス人の老夫婦に撮影を頼まれた。構図を意識して奥さんのスマホで撮影。良い感じの老夫婦だった。私もいつかこうなりたい。

フィルムにこだわる理由

今回旅行に出る前、およそ15年前にニューヨークへひとり旅した時のネガが見つかった。

スキャンしてみると見事な景色が色褪せぬまま存在していた。同時期に撮ったoptio s60というデジカメの画像は現在のスクリーンでは親指ほどの大きさの解像度しかない。

まだSDカードのバイト数が少なく、数多く撮るために画質設定を400ピクセル程度のサイズにしていたためだ。

当時のモニターではこれで十分であったが、現在の標準的なモニターでは引き延ばすことも不可能だ。またハードディスク間の移動によるデータの劣化も起こっている。

それをみた時、やはり大事な写真はフィルムで撮ろうと決めた。フィルムで撮っておけばその時代に適したスキャンのサイズでいつでも閲覧可能だからだ。

さてと、次はどこへ、そして何(カメラ)を持って行こうか。


Rollei 35 レビュー

ヨーロッパ周遊に Rollei 35 を持って行ったので、旅カメラとしての実地レビュー。

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Rollei 35 Germany

Rollei 35シリーズはいくつか種類あるが、これは Carl Zeiss Tessar 40mm F3.5 のベーシックなモデル。とにかく軽く、小さい。そして素晴らしい描写をする。この他にF2.8のSonnarやトリオターもあり、それぞれ描写傾向がやや異なる。

Galleria Vittorio Emanuele II

旅の間、文字通りポケットに忍ばせて街歩きをしながら気になった物や瞬間を切り取った。開放F3.5は決して明るくないレンズだが、ミラーショックが無いため、ISO400でSSを1/8にすれば大抵のシーンで手持ち撮影できた。

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Fish market

 

しかし露出はいいとして、問題はやはりピント合わせだろう。

このカメラの特徴はコンパクトさと優秀なレンズの他に何よりも玄人好みのピント目測という点であることは否定できないと思う。レンジファインダーの二重像やレフのピント合わせとは大きく異なる、距離による測定。信用できるのは己の距離感のみ。

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F16

とはいえ遠景は問題ない。ISO400  F10  1/140で 1 m から無限遠までカバーする "写るんです理論(ただし焦点距離 32 mm の場合)" と同じく、ISO 400 1/250 F16 でピントを 3 m 程度に合わせれば 1 m から無限遠までピントが合う。ファインダーを覗いて構図を決めてシャッターを押せばよい。

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F16

しかしやはり夕暮れ時など絞り込めない状況ではこの方法は使えない。前述の距離感覚のみが頼りになるが、どういうわけかこの作業がやたら楽しい。

撮りたい被写体を見つけたら標準の狭間の焦点距離 40 mmの画角をイメージしながら距離を目測する。慣れてくると被写体を見つけた時点で左手はピントリングを回している。 いやむしろピントリングを先に回して距離をセットし、体はその位置へ移動するといったほうが良いだろうか。まさに撮影者がカメラを操作するのではなく、カメラが撮りたい被写体へ撮影者を誘導する。そんな擬人化が起こる。

Restaurant Les Armures

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F4

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F3.5

今回の旅に持参するカメラとして 35mmフォーマットはいくつか候補があった。しかしハッセルを持って行く関係でどうしても重量制限がある。消去法でRollei 35になったわけだが帰国してネガを見ると全く後悔が無い。とにかく素晴らしいカメラである。

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Geneve

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Geneve

 

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 皆さんも是非。

Rollei 35 silver

Rollei 35 silver

 

 

 

CONTAX G2 レビュー

T3、T2に引き続き、今回は最終回ということで CONTAX G2 について簡易レビューしてみたい。

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CONTAX G2

14年前(2005年)に製造が終わった製品なので今更感はあるが、一応簡単に説明しておくと、G2はGマウントレンズ交換式AFカメラで操作は全て電子化されている。一応レンジファインダーの部類には入るとしているが、ライカとは180度異なる。そもそも2重像のスピリットイメージもない上に、レンズは全てAF仕様でマニュアル操作できない。それでもその天井を削ったスタイリッシュなフォルムは like a LEICA(ライカのような) と表現しても差し支えないだろう。

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電子化という点を除けば、軍幹部のSS調整ダイヤル、レンズに絞りリングが付いていることなど往年のフィルムカメラの趣は十二分に残っている。ファインダー越しに合焦を視覚的に確認できないのがやや不満点ではあるが、AF精度は概ね良好で、合焦すれば素晴らしい絵となる。

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Zeiss Biogon 2.8/28 T*

カメラも素晴らしいが、特筆すべきはやはりこの素晴らしいGマウントレンズ群ではないだろうか。これまで使ってきたZeissレンズのどれとも似つかない写りをする。例えば Biogon 28 mmはMマウントでも使っているが、GマウントのBiogon は何か違う。線が太いだとか、粘りがあるとか、言葉にすることは可能だが、あえていうなら画の存在感と重厚感がMマウントと異なる感じを受ける。

Sonnar 45 mmも大変素晴らしく、このレンズを使いたいがためにG2を手にする方もいるようだが、その気持ちよくわかる。開放F2での合焦点のキレは見事で品があり、Bokehはトーンを残しながらもなだらかにつながっていく。

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Sonnar 40mm

T3, T2と使用してみて、個人的には一番しっくりときた。手にした質感、ホールディング、駆動音など、少なくとも現状はライカと同じかそれ以上のフィーリングを楽しんでいる。レンズの種類が少ないのも良い。邪念に囚われることがなくなり撮影に集中できるだろう。

 

 

機会があれば是非。

CONTAX G2

CONTAX G2

 

 

CONTAX T2 レビュー

前回の T3 レビューに引き続き、今回は CONTAX T2 についてレビュー。

所感としては、チタン外装のためか、ボディはかなり頑丈で、見た目より重い(およそ 300 g)。サイズや重さでは T3 が圧勝だが、個人的にはホールド感は T3 よりも良好と感じた。

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沈胴式レンズで電源と同時にレンズがニュイイッとせり出してくる。レンズ鏡筒には絞りリングがあり、回すと絞り羽根が実際に動く。これは T3 と大きく異なる点で、なんというか直感的な操作ができるので大変好ましい。

さらに T3 で煩雑だった各種設定もT2の方が簡単にできる。ユーザビリティとサイズをトレードオフしたT3を選ぶか、マニュアルの操作感を残した T2 を選ぶかは完全に個人の好みによるが、これまで軍幹部のダイアル操作に慣れている方には T3 よりも T2 をオススメしたい。

レンズはSonnar 38 mm F2.8。個人的には、このレンズの焦点距離が T2 の最大の魅力であり特徴だと思う。

描写は独特な、個性的な写りをする。F2.8で最短 70 cmのため Bokeh などを狙うのは難しいが、それでも立体感のある写りをする。コントラストは T3 の Sonnar より低めで、モノクロフィルムと相性が良いと感じた。

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問題点としては、AFがイマイチで、よく外す。これは T2 ユーザー共通の悩みのようでWeb上では “T2ピント合わせのコツ” なるものが散見される。 ファインダーを覗くと実線と破線のフォーカスポイントがあり、破線は近距離用だが遠距離撮影でも破線を被写体に合わせると上手くいくらしいが、やはり外すときは外す。しかし日中で絞って街並みや風景を撮るのならば全く問題にはならないだろう。

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目に合わせるなど、詳細な合焦は難しい。

カメラの質感は非常に高く、所有する価値や喜びはあると思う。しかし一応30年近く前の電子機器なのでプライス的なもの(高騰中)と検討する必要があるだろう。海外レビューやフォーラムを読むと皆 T2 や T3 に大変興味はあるが故障時に対応できるストアがないため尻込みしているとのこと。この点日本は大変恵まれており、長野県のリペアサービス諏訪さんは今でも現役でCONTAX製品の修理を行っている。年々パーツ等が減って修理をお断りすることもあるらしい。そういった意味ではCONTAXのカメラは今買い時なのかもしれない。

 

機会があれば是非。

京セラ Contax T2 チタンシルバー 【定価120,000円】

京セラ Contax T2 チタンシルバー 【定価120,000円】

 

CONTAX T3 レビュー

チタン外装されたボディに Zeiss の銘玉 Sonnar が装備された超プレミアムコンパクトカメラ。友人の妻の親父さんが山岳マニアでカメラを沢山持っておりこれはその1台。

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CONTAX T3

以前から気にはなっていたが、今回試用できる機会に恵まれたのでレビュー。おまけとして同じスペックのSummaron 35mm F2.8との画像比較も試みた。

本当に小さく軽い。しかしチタン素材のため重厚感は十二分に感じることができ、いい意味で予想を裏切られる。

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CONTAX T3

電源スイッチはついておらず、ボタンを押しながらダイヤルを P へ回すとギュニュイイッといった感じでレンズが飛び出してくる。基本はPモード、そして絞り優先モードのみでISOはDXコードの自動読み取り、シャッタースピードは露出に応じて自動的に設定される。

AF 精度はかなり良好で、少なくとも試し撮りした(フィルム2ロール)において、ピントの中抜けは0%であった。

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CONTAX T3 / Fujicolor 100

画質についてはまあとにかく素晴らしいの一言。本当にこんな小さなレンズからなぜこんなにリッチで解像度の高い画像が生まれるのかわからない。さすが Zeiss。そして最短35 cmも驚異的で、おまけに近接撮影でも画像の破綻がない。まさに"寄れるは正義"を地で行く名機。

 

せっかくなので同スペックのLeica summaron 35mm F2.8と画像比較をしてみた。フィルムはilford HP 5 PLUS、絞りは両者ともに同じ値、露出についてはT3はSSを設定できないため、測光時にT3で表示されたSSの値をLeica M6に設定して撮影する形とした。本当は三脚を使いたかったがそこまでガチでやる必要はないと思い、全て手持ちで撮影した。

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CONTAX T3

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Summaron 35mm F2.8

絞りF4の作例。正直見分けがつかない。両者ともにピント面の立ち上がりを含め素晴らしい解像度である。しかしSummaronの方がはるかにオールドであることを考えると、これはT3の小さなレンズの性能よりも、むしろライカレンズ素晴らしさをあらためて証明する結果となった。

とはいっても周辺を隈無く調べるといくつかの差異はある。まずT3の方が周辺までキッチリ描写しており、明らかに性能の高さがうかがえる。一方でSummaronは周辺がやや緩い。F5.6あたりでも緩さは残る。よって撮影画像を俯瞰で眺めてみるとT3の方が現代的にビシッとキマっている。

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T3 | Summaron(右)

F5.6 :

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CONTAX T3

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Summaron 35mm F2.8

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T3 | Summaron(右)

F2.8 :

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CONTAX T3

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Summaron 35mm F2.8

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T3 | Summaron(右)

暑い日で我慢できずに思わずグイッと飲んでしまったので、2枚目はコーヒーの量が減っているが、開放での作例ではBokehはSummaronがややうるさく、T3が素直な描写に感じる。何れにしてもやはりSummaronの方が周辺は緩い。

ただ個人的にはライカレンズの魅力はこの辺りにあるのかな、と思う。つまり現実をあまり写しすぎず、観る者の想像力に委ねる、といった感じで。周辺を曖昧にして主題(中心部)を浮き上がらせてドラマチックに表現するように。

まあとにかく1週間借りて例のごとく良い値段で譲ってもらえるという話になったのだが、今回は丁寧にお断りした。若者を中心に人気の機種で実際市場価格はM型フィルムライカが買えるほどになっているので悪い話ではなかったのだが、なぜかしっくりこない。最高に小さくて最高に画質が良く、自動で撮影してくれるのにも関わらず、個人的には面白さを感じなかった。まあ露出補正するにもボタンを押して液晶画面で行うので操作が少し面倒ということもあったが、どちらかといえば相性の問題である。

 

機会があれば是非。

 

FILM CAMERA STYLE vol.4 (エイムック 4291)

FILM CAMERA STYLE vol.4 (エイムック 4291)

 
CONTAX T3 (チタンブラック)

CONTAX T3 (チタンブラック)

 

Leica Summicron 35mm F2 ASPH. レビュー

現行のフードねじ込み式の前のモデルで、4世代目。非球面レンズ採用とあってやや重量は増したが、相変わらずのコンパクトさで取り回しに困る事は全くない。

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描写を一言でいい表すと、とにかく優秀。オールド感は全く無く、しっかりと、真っ直ぐと結像する。モノクロ、カラーどちらでもトーン、発色ともに良好で、本当に全く問題点が見つからない。

 

Western style house in Japan

 

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旧岩崎邸庭園

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イカは全てそうだが、プライスの問題がクリアできるのならば、Mマウント35mm の決定版として是非オススメしたい。

しかし実際のところZeiss Biogon 35mmやノクトン35mmの方が気兼ねなく使用できる。こちらも是非オススメしたい。

 

 

 

ストリートフォトについて思う事

ストリートフォトを定義するのは非常に難しいが、色々調べると基本的にはヒトと人工物の組み合わせが写っている写真をそう呼ぶらしい。

ただし人といっても自分の家族や友人ではダメで(それらはポートレートや記念のスナップ写真になる)、全く赤の他人、しかも表情から喜怒哀楽が感じられるもの、つまりできるだけエモーショナルなものがより高く評価される。

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Scotland

もちろん後ろ姿でも構わないが、いわゆる"背中で語る"写真は相当にレベルが高いだろう。私には撮れそうにない。

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Scotland

そもそも私はストリートフォトはほとんど撮らない。もちろんライカユーザーなので興味がないわけではない。かつての巨匠、ブレッソンやアーウィットなどのストリートフォトを見て心を打たれ、よしいつかは自分も、と思ったことは何度もある。

しかし現実的な話としてこのご時世、人様の顔を被写体に無断で撮影すること、またそれを発表することはかなりの覚悟(裁判沙汰になったとしても上手く切り抜けられる)が必要となり、そもそもほとんどの出版社やWebサイトは少なくとも建前上では被写体の許可なしにそれらを掲載することを禁じている。後ろ姿は問題ないが、横顔は微妙との話も聞いたことがある。街並みを撮っていたらたまたま人が写り込んでいたという解釈もありだろう。何れにしても撮られた写真に作品性、芸術性がありそれを説明できれば被写体(撮られた人)も納得するとは思う。

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後ろ姿なら問題ない

しかしまあ、正直な話、極度の緊張や危険を強いられてまで人様を撮りたいとも思わない。

数年前1人旅でパリを訪れた時、夕暮れ時に何気なく街並みの写真を撮っていたら100 m先にたむろしてた集団のうち1人が急に何やら叫び、こちらへ向かって来た事があった。

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この後、左側から男が現れこっちへ向かって来た

もちろん彼らを被写体として撮ったわけではない。普通の観光客と同じようにパリの美しい街並みを撮影していただけに、かなりびっくりしてしまった。旅先で、おそらく移民の人達だろう、言葉も通じぬ相手(通じたとしてもわかってくれなさそう)にトラブルは御免なので、EOS 5D MK IIとDistagon 35mm F1.4を片手に猛ダッシュで逃げた。後で知ったのだが、撮影していた地域はパリ10区で、治安でいうとまあまあ注意〜観光客は特に注意レベルの地区だったらしい。

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NYC

ニューヨークでは夜に地下鉄内で写真を撮ろうとしていたらドレッドヘアの190 cmはあろうアフリカン・アメリカンが近づいてきて ” Get out ! F**kin’ Chinese ! (どけよ、ク○中国人!” と叫ばれたこともある。 そもそも私は日本人なのだが、そんなことより当時HipHop が好きだったのでリアルなスラングが聞けた事を嬉しく思い、本当にこんな事言うんだ、とやけに感心したのを覚えている。

Central Park, NY

スコットランドで駅構内の写真を撮っていたら警備員に「なんでお前は構内の写真ばかり撮っているんだ?もちろん個人利用だろうな?」と注意された。

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Scotland

 

日本人は、特に女性は自分の素の顔の写真を撮られたいとは思わないだろう。顔をツルツルに、宇宙人みたいに修正してくれるアプリが日本で流行るのもそのためかもしれない。外国では人々は写真を撮られるのがそれほど嫌ではないらしいが、やはりそこは多民族国家。色々なバックグラウンドがあり、ひょっとしたらインターポールにお世話になっている者もいるだろう。パリで追いかけてきた彼も、怒鳴ってきた大男もひょっとして辛い過去を抱えているのかもしれない。

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LONDON

先日ふと見上げると青空がとても綺麗だったのでローライにモノクロフィルムを詰めて撮影に出かけた。三脚を使って落ち着いて構図を練る。ブライトスクリーンに交換したてのファインダーから覗く世界は大変美しい。鳥が羽ばたくと同時にシャッターを切る。心は大変落ち着いている。

A watchtower

ストリートフォトは見るのは好きだけれど、やはり自分は風景・静物を撮るのが好きなのかも。

皆さんはどうですか。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>追記

私自身は写真を撮られる(被写体にされる)のが好きかどうかと尋ねられると、やはり状況と相手(撮影者)によると答えるだろう。疲れている顔、アンハッピーな顔、アングリーな顔、それらはどれも撮影者にとっては魅力的に写るかもしれないが(私の顔にそんな価値があるとは思えないが)、それがある種の芸術性を帯びない限りは、気持ち的にはNOである。

また撮影者も、例えば故木村伊兵衛氏に被写体に選ばれたのなら喜んで身を差し出すだろうし、その他、プロアマ問わずその撮影者の作品が素晴らしいと思ったのならYESである。

先日東京散歩がてら写真を撮っていると長い望遠レンズを持った若い男性と出くわした。皆さんもご経験があると思うが、言葉をかけるわけではないにしても、こういうシチュエーションでは往々にして被写体がややかぶる事が多々ある。とりあえず私が写真を撮ろうとすると、その背後から目線(正確にはレンズ目線)を感じた。それで邪魔かなと思い撮影をやめて横に避けると彼も撮影をやめた。撮らないのかな、と思い再び被写体のライン上に立つと、彼もカメラを構えるではないか。自意識過剰な10代女子のようで申し訳ないが、私の後ろ姿が被写体にされている、と感じて正直嫌な気になった。それでそそくさとその場を立ち去った。あの時一言 "カメラを構える後ろ姿を撮らせてもらえませんか?”と言ってくれれば喜んでOKサインを出しただろう。しかし現実的に声かけが難しいことは私自身よく分かっている。

まあ少なくとも被写体に悟られずに撮影する技術は身につけたほうがいいだろうし、こういう時はおどおどせずにドッシリと構えて1枚だけ撮るべきである。

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パリの中華料理屋にて

もちろん、私も修行中です。

 

coalfishsholco.hatenablog.jp

 

ポートレイト 内なる静寂―アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集

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Personal Exposures

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