Cure of GAS

Castle Rock Photography

日々について淡々と書きとめてます。

【35mm編】ライカMマウントレンズまとめレビュー

35mmは私にとって"視野角"と言っていいほどしっくりくる画角だ。それは谷中辺りをあんみつの甘い匂いに誘われながらぶらぶら散歩している時に出会い、見定めた景色や光景そのものをなんの苦もなく、その場でライカのファインダーで捉えることができる。一歩前も一歩後ろもない。まさにAs it is(それをそのまま)の語句が似合う画角である。

前置きはこの辺にして、これまで使った35mmライカマウントレンズをレビューしてみたい。35mm好きは多いと聞くので、参考にしていただければ幸いである。

  • Leica Summaron 35mm F3.5 (Goggle)
  • Leica Summaron 35mm F2.8
  • Leica Summicron 35mm F2 (6 elements)
  • Leica Summicron 35mm F2 ASPH.
  • Leica Summilux 35mm F1.4 ASPH FLE
  • Nokton 35mm F1.4 VM
  • Nokton 35mm F1.2 VM
  • Color skopar F2.5 VM
  • ZEISS Biogon 35mm F2
  • ZEISS Distagon 35mm F1.4

Leica Summaron 35mm F3.5 (Goggle)

あまりに有名で定評のあるズマロン。当時M3しか持っていなかった私だがどうしても35mmで撮りたくて手に入れた。

やや重いのと見た目の好みが分かれるところだが、眼鏡付きはどういうわけか65cmまで寄れるので、その意味では実用性は高かった。 肝心の描写だが、F3.5と無理のない設計のため中心部はビシッと決まる。反面周辺はやや緩い。しかしいわゆるオールドライカな描写なので未完成さは微塵も感じない。それよりもう既にこの時代にスナップ用レンズとしては完成の域に達している。たくさん撮影した思い出のレンズ。

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Leica summaron 35mm F2.8

M3をM4-Pに買い替え、35mmフレームが使えるようになってから手に入れたレンズ。描写は相変わらず完成形。切れ味鋭く、それでいてなぜか柔らかい。幾度もポートレートを撮ったが、今見ても素晴らしい。実にフィルムライカのためのライカレンズ。質感も高く、特に無限ロックのパチンという音、これは正直ニヤけてしまうほどのギミックで、往年のライカ工芸技術の産んだ、恐らくもう二度と作れない文化的財産。近年異常な高騰が続いているが、逆にこれまでが安すぎたとも言える。

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Leica Summicron 35mm F2 (6 elements)

安心安定のズミクロンの中では特に個性的なレンズで、開放のぐるぐるぼけや強烈なフレアは好みの分かれるところだが、フィルム使用がメインでライカらしさを求めるならばASPHモデルよりもオススメしたい。コンパクトで携帯性も良いが、総合的な写りではズマロンF2.8の方をおすすめする。

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Leica Summicron 35mm F2 ASPH.

私が使用していたのはフードが金属製の現行モデルの一つ前のモデルで、率直な感想を述べれば素直で優秀。デジタルを意識しているためか解像度はピカイチだし、失敗もない。全く問題がない、いかにもズミクロン的なレンズといえる。35mm選びに迷った時の安全玉として是非オススメしたいが、描写の面ではZeiss Biogon 35mm F2と肉薄しており、そちらも視野に入れるとプライスの差額で美味しいディナーを楽しめるかも。

Western style house in Japan

Leica Summilux 35mm F1.4 ASPH FLE

イカ35mmフラッグシップの名に恥じない、まあ本当に素晴らしいレンズで、よくこのサイズで開放から実用的な描写を叩き出せるなと感嘆する。全く文句のつけようがない。但し、解像度だけ比較するとZeiss Distagon 35mm F1.4 ZMが優っているので、ライカの情緒的な描写に興味がなく、果てしなく実用を求める方はそちらをお勧めする。

One morning with a friend

Nokton 35mm F1.4 VM

イカMマウントのノクトンシリーズは低価格・低開放値・低リスクの"三低"が特徴で、欧米ではプアマンズライカ(Poor man's Leica)などと揶揄されることもあるが、そこは流石に現代のレンズ、描写は決してプアではない。個人的にはノクトンシリーズは独特の収差が生み出す歪みが好みではないので使うことはないが、手軽にオールド感を楽しみたい方や単焦点ビギナーにはうってつけの"遊び玉"。おすすめ。

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Nokton 35mm F1.2 VM

低開放値はノクトンの真骨頂でいわばF1.4などは挨拶レベル。F1.2以下から本領発揮といったところだろうか。しかしながら第一印象は非常に重く大きいレンズ。さらにボケは相当うるさい。実際はF2程度に絞って使うのが実用的。結局直ぐに手放してしまった、ある意味で思い出深いレンズ。作例すら残っていない。現在IIが発売中。機会があれば試してみたい。

Color skopar 35mm F2.5 VM

オール5の優等生レンズで、毒がなく、ある意味目立たない存在。さらにカメラに付けているのも忘れるぐらい小さいため、感触すら覚えていない。とにかく描写は普通。尖ったところがない。たいへん安価なので初めて35mmのマニュアルレンズを使うなら、練習用にもおすすめしたい。もしスパイスが欲しくなったら、その時はライカレンズはいつでもあなたを暖かく迎えてくれるでしょう。

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ZEISS Biogon 35mm F2

大変優秀なレンズで、地平線まで歪みなくビシッと決まるのは大変感動した。よく比較されるのがズミクロン35mm asphだが、どちらも解像度の違いはない。ビオゴンはやや鏡筒が長いのがネックで、この辺りのハンドリングについては好みが分かれるところ。予算に合わせて両者検討するのが良い。

ZEISS Distagon 35mm F1.4 ZM

個人的にZeiss 35mmのフラッグシップモデルと認識している。開放から安定して使えて、解像度も高い。経験的にはズミルックスよりも描写性能は高い。重さとサイズがクリアできるなら大変おすすめできるレンズ。

総括

35mmは激戦区でラインナップも猛々しい。様々な選択肢があることはユーザーにとって大変良いことである。レンズは奥深く楽しい。是非参考にしてほしい。

  

 

焦点距離40mmの魅力

旅に出ようと思い立った時、いつも困るのがレンズ選び。大好きな35mmは外せないとして残り1つ、いや2つか。

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かつてZeissのフルサイズ用Canonマウントレンズを3つ海外旅行に持参したことがある。25mm、35mm、50mm。それぞれ500g超えの横綱級レンズで旅行後半ではその重さのため足を痛めた。

そんな折ライカを知ってその小さなレンズ群に魅了された。ズミクロンの35mmと50mm。これがバッグの中身。その後ミノルタCLを手したことがきっかけでセットレンズであるRokkor 40mm F2をしばらく使うことになった。

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左端が40mm。大変小さい。

初めての40mmであったが、感想としては中途半端。正直どう扱っていいのか分からない。大変小さいレンズなので持ち運びのストレスはないのだが、どうにも画角に馴染めない。そもそもM型ライカで40mmのファインダーを有しているモデルはないのでCL以外では構図を決めるのは至難。

しかしそのコンパクトなサイズと、文字通り1本で事足りる利便性に引き寄せられ、フレームが無いのは承知の上で、Nokton 40mm F1.4を入手。

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Nokton 40mm

そして40mmに慣れてくると、まさに世界が広がった。これまで避けていたローライ35mmをはじめとしてZeiss Batis 40/2 CFなど、積極的に40mmを使うようになった。

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Rollei35 tessar 40mm

私はいまだに40mmの魅力を引き出せていないが、いわばその中途半端さと利便性が魅力なのかも。

これから40mmを始める方は是非GRIIIxなどで経験を積むことをお勧めする。

 

Nikon New FM2 レビュー

謹賀新年、暇に任せて新宿のカメラ店をあちこち回り、New FM2 ボディ、そして50mm F1.4のレンズ、B&Wフィルムを現地調達して江戸川を撮影した。簡易レビュー。

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Nikon New FM2 / 50mm F1.4D

ボディと大口径レンズを合わせて3万円台。もちろん安くはない、しかしライカに慣れていると金銭感覚が全く狂う。ライカユーザーからすればこの価格はほぼプラスレスに等しいだろう。

池袋から有楽町線に乗り換え江戸川橋で降りる。以前から行きたかった東京カテドラル。冬眠中の桜並木が連なる神田川沿いをぶらぶら歩きながら目についたものを切り取る。

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江戸川橋

ファインダーは見やすく、ピントの山は非常に掴みやすい。レンジファインダーとは明らかに異なる感覚。構図やピントを正確にする目的ならレンジファインダーよりレフシステムが優れていると聞いた事があるが、納得した。

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東京カテドラル

FM2は意外に軽い。例えばライカM6にズミクロン35mmを付けておよそ900g、FM2に50mm F1.4Dではおよそ800gで100gも軽い。これは十分に違いを体感できるレベルである。巻き上げも悪くない。

気になるのはやはりシャッター音。静寂を切り裂くほどの爆音ではないが、レフ機の宿命である。個人的にはライカのカチリやコチリ、というサウンドが心地よい。

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胸突坂

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夕暮れで寒くなってきたので引き上げる。

自宅で猫を撮る。レフ機は最短距離がライカの2倍近く短い。大きな Bokeh も期待できそうだ。

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警戒中

良くできたカメラだと思う。レフ機とは思えないほどのコンパクトさと堅牢性。さらに物理シャッターが 1/4000 が素晴らしい。そして個人的に好きなセルフタイマー。露出計。魅力がたくさん詰まった名機。

NikonLeica とどちらが好きですか?と尋ねられたら、私は「オレンジとアップルの比較ですよ」と答える。しかし個人的には撮っていて楽しいのはやっぱりライカ、かな。

Hasselblad 500C/M レビュー

6x6フォーマットで最も有名な中判カメラ、ハッセルブラッド。80年代から90年代にかけて、およそ100万前後で販売されており、駆け出しのカメラマンが一生を背負う覚悟でローンを組んでいたとのことだが、現在は状態の良いものが当時の 1/10 の価格で手にすることができる。

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歴史的にはハッセルブラッドは1841年に光学産業に参入した。ライカはその8年後である。そして1957年、標準的なコンシューマーモデルである500Cが発売された。1962年に宇宙飛行士のウォルター・シラーが500Cで宇宙空間を撮影したことからハッセルブラッドは急成長したと考えられている。

Jazz bass

それほど中判歴が長いわけではないが、ハッセルブラッドだけは他のカメラと少し違う感覚を覚えた。なんというか、サイズ感や重さが手の中でしっくりと収まるといった感じだろうか、そして細部の作りが大変メカニカルで扱うたびに居心地の良さを感じる。 

Flowers

動作についてはいくつかのルールがあり、ルール違反は罰金として多額の修理費を払う羽目になる。とにかく常にシャッターチャージを忘れずにしていれば問題が起こるリスクを減らすことはできるだろう。

I'm keen on you

そして独特の乾いたシャッター音。ボシュン。静かとは言い難いがなぜか心地よい。ライカのシャッター音とはまた違った揺らぎがある。

 

純正レンズはZeissで、種類も豊富である。レンズシャッター式で、クラシックタイプはCで、比較的新しいタイプはCFと表記される。CFの方がヘリコイドその他取り回しが非常に楽なのだが、セルフタイマーはCにしか付かない。個人的にセルフタイマーはよく活用するため悩みどころである。

Château de Chillon (Chillon Castle)

 おすすめレンズはやはり80mm F2.8。大変コンパクトで明るい。これ一本でどんな撮影もこなせるだろう。ぜひ試していただきたいカメラとレンズ。

特に関係はないが、国内で最も信頼できるハッセルブラッドのお店は新橋イチカメラさん。ハッセルは故障も多く、また安価なものを買うと高くついてしまう。オーバーホール済みを販売するお店で、多少高くても買うのがおすすめ。ぜひ。

www.shinbashi-camera.net

www.hasselblad.com

 

Carl Zeiss Distagon 35mm T* F1.4 ZM レビュー

35mmについてはライカユーザーならズミルックスが最終着地点となっていることに異論はないだろう。そんな中、Zeiss Distagon 35mm F1.4は比較対象として選ばれる代表的なレンズである。

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プライスがズミルックスに比べ3分の1のため、"Poor man's Summilux"と揶揄されがちかと思いきや、全然違う。両方使った感想としてはトータルでディスタゴンに軍杯があがる。

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Zeissの特徴であるマイクロコントラストがディテールを鮮明に描くし、解像度については申し分ない。シグマのようにカリカリではなくそこにはしっかりと湿度がある。しかし私が注目したいのは光の描写である。

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このレンズは中心部の解像度を高度に保ちながらも、拡散された環境光をベールに包んだような優しい光に変える力があると思う。オールドレンズのような柔らかい描写と現代の計算され尽くした光学性能が上手く融合しており、大変品の良い描写をする。ライカが情緒的ならこちらは上品な写り。女性のポートレートなどに最適だろう。もちろんTコーティングもさらに光の描写にゆとりを持たせている。

欠点らしい欠点は見つからないが、やはりそのサイズと重さは、コンパクトなレンジファインダー機には少々ネックとなる。F1.4 35mmの大口径レンズにしては大変小さいのだが、やはりライカMに装着した状態ではややバランスが悪い。カメラを常に前傾させようとする重力に対しては好みが分かれるとこだろう。

Tokyo Bay

スナップ向きのレンズではないし、使用中に手首も痛くなる。しかし撮像は本当に素晴らしい。使わないストレスより使う喜びが上回る、そんなレンズなのかもしれない。ぜひオススメしたい。

Distagon 35mm F1.4 ZE

話は変わるが、かつてEOS 5DMK II を使っていた時、35mmのお気に入りレンズがDistagon F1.4 ZEだった。とにかく明るい。ファインダーを覗いた瞬間から明るいと分かるほど素晴らしいレンズだった。ボディとレンズで2kgを超えるという、今ミラーレス主流のこの時代には考えられない重さだったが、それでもロンドンやパリを歩き回った。良き思い出のレンズである。

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EOS 5D MK II / Distagon 35mm F1.4 ZE

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EOS 5D MK II / Distagon 35mm F1.4 ZE

 

Nokton 35mm F1.2 Aspherical Ⅱ レビュー

思えばフォクトレンダーという会社というかブランドは個性的だと思う。それはかつての富士重工(現 SUBARU )のように、マニアックなニーズに特化した製品づくりをしているように感じる。

イカ純正ではあり得ないスペックのレンズ。ノクトン。35mm F1.2 について少しレビューしたい。

 

鏡筒を含めて、作りは大変良く、触った感触はライカ純正と変わらない剛性感がある。光学性能も中心部は十分に解像しているし、開放であっても許容範囲である。ボケはいわゆるクリーミーボケとは違い荒れてはいるが、背景に気をつければいい雰囲気となる。 

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Portra400

収差はかなり残っている。オールドテイスト。完全に好みの問題だが建築物などの撮影には向かないかもしれない。

難点としてはやはり大きくて重い。レンジファインダーのレンズで 300g を超えるとかなり手首が痛くなる。普段使いには向かず、少し遊び心で持ち出すのがよいだろう。

まあこのように特に(プライスも含め)欠点は見当たらないが、数回使用して手放してしまった。前述したように、遊び心満載のレンズであり、個人的には使用場面があまりにも限られてしまったためである。

しかし、七工匠レンズも含めライカの代わりにはならない。結局は高くつく、かな。

是非お試しあれ。

NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM

NOKTON 35mm F1.2 Aspherical III VM

  • メディア: エレクトロニクス
 

 


 

Leica Summicron-M 50mm F2 第四世代 レビュー

おそらくライカMマウント50mmの中ではトータルで最も安定性と信頼性の高いレンズだろう。ライカのブランド価値が実性能価格の30%程度は上昇させていることは否定できないが、そのコンパクトさ、すこぶる優秀な光学性能はレンジファインダーがなんたるものかを再認識させてくれる。

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写りはとにかく実直で質実剛健。F2という無理のない設計で合焦部は驚異的にシャープ。商業プロのための信頼できるレンズ。

Napping

個人的に気に入っている点は組み込みフード。50mmでフードを使うことは滅多にないが、それでもあったほうが良いシチュエーションでは大変便利。

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都庁から

個人的にはボケ味はややうるさく感じた。しかし背景に高周波物体(草や格子など)をいれない限りはそれほど気にはならない。

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Tri-X400

欠点らしい欠点はないが、あえて言うならば素直すぎること。観察者の見たままをありのままにフィルムに焼き付ける。そこにはなんの誇張も欠落もない。英語でいうwow effect(その名の通り、ワォ効果)も無い。

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そんな無機質な感じがたまらない。
おそらく、上手くいけば、これ1本で50mmは終了できる、はず。それくらいの決定打。是非お試しアレ。

coalfishsholco.hatenablog.jp