Cure of GAS

Castle Rock Photography

日々について淡々と書きとめてます。

Hasselblad 500C/M レビュー

6x6フォーマットで最も有名な中判カメラ、ハッセルブラッド。80年代から90年代にかけて、およそ100万前後で販売されており、駆け出しのカメラマンが一生を背負う覚悟でローンを組んでいたとのことだが、現在は状態の良いものが当時の 1/10 の価格で手にすることができる。

f:id:coalfishsholco:20200813164435j:plain

歴史的にはハッセルブラッドは1841年に光学産業に参入した。ライカはその8年後である。そして1957年、標準的なコンシューマーモデルである500Cが発売された。1962年に宇宙飛行士のウォルター・シラーが500Cで宇宙空間を撮影したことからハッセルブラッドは急成長したと考えられている。

Jazz bass

それほど中判歴が長いわけではないが、ハッセルブラッドだけは他のカメラと少し違う感覚を覚えた。なんというか、サイズ感や重さが手の中でしっくりと収まるといった感じだろうか、そして細部の作りが大変メカニカルで扱うたびに居心地の良さを感じる。 

Flowers

動作についてはいくつかのルールがあり、ルール違反は罰金として多額の修理費を払う羽目になる。とにかく常にシャッターチャージを忘れずにしていれば問題が起こるリスクを減らすことはできるだろう。

I'm keen on you

そして独特の乾いたシャッター音。ボシュン。静かとは言い難いがなぜか心地よい。ライカのシャッター音とはまた違った揺らぎがある。

 

純正レンズはZeissで、種類も豊富である。レンズシャッター式で、クラシックタイプはCで、比較的新しいタイプはCFと表記される。CFの方がヘリコイドその他取り回しが非常に楽なのだが、セルフタイマーはCにしか付かない。個人的にセルフタイマーはよく活用するため悩みどころである。

Château de Chillon (Chillon Castle)

 おすすめレンズはやはり80mm F2.8。大変コンパクトで明るい。これ一本でどんな撮影もこなせるだろう。ぜひ試していただきたいカメラとレンズ。

特に関係はないが、国内で最も信頼できるハッセルブラッドのお店は新橋イチカメラさん。ハッセルは故障も多く、また安価なものを買うと高くついてしまう。オーバーホール済みを販売するお店で、多少高くても買うのがおすすめ。ぜひ。

www.shinbashi-camera.net

www.hasselblad.com

 

Carl Zeiss Distagon 35mm T* F1.4 ZM レビュー

35mmについてはライカユーザーならズミルックスが最終着地点となっていることに異論はないだろう。そんな中、Zeiss Distagon 35mm F1.4は比較対象として選ばれる代表的なレンズである。

f:id:coalfishsholco:20200209081122j:plain

プライスがズミルックスに比べ3分の1のため、"Poor man's Summilux"と揶揄されがちかと思いきや、全然違う。両方使った感想としてはトータルでディスタゴンに軍杯があがる。

f:id:coalfishsholco:20200209081433j:plain

Zeissの特徴であるマイクロコントラストがディテールを鮮明に描くし、解像度については申し分ない。シグマのようにカリカリではなくそこにはしっかりと湿度がある。しかし私が注目したいのは光の描写である。

f:id:coalfishsholco:20200209082048j:plain

このレンズは中心部の解像度を高度に保ちながらも、拡散された環境光をベールに包んだような優しい光に変える力があると思う。オールドレンズのような柔らかい描写と現代の計算され尽くした光学性能が上手く融合しており、大変品の良い描写をする。ライカが情緒的ならこちらは上品な写り。女性のポートレートなどに最適だろう。もちろんTコーティングもさらに光の描写にゆとりを持たせている。

欠点らしい欠点は見つからないが、やはりそのサイズと重さは、コンパクトなレンジファインダー機には少々ネックとなる。F1.4 35mmの大口径レンズにしては大変小さいのだが、やはりライカMに装着した状態ではややバランスが悪い。カメラを常に前傾させようとする重力に対しては好みが分かれるとこだろう。

Tokyo Bay

スナップ向きのレンズではないし、使用中に手首も痛くなる。しかし撮像は本当に素晴らしい。使わないストレスより使う喜びが上回る、そんなレンズなのかもしれない。ぜひオススメしたい。

Distagon 35mm F1.4 ZE

話は変わるが、かつてEOS 5DMK II を使っていた時、35mmのお気に入りレンズがDistagon F1.4 ZEだった。とにかく明るい。ファインダーを覗いた瞬間から明るいと分かるほど素晴らしいレンズだった。ボディとレンズで2kgを超えるという、今ミラーレス主流のこの時代には考えられない重さだったが、それでもロンドンやパリを歩き回った。良き思い出のレンズである。

f:id:coalfishsholco:20190429233641j:plain

EOS 5D MK II / Distagon 35mm F1.4 ZE

f:id:coalfishsholco:20190429233727j:plain

EOS 5D MK II / Distagon 35mm F1.4 ZE

 

Nokton 35mm F1.2 Aspherical Ⅱ レビュー

思えばフォクトレンダーという会社というかブランドは個性的だと思う。それはかつての富士重工(現 SUBARU )のように、マニアックなニーズに特化した製品づくりをしているように感じる。

イカ純正ではあり得ないスペックのレンズ。ノクトン。35mm F1.2 について少しレビューしたい。

 

鏡筒を含めて、作りは大変良く、触った感触はライカ純正と変わらない剛性感がある。光学性能も中心部は十分に解像しているし、開放であっても許容範囲である。ボケはいわゆるクリーミーボケとは違い荒れてはいるが、背景に気をつければいい雰囲気となる。 

f:id:coalfishsholco:20200810065050j:plain

Portra400

収差はかなり残っている。オールドテイスト。完全に好みの問題だが建築物などの撮影には向かないかもしれない。

難点としてはやはり大きくて重い。レンジファインダーのレンズで 300g を超えるとかなり手首が痛くなる。普段使いには向かず、少し遊び心で持ち出すのがよいだろう。

まあこのように特に(プライスも含め)欠点は見当たらないが、数回使用して手放してしまった。前述したように、遊び心満載のレンズであり、個人的には使用場面があまりにも限られてしまったためである。

しかし、七工匠レンズも含めライカの代わりにはならない。結局は高くつく、かな。

是非お試しあれ。

NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM

NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM

  • メディア: エレクトロニクス
 

 


 

Leica Summicron-M 50mm F2 第四世代 レビュー

おそらくライカMマウント50mmの中ではトータルで最も安定性と信頼性の高いレンズだろう。ライカのブランド価値が実性能価格の30%程度は上昇させていることは否定できないが、そのコンパクトさ、すこぶる優秀な光学性能はレンジファインダーがなんたるものかを再認識させてくれる。

f:id:coalfishsholco:20200222070740j:plain


写りはとにかく実直で質実剛健。F2という無理のない設計で合焦部は驚異的にシャープ。商業プロのための信頼できるレンズ。

Napping

個人的に気に入っている点は組み込みフード。50mmでフードを使うことは滅多にないが、それでもあったほうが良いシチュエーションでは大変便利。

f:id:coalfishsholco:20200124210827j:plain

都庁から

個人的にはボケ味はややうるさく感じた。しかし背景に高周波物体(草や格子など)をいれない限りはそれほど気にはならない。

f:id:coalfishsholco:20200222071608j:plain

Tri-X400

欠点らしい欠点はないが、あえて言うならば素直すぎること。観察者の見たままをありのままにフィルムに焼き付ける。そこにはなんの誇張も欠落もない。英語でいうwow effect(その名の通り、ワォ効果)も無い。

f:id:coalfishsholco:20200222072301j:plain

f:id:coalfishsholco:20200222072314j:plain

f:id:coalfishsholco:20200222072323j:plain

そんな無機質な感じがたまらない。
おそらく、上手くいけば、これ1本で50mmは終了できる、はず。それくらいの決定打。是非お試しアレ。

coalfishsholco.hatenablog.jp

 

 

Leica Summilux-M 50mm F1.4 2nd 第二世代 レビュー

鏡筒の作りが秀逸な貴婦人こと第一世代から若干の改良を加えた第二世代ズミルックス

マイナーチェンジということで『後期型』と呼ばれることも多い。フィルターサイズは43mmで、第三世代と現行asphの46mmに比べて小ぶりとわかる。

f:id:coalfishsholco:20180926065623j:plain

驚かされるのがズミルックス(大口径レンズ)としてはかなりサイズが小さいこと。現行ズミルックスよりかなり小ぶりで、サイズ感は1段暗い小さな現行モデルのズミクロンと全長はほとんど変わらない。レンジファインダー用レンズとしてなら現行ズミルックスよりもこちらを選ぶ価値はある。

f:id:coalfishsholco:20200621072359j:plain

写りはいわゆる線の細い、淡い描写をする。開放で光のベールに包まれたようなふわっとした明るい雰囲気の写真が撮れるため、女性のポートレートには大変向いているだろう。しかし芯はしっかりしているため、いわゆるオールドレンズの緩い感じは受けない。少なくとも同じ大口径のズマリット(F1.5)に比べればこちらの方がはるかに現代的である。

f:id:coalfishsholco:20200621072756j:plain

大口径なので当然夜間にも強い。フィルム撮影時は特に恩恵を受けるところだが、ISOを何倍にも上げられるデジタルであっても F1.4 はかなり心強い。

f:id:coalfishsholco:20200621072858j:plain

上の写真は草津で撮影したのだが、ISO400のF1.4、1/15 で手持ち撮影できた。F2 のレンズならば 1/8 。不可能ではないが、1/8 は相当に気を使う。そういった意味ではやはり大口径はありがたい。


このレンズは最初状態が悪く、運よく10万円代で手に入れた。その後オーバーホールしたため結局は相場程度の金額となったが、しかし近年価格高騰が異常に激しく、また出物も少ない。手にできれば幸運だろう。

 

coalfishsholco.hatenablog.jp

 

Leica 単焦点レンズ ズミルックスM 50mm F1.4 ASPH. 11891
 

 

Voigtländer COLOR SKOPAR 21mm F4P レビュー

COLOR SKOPAR 21mm F4P。随分前に新同品を安く手に入れることができたので簡易レビュー。

f:id:coalfishsholco:20180915100141j:plain

イカのフレームに 21 mm はないため、別途ホットシューにつける外付ファインダーが必要だが、私は外付無しの撮影が気に入っている。

M3だろうが、M6だろうが普通にファインダーを覗いて撮る。もちろんピントやフレームは中心部分しか視認できないので、その他は想像する。パースも然り。それが楽しい。そして実際にネガを見ると大抵はびっくりするくらい広い範囲が写っている。まさにレンジファインダー・ビヨンド(Rangefinder beyond)。これを何回か繰り返すとだんだんどれくらいの範囲が写るのかが分かってくる。しかし毎度ながら予想を超えるネガの出来栄えに思わずニヤけてしまう。趣味の醍醐味。

Tokyo, Ginza

F4 という決して明るくないレンズだが、すこぶる鋭敏な写りで歪みも少なくとてもいいレンズだと思う。全長も短く、取り回しも良い。

絞りを F11 程度で 3 mに合わせておけばピント合わせなしで大抵のものは写るので気軽に装着して散歩に出かけてしまう。

f:id:coalfishsholco:20180915100312j:plain

そして 21 mmも慣れると案外面白い。どういうわけか 35 mmよりも構図をコントロールしやすい。おそらく広い範囲が写り過ぎているため、その細々したものが1つの集合体をなしているためかな、と思う。

f:id:coalfishsholco:20180915100332j:plain

 

 

Leica M6 レビュー

M6は1984年に登場した、いわゆるM4-Pに露出計を組み込んだモデル。M型フィルムライカとしての基本スペックは踏襲しており、ダイカストボディ採用で軽量化も実現している。

f:id:coalfishsholco:20200222072746j:plain

Web上に溢れるM6のレビューを読むと、初心者向きだ、いや、むしろ玄人向きだ、質感が悪い(特にM3との比較として)、そしてやはりライカに露出計は邪道だとするものなど、様々な意見があるが、それだけ皆が夢中になるカメラだともいえる。

個人的にはM6は最もバランスのとれたフィルムライカだと思う。M3の重厚な質感に比べれば軽量化されたボディからはややチープな印象を受けるが、だからといって決して頼りない訳ではない。ライカはライカ。おまけにドイツで製造されているため、堅牢性は失われていない。

最大の特徴である露出計だが、ややクセがある。簡単に言えば、他のカメラのように露出計を確認しながらSSや絞りダイヤルを合わせるというような使い方には向いておらず、あくまで最終確認に使うのが良いだろう。よって全く露出感の無いユーザーよりもある程度の露出(サニー16)感を身につけた上級者の方が使いこなせる。

コツというほどでは無いが、ネガなら露出オーバー気味でも全く問題ないため、ファインダー内の露出計をみて三角のレッドが右側に出ていれば(両端に出ていれば適正露出)シャッターを押しても問題ないだろう。

ブラックモデルが比較的手に入りやすいのも良い。M3のブラックなど果てしないプライスタグが付いている訳でもない。もちろんクロム(シルバー)も大変良いけれど。

f:id:coalfishsholco:20200222072914j:plain

2台目のライカM6

レビューがうまくまとまらないが、製造年が比較的新しいため故障の心配があまりない、というメリットもあり(私はM3で2度ほど痛い目にあっている)、これからライカに興味を持つ方なら大変にオススメしたい。

Sentimental Value

実は一時M型を全て手放して、しばらくライカ無しの生活に慣れていたのだけれど主人を失ったMマウントレンズ群を触っていると不思議なものでライカ熱が再発した。厄介な熱病。ぼちぼち楽しんでいきたい。