Cure of GAS

Castle Rock Photography

日々について淡々と書きとめてます。

個人輸入にまつわる色々な思い出

思えば昔から個人輸入を頻繁にしてきた。書籍やレコードなどの小さいものから服や楽器に至るまで。今は日本からでも外国のAmazonで手軽に購入できるが、20年前の当時は現地のショップにアクセスして送ってもらう必要があった。そんな思い出について語りたい。

ギター編

一度、どうしても欲しいギターがあったのでオランダから輸入したことがある。この時は輸入代理店を通じた。理由は高額なこと、保証のこと、そしてネックの部分に使われている素材がワシントン条約で規制されているハカランダ(ブラジリアン・ローズウッド)であったことで、万が一破損や輸入ができない場合にかなり面倒なことになると思ったからである。

代理店と数回のやり取りを経て商品は無事に届いたのだが、大きなギターケースを開けてみるとネックは見事に反り返っており(少なくとも日本基準では)、結局調整に多額の費用をかける羽目になった。

Abercrombie & Fitch

アバクロ(Abercrombie & Fitch)が今のように日本で展開される前、一足先に輸入していたことがある。当時はあまり見かけないカジュアルでエレガントなデザインが魅力的で、レディースのセーターなどを注文して、意中の女性にプレゼントしたこともある(ちなみに現在の嫁さんで、今でも着てくれている)。

しかしサイズ違いや色違いの頻度も多く、特にカタログの色合いは彩度・コントラストを高めており、元々原色カラーならそれほど違いはないが、微妙な色合いは完全に別物に変えられていた。濃紺だと思ってたら薄い水色だった、という感じである。 こういう場合、個人輸入では返却する手間が非常にかかるため(現在でも同じで実質泣き寝入り)、しばらくして購入をやめてしまった。

ドラムマシン編

少し珍しいアナログドラムマシン(シーケンサー)をドイツ(大手の楽器店)から輸入した時は色々あった。
まず日本での配達職員(業者名は伏せます)が若者で、外国からの荷物のためかやけに緊張しており、おぼつかない手つき(片手)で荷物を持ち、もう一方の手で受領書を差し出してきた。その瞬間、箱が手元から落ちて玄関前で転げ落ちた。 お互いに唖然としたのを覚えている。

どうしようかと思ったが、頭を何度も下げて謝っている前途有望な若者をみているとしょうがないという気持ちになったし、それにまだ実害(故障した)があるわけではない。 その場はそれで収めて、何かあれば連絡することにして部屋で中身を確認した。

精密機器にしてはあまりに簡易的な梱包(プチプチ1枚のみ)にも驚いたが、それ以上に衝撃だったのがあらゆる部位が手垢でびっしり汚れていたことだ。もはや先ほどの落下事故が霞(かす)んでみえたほどである(結論として動作に問題はなかった)。

中古品(Pre-owned)か、と考えたがすぐに展示品だとわかった。様々な人間が試し弾きした展示品をクリーニングすらせずに送ってきたわけである。もはや新古品と呼んでいいだろう。日本では考えられない。もっともこれはその楽器店の問題であり、ドイツかどうかは関係がない。故障しているわけではないし、新品と言われればそうだ。よって返却することももちろんできない。10万円を超える商品の個人輸入はこれが初めてで、当然嫌な気持ちにはなったが、まあしょうがない。これも勉強だ。アルコールで綺麗にして、楽しんだ。それ以来、購入時はメールで必ずunopened item (未開封品)かどうかを確認することにしている。

カメラの話

カメラ関係で輸入はもっぱら B&H でのフィルム購入が中心になっている。大量買いの必要はあるが、日本で買うよりもはるかに安いし、日本からの注文も多いようでそこは手慣れたもの、注文してから数日で届くこともある。1万円程度なら税金等もかからない。

イカ限定になるが、カメラやレンズについては外国のストアの方が税金を含め、国内よりも安価で購入できる場合がある。
有名なところではウィーンのライカショップ、マイアミのライカストア、香港(いくつか取り扱い店舗がある)、という感じだろうか。為替レート、輸送費、国内での消費税(合計価格×0.6の10%)、を合わせた合計金額を国内最安値と比較検討する価値は十分にある。ちなみにカメラに関税はかからない。

例として至高のアポズミクロン50mmを考える。価格.comではブログ投稿日現在 992,750 円が最安値。最安値と言ってもおいそれとキャッシュで買える価格ではないが、ここではその予算があるという前提で検討してみたい。なおレートはVISA(2.2%)で換算した。

日本 992,750円

ウィーン 7400ユーロ → 952,654円 

マイアミ 8795ドル → 931,925円

香港 52000香港ドル → 710,669円

価格差を強調するために香港のみ非正規店としている。他は正規代理店。価格差は大きい。この額に送料(無料もある)と前述の消費税(総額×0.6の10%)がかかる。

輸入で怖いのは初期不良時の対応と輸送中の事故である。

初期不良について、ライカ正規代理店購入に限っては2年間の国際保証があるため、輸入品でも銀座のカスタマーサービスで無料修理調整が可能である。それ以外の店(大抵は安く売られている)で購入した場合、いくつかの選択肢がある。まず初期不良としてショップへ返品して修理(大抵はドイツに送られる)または新品交換、自腹で国内修理である。

普通の感覚ならば返品一択だが、輸入品のやっかいな点は、品物を輸出させないといけないことで、これはかなり面倒である。こちらが一旦輸送費を払うこと、輸出品として品物を申告する場合に商品価額と品名をそのまま記載した場合、ショップからすると"輸入品"扱いになり、税金を払うことにもなる。場合によってはその金額を請求されるかもしれない。日本ではありえないのだが、海外の商取引は約款が全てである。購入時はこれらのリスクをもらさずチェックしたい。しかし、場合によっては(金額やリスク)国内で修理した方が安くつくこともあり、この辺りはやはり国内購入と同じ感覚は持たない方がいいだろう。

輸送中の事故についてはもちろん保証が受けられるが、いくらまでかどうかは輸送会社次第で、やはりこれも約款が全てである。

正直、これらの手間など諸々をトータルで考えるに個人的には日本のライカ小売価格も法外に高いわけではないと感じている。

参考にしていただければ幸いである。

資金ゼロではじめる輸入ビジネス3.0

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  • 作者:大竹 秀明
  • 発売日: 2019/07/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)