写真家の野辺地ジョージさんが主催する軽井沢フォトフェストに行ってきた。
私の作品が入選したということももちろんあるが(一応1000以上の応募作品から250作品を選出)、それ以上に最近の写欲の低下へ何か刺激が欲しいと思い、軽井沢まで足を運んだ。
軽井沢駅を降りてすぐの場所にある矢ケ崎公園。天気は素晴らしく、青々とした空に浅間山から立ち上る不規則な雲が偶然できた水彩画のドローウィングのようにユーモラスに浮かんでいる。
ここを含め4つの公園内(諏訪ノ森公園、湯川ふるさと公園上流部、追分公園)にはそれ自体がモニュメントのようなサッカーゴール大のディスプレイが点在しており、入選作品はそこに印刷されている。どの作品をどの位置に配置するか、レイアウトは野辺地さんが行っており、それぞれの公園の持つ歴史、自然、空気に配慮されて慎重に構成されている。
印刷はFujifilmさんで、最高の印刷技術で表現された美しい写真が、もう十分に美しい軽井沢の景色にもっと象徴的な意味を与えているように感じる。ちなみにグランプリ受賞者にはX100Vが贈与された。もう欲しくても手に入らない幻のカメラである。
展示作品は皆素晴らしく、私も少しは写真を勉強した端くれとして率直な感想を述べると、とても趣味レベルとは思えない、何だか人生の重みのようなものを感じた。 ここまでくるともうカメラがどうとか、レンズがどうとか、そんなレベルを超えた次元にあるな、と久々に他人様の作品を観て感動した。
このコンテストは軽井沢で撮られた写真限定のため、応募者のほとんどが軽井沢町在住者で、私はかなり例外的だろう。
堀辰雄文学が大好きで、文学めぐりの旅で立ち寄った軽井沢の写真を1点だけ何気なく応募。そもそも私程度の作品が入選されたこと自体が僥倖だが、フォトフェス自体、今回が第1回目ということで、ビギナーズラックと考えることにしている。
まあ、取り壊される前の万平ホテルのジョンレノンカフェの写真が入賞なんて、私らしくロックでいいじゃないですか。
このフォトフェストは5月14日まで行われているので近隣の方は是非参加するのをお勧めしたい。
最後に主催者の野辺地ジョージさんについて
カナダ人の父を持つ日米バイリンガルで、以前はニューヨークの投資銀行でトレーダーをやっていたという異色の経歴である。 1987年の映画『ウォール街』に感化された私のような小市民からすると年棒果てしない証券マンをやめて、30歳すぎてから写真を始め、一般的には不安定だと考えられる芸術家への転身は普通できるものではない。
「人生は一度きりだから、自分の好きなことをしたい」という言葉には説得力がある。
非常に誠実そうな方で、キアヌリーブスばりのイケメン顔からは想像できないほど雄大な景色を撮る写真家。軽井沢へは2年前に引っ越したらしい。
氏はまた、X-photographerとしてfujifilmのカメラを愛用しているが、あんな写真が撮れるなら再びfujifilm、か?などと欲が湧く。やはり私は俗物だ。
帰りの東京行き上り新幹線内は4月からの新生活へ向かう人々でごった返していた。
皆期待と不安を胸に新天地に降り立つのだろう。 車窓から差し込む、いつもより強すぎる夕日を浴びながら、ああ私も何か始めなきゃな、などと考えた。
良い刺激が得られたと思う。