Leica M5 レビュー
M5は他のMモデルと比べやや異質だ。まずそのデザイン。なんともモダンな佇まいで、これは良い意味で新しい時代のライカを予感させるものであったが、そのやや拡大した大きさやのっぺりとしたデザインがライカパトロンとも呼ばれる熱心なユーザーから反発を買い、M6で原点回帰となった。よって生産台数も少なく、まあ不運なモデル、と言えばそうなる。
しかしながらその独特のデザイン。個人的にはバウハウスの建築や家具に通じるモダニズムを感じさせる。平面的なデザインと機能美。現代基準でも十分に ”ナウい” 。フォントも現代的で、さりげなく、これライカなんだ、と主張するところがニクい。
機能面で注目すべきはまずその露出計。直接見ることはできないが、巻き上げと同時に登場するセンサー腕木式。その後のライカCLでも使われている機能で、精度は比較的高い。そしてシャッターダイヤルがボディ前面にやや突き出ているためファインダーを覗きながらの露出調整が容易に行える。
個人的にはほぼ目算で露出を測ってからの撮影スタイルのためあまり恩恵は受けなかったが、一般論として使い勝手、実用性は大変高いだろう。
しかし個人的にはこの露出計がシャッターフィールをスポイルしているかなと思った。
というのは、システム的に巻き上げと同時にセンサー付きの腕木が迫り出してくるのだが、当然これは撮影時に仕舞い込まなければならない。そのため、シャッターを押し込んでいくと、それこそ物理的な感覚としてニョイッと腕木が仕舞い込まれていく振動が指先に伝わり、それからチッとシャッターが下りる。このテンポ感にどうも馴染めなかった。
通常ならば被写体にピント、チッ、だが、これは被写体にピント、ニョイッ、チッ、とワンテンポ遅れてしまう。どうにもタイミングが悪い。しかしこのワンクッション入る代わりに、シャッター音とショックはこれまで使ってきたどのライカよりも静かである。
"完璧なカメラなど存在しない"
飽きっぽい私にとって Gear と自分とを繋ぐまじないのような言葉。
もっとも、それらダウンサイドを差し引いても、露出計の使いやすさ、デザイン、そして個人的に大好きなセルフタイマー搭載と、これ1台あれば撮影に困ることは何もないだろう。キヤノンの古いLマウントレンズと共に良き思い出ができた。
このM5、発売から数十年して改めて良さが見直され、一時期かなり価格が高騰したようだが、やはりいっ時のブーム。幸いなことに私が入手した頃はその荒波は鎮まっていた。
現在では前回のM4-P同様あまり市場では見かけなくなった上、露出計やファインダーのバルサム切れ、シャッタードラムの破損などの持病を抱え、修理対応も難しいのが現状。物好き以外はあえて選択肢に入れないだろう。
私はその物好きの一人だ。
機会があれば是非。